響存
なぜひとは苦しむために生まれてきたのか
なぜひとは哀しむために生まれてきたのか
ひとは苦しみを抱いてあがく
ひとは哀しみを堪えて黙す
なぜひとは苦しみに苛(さいな)まれるのか
なぜひとは哀しみを滲ませるのか
ひとは苦しみからは逃れられない
ひとは哀しみを静かに受け入れる
なぜひとは辛苦を舐めながら生きるのか
なぜひとは悲哀を抱きながら生きるのか
ひととしていることの拒めない執着
ひととしてあることの確かな証明
なぜひとは辛苦も挫折も辛抱するのか
なぜひとは悲哀も苦悩も甘受するのか
ひとは弱きものであり愛おしき存在である
ひとは独りであるがひとりでは決してない
ひとは語り慰め合う
ひとは涙流し抱き合う
ひとは辛苦を誰かと担い合う
ひとは悲哀も誰かと分かち合う
ひとは響き合う誰かを求め続ける
わたしもまた響き合う誰かを求め続ける
ひとはそれを愛というらしい
〔2025年12月13日書き下ろし。悲哀こもごもの人生の意味を問う〕