優しさに触れる
室蘭行きのバスに乗る
学生の隣に席を取る
「どこまで行かれますか」
「幌別まで」
「ボクもです」
この一言が嬉しい
遠ければ窓側に席を譲るつもりだった
降りるときの心遣いを教えてくれた
帯広出身の登別の専門学校生だった
昨夜札幌でロックのライブがあったという
苫小牧付近で雨が付いた
台風5号の前触れだろ
今朝9年ぶりに道内に上陸した
彼の寮まではバス停まで距離がある
送迎の車が来ているから同乗するよう勧める
来春卒業だという彼が登別の印象を一言残した
住みよい街だと
なぜか嬉しかった
暮らしやすい街こそいまこそ求められている
一時の学生生活でもこうしたおもいを持っている
その理由を詳しく聞けなかったことが悔やまれる
幌別のバス停に着いたときには晴れていた
用事があるとのことで郵便局で降ろす
午後から来月のシンポジウムの打ち合わせに入った
福祉でまちづくりがメインだった
そこで彼の話を紹介した
福祉と構えない暮らしのあり方になぜかほっこりした
帰り同席した88歳の方の車に同乗した
いまも現役でまちづくりに奔走するリスペクトする方だ
バス停で出張で来たのだろうか青年と一緒になった
バスが来て乗り込むときに彼の方が先に待っていたので
当然先に乗り込むと思っていたら譲ってくれた
なぜか嬉しかった
札幌大谷地に着いた
彼も降車した
地下鉄に向かう道すがらお礼を言った
笑顔で黙礼して反対側のホームに向かった
バスに乗ってこんな小幸をいただいたことかってなかった
若い世代が年寄りへの心遣いをしたことへの喜びが重なった
君たちの時代は決して侮ってはならないいい人がいる
そう確信して感謝のレポートを書き終える
〔2025年7月15日書き下ろし。バスでの往復で出会った若者たちへのよき出会いと感謝を込めて〕