現代昔話 なまけものおじん
昔あるところに怠けもんのとあだ名されたおじんがいました
仕事をさせてもすぐに放り出して逃げてゆく
言い聞かせても空返事ばかりでさっぱりやらない
口先だけはうまいおじんでたぶらかしても何食わぬ顔をしている
図々しいのは人一倍でよその家の夕餉に顔を出してはちゃっかり食べてゆく
仕事もしない
何もしないで
するのはひなたぼっこと決まっている
腹が減ればどこかに家に上がり込んで食べてゆく
恥ずかしさなど知るよしもなく堂々と怠けている
誰になんと言われても薄ら笑いするだけで聞く耳持たない
あるとき村に悪い男たちがやってきた
村人を集めて食べ物や金ものを出せと脅した
村人はみんな怖がって震えていた
そこに怠けもんのおじんがやってきた
そこのお前ゆうことをきかないと痛い目に遭うぞと脅した
おじんは何のことかさっぱりわからず首をかしげた
悪党たちはおじんにさっさと金ものをもっとこいと命じた
おじんはこの村は金もんなら鍋と鍬しかないと笑った
悪党たちはいよいよ怒りだした
おじんはこの村によく来てくれたと笑顔で応えた
悪党たちは何を言っているのかさっぱりわからなかった
おじんは皆さんはいい格好をしている
口は悪いがなかなかの金持ちだ
おらたちゃ貧しくて明日の食いもんもないありさま
ここは貧しい者たちが慎ましくくらしている村だから
金になりそうなお宝なんぞあるわけないし
生まれてこの方見たこともない
せっかくここまで来てくれたのだから
せめて何か恵んでおくれと頼んだ
悪党の頭が呆れてしまった
盗人にきたのになんで俺たちがお前たちに恵んであげなきゃいけないんだ
おじんはそれでもひるまず言った
だって困っているのを助けるのが人間でしょ
いままでさんざん金のあるところから盗んできたなら
その罪滅ぼしをするのもいいんじゃない
一度だけでも人間らしくふるまったら
きっといいやつだったと評判を国中に広めてあげるよ
悪党の頭は考えた
この村には何も盗るもんはない
ましてや貧乏人をこのまましておくこともかわいそうだ
恩を売ってこの村が少し裕福になったらまた来ればいい
おいこの村の貧乏人を助けようじゃないか
盗人たちは持っていた食べ物と金ものを取り出した
さあ持ってけどろぼう
頭がそういうと争うようにして持って行った
盗人に村人はお礼を言ってバイバイした
盗人は何だか気持ちが良くなっていいことはするもんだと思った
村人はピンチを救った怠けもんのおじんに何度も頭を下げて感謝した
仕事はからっきし出来ないけれど度胸と知恵があると評判を取った
おじんは照れくさそうにして笑うだけだった
そうそう今日もやっぱりどっかの家にめしをたかりに行ったとさ