不愉快な男
挨拶をした
同じ集合住宅に住む男にだ
無視される
もう一度挨拶をした
二度無視された
男は玄関口に向かった
抑えきれぬ怒りがわいた
不愉快な感情がしばらく残った
50戸150人程度のコミュニティ
不気味な人間が平然と混じってくる
コロナ禍は近隣のつながりを疎遠にした
黙礼はまだいいほうだ
何のてらいもなく挨拶すら拒否する
挨拶を避けるように通り過ぎる
マスク越しの無表情が定着した
仕事をしている
人との関係を断つ者たちが巷に溢れる
家族を扶養している
哀れで疎ましく情けない者たちが地域で居直る
ここで暮らしている
没交渉を通す者たちが世間で幅を利かす
一人で生きているような錯覚
他人と関わることを拒絶
世間が干渉できぬ黙認
不意にむきになった自分を笑った
この程度のことでいちいち相手にしては身が持たぬ
無関心と無視こそが日々の平穏を約束する
[2023年10月14日書き下ろし。つながりを拒否する者たちがコミュニティの中で孤立することを選択する。各地で起こる地域福祉の衰退に打つ手なし]