うなずきの力
新任の民生委員児童委員研修を進めている
北海道民生委員児童委員連盟の主催事業だ
コロナ感染予防対策で200人前後になると
収容に足るフラットな会場はない
道内5カ所で広いホールを使った
総数だけでも1000人を超えた
広いホールにまばらに座る
ホールは閑散とした風景と化す
本来のワークショップで展開することは出来ず
独演会になることに許しをもらいスタートする
詩編61編・シナリオ2本80頁に及ぶ赤い表紙のテキスト
90分ですべての詩編を紹介することはできない
せいぜい20編にも届かない
詩は受け取る人によって解釈は違う
感性を支える人生観や人間観そして経験値によって違う
だからこの場で紹介した詩に共感できなくとも
残された詩の一編に心動かされることは否定できない
研修後自宅で読んでもらいと言葉を添えてお土産とする
独演会は詩の朗読が主たる内容だ
「情緒は私を支配する。論理よりも強く」
伊藤整の言葉を借りて詩集の題とした
委嘱されて間もない新任の心の揺れに問いかけてゆく
不安や悩みそして戸惑いを抱きながら座る
なぜこの役目を引き受けたのかその理由を探す
詩から納得できるヒントが生まれるかもしれない
詩を通して自身の心と向き合うことが出来るかもしれない
詩編から活動への意欲が生まれてくるかもしれない
様々な動機をもって参加した研修だからこそ応えなければならぬ
詩をもって誠実に語りかけることが私の責務だった
朗読する詩の頁を開きながらテキストに目線を落とす
壇上からは参加者の表情を読み取ることが余計に難しい
真剣に聴いているのはわかる
それでもその反応を掴まなければならない
共感しているのかどうかが先に進むためのバロメーターだ
雰囲気から瞬時に次の詩を選択しなければならない
だから5会場で披露した詩や話も微妙に違って同じではない
遠く正面に座っているひとりの男性に目が止まった
指示した頁をめくろうともせず座っている
内心不安を覚えた
拒絶反応かと
違った
瞑想しているのだ
ときどきうなずく
彼に着目しながら朗読を進めた
下を向きながらもうなずく人がいる
遠く離れた分だけ歯がゆいがうなずきがカバーする
うなずきは反応そのもの
うなずきは同感のしるし
うなずきは共感へとつながる
うなずきが私を認め語る力を与える
うなずきから詩が共有され活動へと導く
うなずきに研修が評価されてゆく
明日は檜山地区
フラットなフロアーの会場
対面で参加者との距離も近い
うなずきも表情も読み取ることが出来る
だからこそ参加者に添った研修を求めたい
[2023年2月26日書き下ろし。14地区に及ぶ新任研修も残り4地区。コロナで中止になった3年前から全地区開催までようやく目処がついた。悪天候も乗り切った。もう一息、道民児連のスタッフも頑張る]