後でね

子どもに質問された

「きみはどう思う」と尋ねた

子どもはしばらく考えた

子どもなりに思うところを話した

「そうだね。とてもいいところに気がついたね」

子どもは嬉しそうに笑った

 

子どもに質問された

「忙しいから後でね」

子どもは置いてきぼりを喰った

いちいち答えるのは面倒だ

いつも忙しいふりをする

後でと言ったままになった

子どもは先生の噓を知っていた

 

子どもが質問した

してやったりと赤本を見た

「いい質問だね。それは…」と赤本を読んだ

子どもが質問した

赤本には答えがなかった

「いい質問だね。いまは時間がないか後でね」

後でと言ったままになった

子どもは先生が知らないことを知った

 

質問に子どもが答えた

間違えを正された

みんなに笑われた

先生も笑った

子どもはひとりぼっちにされた

 

子どもに質問の意味がわからなかった

先生に聞いた

「このくらいのことがわからないの」

わからないから聞いているのに…

子どもは先生の授業についていけなかった

子どもは落ちこぼれになっていった

 

子どもには学校は楽しくなかった

クラス替えで担任も変わった

どうしても知りたくて質問した

先生はうなずきなから聞いてくれた

「難しいね。先生もすぐには答えられない」

子どもの顔をのぞきこんだ

「先生も一緒に考えていいかい」

子どもはこの先生の後回しは別だと知った

 

※赤本:教科書の指導書

 

2024623日書き下ろし。未知なる世界に誘う大人が子どもの側にいて欲しい〕

 


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