89歳の心遣い

ご縁が生まれ月一度89歳の自宅を訪問する

今春白菊の苗木を分けてもらった

指導のたまもので無事育った

 

先日鉢を車に乗せて師匠を訪ねた

育ち具合を見てよくやったねと褒めてもらった

今夏手塩にかけられなかった菊たちが庭にあった

 

残念そうに語りながら体調不良を訴えた

雨水を貯めたポリのタンクの水がそのまま残っていた

それだけに弟子の菊を愛でてくれことが嬉しかった

 

菊作りはもう大丈夫と太鼓判を押された

まだまだ初心者来春も指導を乞うしかない

白と赤と黄の3色に挑戦することにした

 

今日の昼前師とともにお邪魔した

昨夜から煮物の準備に余念がなかった

田舎料理だと言いながら懐かしさがしみていた

 

五目ちらしは格別だった

師は出された料理を珍しく完食した

誰かが来ると必ず手料理を用意した

 

盲老人ホームが職員で居酒屋を開いていた頃

手料理を酒の肴にしてとみんなの舌を楽しませた人だった

誰かのために尽くすことの気遣いは今も変わらない

 

これからも変わりようがない

ただ裏表のある人はしっかりと見分ける

誠意あふれる89歳の前ではひよっこだと悟らされた

 

人生の達人は今日も元気だった

それだけでぬくもる時間の喜びを味わった

帰りの車中師と師匠の息子の存在のありがたさを確かめた

 

20221021日書き下ろし。目も耳も口も元気な矍鑠とした89歳に圧倒される。母と息子の心の距離のバランスもおもしろい〕

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