永遠の生徒
一体何を学んできたのか
ものの考え方
確固たる信念など持ち得なかった
思想らしきものは持ち合わせなかった
大げさに理念をかざすこともなかった
目の前の問題をひたすらこなすだけだった
前に道はなかった
確信の乏しいままがむしゃらに道をあけた
傷つけたことも傷つけられたこともあった
正しいとか正しくないとかは結果に過ぎない
場数を踏んだしゃべりは常に実直でありたかった
書き残したレポートには揺らぎながら考える自分がいた
ひとつだけ何を学んできたのか
いまになって先駆者としておごりが頭をもたげる
ものの見方
人を見る目はいかんして未熟のままだ
ただ信じることしかできない
裏切られればしかたないと受け入れる
幸いなるかな人の運には恵まれた
道を開いた先に必ず佳き出会いが待っていた
ものの価値は値段でしかないはかれない
相応のものはまず手にすることはなかった
安物買いの銭失いを懲りずにいまもいる
世の中を見る目は学生運動の名残か辛辣だった
政治も経済も教育もそして福祉も心配の種が満載だった
人が動かすことだけにうとましい事態は後を絶たない
ひとつだけ何を学んできたのか
いまになって浅学を恥じる
ものの考え方や見方はどう育てられてきたのか
記憶のない幼児期にその原型があったのだろう
世間や学校というゆりかごでさらに同質化されたのだろう
時代の風潮を浴びながら従順を求められ成長してきたのだろう
考え方も見方も未成熟なまま社会に出て大人になった気でいたのだろう
何を学んできたのかと問ういまを無学と答えるしかない
〔2024年12月22日書き下ろし。同質の価値観を教化された怖さを知る〕