怯懦にして狐疑する

人は臆病なのだ

だから群れてつるむ

外れぬよう空気を読む

誰とも分からぬ意見に同調する

居場所を見つけた気になる

仲間として認められた気分になる

 

錯覚だと分かっている

居心地がいいと思いたいだけ

庇ってくれると思い込みたいだけ

当てのないものを当てにするだけのこと

ひとりぽっちになりたくないだけのこと

群れた後ろをついて行くだけのこと

 

でもこれでいいのかと不安になる

誰を信じていいのかわからない

誰もがそう思っているような気がする

誰にも本心は明かせない

誰かが疑い出せば切りがない

誰も弱い自分と向き合いたくない

 

偽りの群れに紛れ込む

信じるのは難しい

不実の群れに身を隠す

信じたふりも難しい

利害の群れが本性を現す

怯懦にして狐疑する

 

※怯懦(きょうだ)臆病にして意志が弱い

※狐疑(こぎ)事にのぞんで疑いためらうこと

 

[2024320日書き下ろし。弱き者たちの姿は人間の本性であるからに、勇気を出すのはいつもためらう]


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