壊す

朽ちるリンゴの木箱

野ざらしのまま用済みとなる

バールで思いっ切り叩き割った

強打され見事に潰れた

壊すという快感が走る

 

有用な物が役目を終えて消える

ただそれだけの結末なのに

時に罪悪感が生じるのはなぜか

 

物への愛着が湧く

家族や知人との思い出の品かもしれない

仕事で使った道具への思い入れかもしれない

心を虜にした書籍かもしれない

カタチあるモノの存在に思いを馳せる

捨てきれぬ思いが葛藤する

 

果たして壊すのは物だけなのか

凍てついた人間関係も壊される

互いに傷つけば痛み分けとなる

一方だけが傷つくのは赦せない

壊した後に遺恨はつきまとう

 

壊したい衝動に駆られる

やり場のない怒りが沸々と湧き上がる

八つ当たりされた壊れたものを見る

感情を抑えられなかった身を蔑む

 

壊すに壊せないつながりに惑う

我慢を強いられ憎悪を抱く

平常心を苛み悩み深くなる

壊れた関係を続ければ結末は悲劇だ

 

感情の発露に壊すという衝動は許されるか

壊した跡に残るのは新たな創造と祈りか

リンゴ箱を壊すのは過去から解き放されたい己だった

 

202598日書き下ろし。壊した跡に残る創造の可能性を問い続ける〕


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