つかむ
話の始めに興味を抱かす話題をふる
笑いをとるのも一手か
これからの話に関心を持ってもらう一振り
つかみを間違うと気が乗らない
白けてしまったまま本題に入る
盛り上がらない退屈の虫がわいてくる
話はストーリーが大事
ひとり芝居のような場ではなおさらだ
前触れの長いのは敬遠される
聴衆を巻き込みながら展開する
山場に入ったところで鷲づかみにできるか
プロのプロたるゆえんはここにある
帰り際面白かったねとホールのドアを通る
感動という印象が残れば良しとする
過ぎた瞬間すぐに日常会話に戻る厳しい査定
その場限りの時空間を味わっただけのことだ
つかみきれない中味と話術がお粗末だった
知らずにいれば話術の修練は終わる
語り手にはいつも修羅場だ
つかみはいつも同じとは限らない
違う相手に話さねばならない
聴衆の醸し出す空気を一瞬のうちにつかむ
慣れがあれば付け込まれる
奢りがあれば嫌悪感をもたれる
つかみ損ねれば恥辱を味わう
つかみを間違うと失態となることもある
同じテーマでも様相は常に流動的である
話術はウイットを効かすセンスが求められる
話術は巧みな感情表現も共感を刺激する
話術は音楽を奏でるような流れが心地よい
話術は時に覚醒を促す怖さを知らなくてはならない
つかみどころを間違えると批判となる
〔2025年5月26日書き下ろし。人前で話すことの場数を踏んでもその厳しさからは逃れられない〕