無用の用
無用のようで何か用を為しているのがいい
無視された存在を凝視せよ
無駄のようで何か用を足しているのがいい
もっともらしい効率化を凝視せよ
無益のようで何かの糧になるがいい
空々しい無償を凝視せよ
無為のようで何か仕掛けるのがいい
作り笑いの傍観を凝視せよ
無縁のようで何かにつながるのがいい
血縁の悪弊を凝視せよ
無逸のようで何かに心向けるのがいい
裏でむさぼる輩を凝視せよ
無価のようで何かに代えがたいのがいい
偽りの愛に惑わされぬよう凝視せよ
無芸のようで何か十八番(おはこ)があるのがいい
思いがけず喜ばす技を凝視せよ
無情にようで何か心に秘めるのがいい
情を売る厚かましさを凝視せよ
無骨のようで何かぬくもるのがいい
馴れ馴れしい対応を凝視せよ
無心のようで何かを感じるのもいい
たぎる欲望を凝視せよ
無言のようで何かを伝えるのがいい
有言に見る害ある企みを凝視せよ
無限のようで何か引っかかるのがいい
思索する宇宙の限界を凝視せよ
無常であるがゆえに何かを残すのがいい
無上の愛を求める己を凝視せよ
※無逸(むいつ)楽しむことがない。安楽をむさぼらない。
無価(むか)価を付けられないほど貴重なこと。
[2023年11月29日書き下ろし。人生に無駄はない。些細なことも無駄にはできぬ。無心になることも無為にはできぬ未熟さを知る]