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子どもと日本史

日本史は小学 6 年生で習う 権力者の人物史観を学ぶ教科書だったがいまはどうだろう 中学では点取り虫の暗記学習となる さらに高校では選択教科から変更になったというがその中身は? 大学生に質問したら高校で日本史を選択したのは 6 割もいなかった これで日本人の生涯の歴史学習は修了して晴れて社会人となる 過去の戦争の負の教訓も原爆の悲劇も記憶の片隅に追いやられる   戦争を知らない世代の国会議員がこぞって軍事力拡充の声を上げる 外交努力のなんたるかは北朝鮮の拉致問題で無力を実証する 水面下ではとのおうむ返しも何もしてない常套句と化す  数十年いまだ無意味な青いバッジをひけらかすだけ アメリカ依存型の核の傘下の国防はついには自前で核を持てと騒ぎ立てる ウクライナへのロシアの侵攻に乗じた防衛力の強化が国策となる   小学生を対象にした戦争のお話は絵本も漫画本も物語もたくさん出ている それでも何か手応えが足りない気がした その時代に生きた人はその時々の証言や書き物として出てくる ただ市井で生きた人の生涯を語る物語が欠落している気がした 戦争を体験した世代が交代していくいまを書き残すものは何か 偉い人の武勇伝や権力闘争や統治の権力側の歴史書ではない 戦中戦後を生き抜きいまの時代をつくってきた庶民の歴史を書き記す 孫へ語りかけるようなお話が書けたらいいな   小学生に興味をもってもらうにはどうしたらいいのだろうか 「満州移住と引き上げ」というテーマを取り上げてみた 言葉遣いからして難しい そのときどきの出来事や世の中の動きと歴史的背景 そのときの情景やその人の心情を表現するには語彙が足りない 子どもがどれだけ理解して興味を広げてもらえるのか不安ばかりだ やさしいことばで伝えることを第一に考えよう おもしろい読み物にしなければ飽きられる 興味がわく中身にしなければ価値はない このチャレンジは歴史を紐解く自らの学び直しとなる   〔 2022 年 5 月 30 日書き下ろし。本当に小学生の低学年向けに書くのは難しい。だからこそ楽しんで書くこととする。師との歴史の学び直しも楽しい〕

まどいきて

身の変化に抗うこともせず 為さぬことに悔いることもなし 為せることに憤ることもなし 為さねばならぬことは焦ることもしない   身の節々の痛みに耐えることもせず 為さぬことに気落ちすることもなし 為せることにやる気を起こすこともなし 為さねばならぬことは諦めて無理はしない   身の置き所にこだわることもせず 為さぬことには気力がないと伝え 為せることには勘弁してくれと伝え 為さねばならぬことには期待するなと伝える   身の丈に合うよう猶予をもらおう 為さぬことにはいまさらの感があり 為せることにはこれからもの感があり 為さねばならぬことには難しくなる感がある 為さざることは静観のみ許される   身の程を老いる道で知らされる 為さぬことは一方的に増え続ける 為せることは言うまでもない 為さねばならぬことは限られる 為さざることは椅子の背に身を委ねることか   〔 2022 年 5 月 30 日書き下ろし。失敗を繰り返しながら老いまどう身のせいにする愚弄の日々か〕

