魂に叫ぶ
オレの青春そのもの
オマエがそばにいたから
オレの仕合わせそのもの
オマエと出会えたから
オレの人生そのもの
オマエが生きているから
魂に叫んだ
オレをひとりにするな
オマエは最高の男だ
オマエは誇れる男だ
生きれ!
生き抜け!
魂は応えた
衰えぬ眼力はオレを射る
涙が溢れてオレも泣く
魂の雄叫びを上げた
しばし沈黙の中で覚った
萎みかけた希望は蘇った
3年の透析で右手の上腕は筋肉を失った
6月骨盤骨折で入院した
家に帰りたいとだはんをこいた
リハビリに移された後症状は悪化した
言葉は出なくなりいまは要介護5
4ヶ月の闘病生活いまも続く
医師の診断を妻は拒否し献身的な看護を続ける
妻の日々の病床メモを読んだ
意識は確かに鮮明だった
伝えることのできぬもどかしさに苦しんだ
辛い治療に強靭な身体は痩せていった
でっかい大きな手は握り返すこともできなかった
心は逆境に抗いながら苦悶の連続だった
1ヶ月前見舞った
久しぶりの再会だった
目を見開いたまま驚愕の顔をした
なぜオマエがここにいるんだ
不可思議な表情を続けた
オレだと分かってくれた
妻はこんな反応を初めて見たと喜んだ
顔が見たくて4時間高速を走った
個室でいた
酸素吸入の管が鼻につけられていた
目を開くとオレがいた
オマエは無言で迎えてくれた
ラブレターをベッドの横で書いた
オレはオマエの細くなった左肩に手を当てた
オマエはこれまで何度もオレの朗読を聴いてきた
読み上げていくうちに感情が高まった
オマエの魂に真剣に呼びかけた
オレにいまできるのはこれしかない
オレはこの声でオマエの魂を目覚めさせたい
オマエはいつもオレを受け入れた
オレはオマエの熱き友情に感謝した
オマエの優しさと強さに憧れた
オレはオマエを絶対に失いたくなかった
感極まった
互い涙しながら沈黙した
短い再会の時間だった
妻に伝えた
オマエの妻への感謝と生きる望みを
オマエの魂は決して涸れることはない
そう確信して帰路についた
〔2025年10月31日書き下ろし。650㎞を走った。オマエの魂を見た〕