帝国議会と斎藤隆夫
日中戦争時の1940年の演説
「この戦争はいったい何のためなのか」
「戦争はいつ、どのように終わるのか」
全国から届いた手紙には全国民が知りたいところだと綴られていた
戦死した息子の母はこの問いに政府はもっと真面目な答弁を祈った
斎藤隆夫は堕落した政治家により帝国議会から除名された
聖戦への冒涜が理由だった
中国を侵略し傀儡の満州国をつくった
朝鮮半島をも支配下に置いていた
満州開拓のために本土から多くの移民を送り出した
ソ連とも対峙しながら満州鉄道の沿線を領土化する
内地の資本を投入し軍部と結託しつつ経済の拠点をつくった
日本の生命線といって抵抗する中国軍との戦線を拡大してゆく
戦争は領土の拡大であり聖戦という大義がのさばった
目的も終わりも見えぬ戦争に軍部の横暴さは日増しに強くなる
帝国議会は軍事独裁政治に隷属するだけの機関と成り果てる
当時の国民は聖戦という誤魔化しに流され疑問を持つことは許されなかった
果たしてそうなのか
国民に選ばれたものたちの怠慢と利権だけの存在だった
立候補するものたちはすでに汚れていただけのことだった
堕落した中からましなものを選ぶことはできるわけはない
選挙権を持っていたとしても選ぶとすらできなかった
大政翼賛会のもと選挙も形骸化し議会は機能不全を起こしていた
「適当なる代議士を識別する知能なきものはたとえ法律上において選挙権を有するといえども政治上の意味における選挙権を有するものにあらず」
斎藤の言葉は別の意味で今も生きる
信じるに足るものが政治家としての矜持を持っているのか
選ぶものたちの覚悟が問われる
政治家の劣化が80年の時代をまたいで続いている
「国民は政治を監視し監督する責任がある」
その見識を国民が持たねば悪しき政治家が蹂躙する国となる
〔2024年8月11日書き下ろし。朝日新聞の今朝の「日曜に想う」に掲載された斎藤隆夫氏(兵庫県豊岡市出石町出身1870-1949)の記事を紹介しつつ現状を憂いた〕