運動会の延期と中止

土曜日 前日は強風と大雨の一日だった グランドコンディションは最悪だった 運動会は翌日に流れた 夜に雨が降り今朝小雨に変わった 風も風速 10 ㍍前後 気温は 14 度と低い 近くの小学校からは開催の花火は上がらなかった 2 年ぶりの待ちに待った行事はリラ冷えの季節を前に流れてゆく   騎馬戦はいまもやっているのだろうか 落馬の怪我を心配して取りやめた学校も少なくない 組み立て体操も安全を第一として見栄えしない体操となった 徒競走も走る組の編成まで親からクレームがつくという 転校生にリレーの代表を取られたと親は納得せず運動会を不参加させた 先生方の気苦労につい同情したくなる   ダンスの講習はいまは Online でやるのだろうか たくさんの競技の練習時間も半端じゃない バラエティに富んだプログラムを用意しなければ不評を買う 保護者の席取りもなくなって久しい 地区分けや抽選などで区割りされた場所が指定される 天気を気にやみながら弁当を作る親はどれだけいるのか お弁当も近くのコンビニで調達するか出前を頼む人もいる 何とも便利な世の中になった   運動の苦手な子には劣等感を仕込まれる日々 足が速くなると当日の朝飲まされた生卵 いまでもおまじないは残っているのか 活躍する子の親もすこぶる嬉しそう 運動格差を生みいじめの要因ともなる と言い出したら収拾がつかなくなる   なぜ運動会をするのか明確に説明してきたのか 伝統的に継承されてきたから選択肢は一つしかない 集団行動や規律を体得させる「軍隊方式もどき」の練習とお披露目 いっそ面倒くさい運動会など取りやめにしますか   〔 2022 年 5 月 29 日書き下ろし。足ののろい少年時代、運動会は苦痛だった。昼の弁当だけが楽しみだった。母の喜ぶ顔は弟に譲った〕

ブルーベリーの受難

嵐が去った朝 窓から庭を見た 3日前に植えたゴーヤーが気にかかった 遠目からは異変はなかった 安堵した   視線を左に移した なんということだろうか ブルーベリーを支えていたポールが倒れていた 一番太い幹がぶっ飛んでいた 初めて大枚をはたいて買った記念樹だった 思い入れも強かった 去年雪囲いを手抜きした報いか多くの幹と枝が折れた 接ぎ木で育てられた木はその部分から折れていた 3月ビニールテープで補強して無事を祈った 折れた枝も同様の処置をして倒れぬようポールで支えた 春の陽ざしを浴びて芽吹き花を咲かせていった ただ数本の枝は再生することはなかった   昨日は強風と集中豪雨の荒れた一日だった まさかが起こっていた 急ぎ庭に降りた 花は散り枝は半分しか残っていなかった 再度同じ補強を試みた 結果は予断を許さない 再生を祈るだけだ   父が育てたシャクナゲも冬の大雪でずいぶん傷つけられた 友人から譲ってもらった紫陽花も枝を見事に半分折られた 生き残った者たちの再生の出鼻を見事に挫いて嵐は去った   小さな庭の受難と再生の物語は尽きることなく続いてゆく   〔 2022 年 5 月 28 日書き下ろし。無性に悔しかった。小さな庭さえ守ることもできぬ無力さか〕

微睡うなかに

微睡(まどろ)うなかに居る 思考停止の世界 覚醒させられぬよう抗がう   微睡うなかに見える 過去の幻想の世界 消去されることを拒む   微睡うなかに聞こえる 突然強い風が吹く世界 心地よさが侵(おか)されぬよう身構える   微睡うなかに迎える 遠くに見える未来の世界 安らかに抱(いだ)かれて身をほどく   微睡うなかに流れる 忘却の河に洗われる世界 罪と悔いに身を晒(さら)す   微睡うなかに満ちる 静寂な心の世界 陶酔の境地に身を預ける   微睡うなかに感じる 睡魔に乗っ取られる世界 眠りに落ちる一瞬を楽しむ   〔 2022 年 5 月 27 日書き下ろし。微睡むことが多くなる。抗うことなく身を委ねる〕

卑劣な者の末路

男には卑劣という言葉はない 卑劣という概念は欠落している だから指摘されても理解できない   男は卑劣な言動を問い正される 非難されると高圧的に開き直る だから指摘するのは火に油を注ぐことになる   男には卑劣という反道徳心はない 卑劣という行為は躊躇なくやる だから指摘されても平然とやりぬく   男の卑劣さはさらなる制裁を招く 過激に反応し敵対するしかない だから指摘するのは暴走させることになる   卑劣な者ほど正当性を誇張する 毒舌と恐怖で独善的に支配する だから抗う気力は削がれ無抵抗に従う   卑劣な者は卑劣さを自覚できずに自壊する 卑劣な者は迫害で生まれた憎悪で自滅する 卑劣な者は劣悪非道な人間として糺弾される   〔 2022 年 5 月 25 日書き下ろし。卑劣さを身に纏う者とつきまとう者たちの末路をおもう〕