白浜に遊ぶ
啄木小公園の白浜には蟹はいなかった
土手から波寄せる浜にためらいなく降りた
砂鉄で真黒くなった砂浜は真っ白い砂に変わる
空は果てしなく碧く澄み渡り波は静かに寄せてくる
影は限りなく短く足下にある
師夫妻は童心に返ったように楽しんでいた
右手の函館山はまだ緑を多く羽織る
箱館戦争で戦死した旧幕府軍の兵士たちの供養碑に参る
碧血碑(へっけつひ)には土方歳三など約800人が眠る
函館八幡宮の近くの山腹に建てられた碑を探した
案内板を見つけ60段程の階段を登った先に大きな石碑を見つけた
箱館山の市民散策ルートから少しそれてひっそりと立つ
澄んだ空気の中師は短く読経し南無阿弥陀仏と唱えた
そこから石川啄木一族の墓は近かった
その先に立待岬があった
環境客はまばらだった
岬から青森の大間崎から竜飛岬に目を転じた
波間に数隻のフェリーが行き交う
マッタリとした時間と空気を静かに感じていた
与謝野晶子の歌碑のある近くのベンチに腰掛け
4人はソフトクリームで渇いた喉を潤した
天候に恵まれたことが一番のご褒美だった
車は土方歳三記念館に向かった
そして白浜で戯れた
波との追いかけごっこは見事に負けた
小波から大波に変わるタイミングを間違えた
靴は波に洗われた
師は流れ着いた杖もどきの白い棒を拾った
師は娘が喜ぶといって車のトランクに入れた
これでお土産代が浮いたとも
歳三記念館は展示館としては手狭だった
ただ資料は豊富でついつい熱中して時間を忘れた
混み合うこともなくゆっくり鑑賞できたのは幸いだった
特に新撰組隊士の日本刀は圧巻だった
どのように集めてきたのか気にかかった
晩の食材を奮発しようと駅前の朝市に入った
朝からの発送作業を終えて14時前には店じまいする
3人は先に駅のレストランに行ってもらった
お目当てのタラバガニを面白く値切って買った
駅で落ち合い蕎麦をいただいた
元町を散策しようとハリストス正教会に向かった
残念! 工事中で見ることが出来なかった
早々に切り上げ夜の夜景に備えることにした
ホテルに戻り16:30にタクシーを頼んだ
この上なく穏やかな時間はまだ終わらなかった
[2022年10月14日書き下ろし。旅の二日目。函館修学旅行のメイン、夜景見学と夜の宴会のレポートをお楽しみに]