母を慕う
長く認知症で生きた
頑張って頑張って生きてくれた
お疲れ様と朝方逝った
かけがえのない子らに母の愛は注がれた
甘苦を舐めた人生に子らが生きがいにした母だった
ラーメン1杯を子らに分かち与えた母だった
とても情愛の深い母だった
利口に立ち回れず騙されもした実直な母だった
いつも冗談で笑わせ美声で十八番を聞かせる母だった
夢を希望にした子を献身的に支えた母だった
見せぬ事の出来ぬ己の人生を悔いた息子がいる
この世の別れにいまだ慕情の念に涙する息子がいる
出会いの縁に運命を感じる母子がいた
いまという時を身命をかけて護ってくれた母がいた
期待に応えられず心配をかけ続けた息子だった
母に捧げるまことだけは揺るがない
母に手向ける合掌だけは感謝しかない
母が教えた人生訓がいまも我が身を護る
〔2025年3月29日書き下ろし。2014年3月30日に目を閉じた。母の愛の深さを感じる老境に入る〕