不幸ゆえの幸ひとつ
不幸な歴史が民衆の身体に染みついていた
不幸な境遇は民衆は当たり前だと受け入れた
専制君主は民衆に一つだけの飴を与えた
専制君主は民衆を手玉に取るだけだった
不幸ゆえの幸ひとつ
どんなにか大きな恩恵だったか
不幸ゆえの幸ひとつ
刃向かうことなどあり得なかった
不幸ゆえの幸ひとつ
服従こそが責務となった
深慮することはない
疑うことは許されない
食べられることだけしかない
専制君主は民衆に大号令する
死を賭して国を守れと
先制君主は民衆を弾圧する
法と制度を改悪して罰する
専制君主は民衆を恐れる
虚構の世界を崩壊させる民衆隆起を
不幸ゆえに幸ひとつ
それは真の人間回復でしかない
不幸ゆえに幸ひとつ
それは専制国家の消滅でしかない
不幸ゆえの幸ひとつ
それは新たな平和の構築しかない
[2023年3月22日書き下ろし。不幸せな歴史に翻弄された民衆はひとつの幸に満足するしかない。逆手に取った専制政治がいまも大手を振って人民を貶める]