初めての菊の栽培

89才の女性が丹精して菊を育てていた

毎年10月末には老人施設の一角を飾っていた

 

枯れた菊は一冬野ざらしにされ

春にはたくさんの新芽を出す

 

鉢に芽吹いた茎の1本だけ残す

手ほどきを受け数本もらってきた

 

大ぶりの鉢に2本植えた

育ちのいいのを選ぶ魂胆だった

 

1本斜めに植えたのが元気が良かった

世の中を斜めから見てる根性とマッチした

 

89才の教えはたっぷりの水をあげなさい

バケツに雨水を溜め置きしながら毎朝あげた

 

89才の庭の菊といつも比べた

夏の間はそれなりにおがっていった

 

日々太陽の光を満遍なく当てる

影になるのを避けるように鉢を回す

 

温暖さが大きくなるに従い新芽の数が増えてきた

日照時間も左右するのか盛り上がるようにおがってくる

 

自転車に乗るときのヘルメットのようなカタチになっている

斜めに植えた成果?かと思うと少し嬉しい

 

昨日からの台風絡みの雨も止みバケツいっぱいに溜まった

小さな新芽から黄緑の新葉がどんどん開いていく

 

10月の半ばには蕾が出るかもしれない

89才の師匠は何と言ってくれるだろうか

その一言を楽しみに丹精を込めて育てる体験を続ける

 

花が咲きかけたら施設に持っていこう

菊の開花を愛でる人たちの笑顔を想像する

 

[2022924日書き下ろし。たった1本の菊の世話。その日々の成長がなぜか嬉しい]

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