含羞の微笑み
少女ははにかんだ
口角を少し上げた
初々しさが眩(まばゆ)かった
少女はうつむいた
恥ずかしげにいた
さりげない佇まいに見えた
少女は瓦礫の中にいた
取り戻せない想い出に涙する
一変した風景に取り残される
少女はまなざしを鋭くした
不安と怒りが籠もっていた
やるせない辛さが満たしてゆく
少女は空腹だった
食糧も水さえも手元になかった
力なく泣く幼子の声が残った
少女ははにかみを捨てた
微笑むことも忘れた
戦火は子らの未来の扉を閉じた
少女はまだ幼すぎた
大人の助けが必要だった
非道な者たちに蹂躙され続ける
少女は犠牲を強いられた
喜びも平穏も手から離れた
赤い唇を噛み固く口を閉ざした
※含羞(がんしゅう)はにかみ、はじらい
[2024年3月20日書き下ろし。戦場に取り残される子どもたちの姿が痛い。ユニセフから「ガザ人道危機」緊急募金のDMが届いた。鍋を差し出す少女の悲しい表情が痛ましい]