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線状降雨帯が襲う

梅雨前線が停滞する 対馬海峡から本州日本海沿岸に線状降雨帯が発生している 9 時速報で松江全市に避難指示が出た 80歳の友人にメールした   15 時過ぎ電話が来た マンションの前の川は茶色く濁り雨脚も強くなっているという 十数年前にも河川の増水で膝まで浸かったという 勤務先から帰宅の際に近所の電気店の2階の駐車場に置かせてもらった その後河川の対策工事で排水をよくしたという 安心はできない 水かさが増せば排水能力はダウンする いまはまだマンションの駐車場に置いてあるという 矍鑠とした応対に安堵した 今日の会合は全て中止になり家に閉じこもっているという 災害ボランティアセンターの設置を提案してきた人である これを機に必要な対策や組織作りが迅速に行われることだろう 出雲の友人も気がかりで連絡してもらいことで電話を切った   この時期多くの犠牲を払いながらも根本的な対策はない 日本列島を広範囲に襲来する線状降雨帯は侮れない 毎年ターゲットを変え猛烈な雨を降らせ居座る 治水対策も防災もこなごなに打ち砕かれる 後手後手に回ると被害は甚大になるばかりで想像を絶する 梅雨前線のパートナーは今夏も猛威を振るうばかりだ   家や田畑を失い悲壮な顔が目に焼き付く 災害からの復興に希望を託した途端にまた叩かれる 抗いきれないやるせなさはどこに怒りをぶつけていいのか まだまだ豪雨との戦いは続く 全国各地の無事を祈るしかない 札幌は今日 31 度を記録した   〔 2023 年 7 月 8 日書き下ろし。毎年の線状降雨帯による甚大な被害に心痛む。無事を祈りたい〕   ※島根県で線状降水帯発生 土砂災害などに厳重警戒 安全確保を 中国地方や九州北部では激しい雨が降っていて、このあと北陸などでも断続的に激しい雨が降り土砂災害や川の氾濫の危険度が急激に高まるおそれもあります。自治体からの避難の情報や最新の気象情報を確認し、安全を確保するようにしてください。気象庁によりますと、日本海から東日本を通り日本の東にのびる活発な前線の影響で、西日本から北日本の日本海側を中心に断続的に雨が強まっています。島根県では...

抜歯と欠食

抜歯した せっかく移植した奥歯は二年半でダメになった 歯周菌が強かった 歯磨きは丁寧にし続けたが負けた   暮れに冒された半分をカットして金具を装着した 半年後腫れと痛みが続きさいなまれた 歯は悲鳴を上げて土台が動いた 火曜日抜歯の宣告を受けた   まだ麻酔が効いている 夕食から傷口が落ち着くまで 1 日欠食する 開いた穴に食べ物が挟まるのが不快だからだ   上の前歯が先にやられた 70 を越えての最初のリスクだった 歯周病がはびこった口腔内 ダメージのある歯を治療した 歯茎をひんむいて歯根の周りを洗浄した 弱った歯たちは時々悪さをして苦しめた それでも抜歯に至らず予備軍がせめぎ合った   ここ数週間豆腐をずいぶん食べた 柔らないものしか受けつけなかった 葉っぱも薄いだけに噛むことが難しかった 焼き魚は舌で砕いた 麺類はただすするだけで噛まずに胃にぶち込んだ   ようやく痛みから解放される ただしばらくはリスクの高い右側を使う まだまだ食べたいものは我慢しよう 酒は明日の夜には飲めそうだ 励みはあるに越したことはない   〔 2023 年 7 月 6 日書き下ろし。老いる過程を実感する〕

新五人衆

五人衆とは歌舞伎の白波 5 人男( 青砥稿花紅彩画) のようで粋だね 白浪とは盗賊のこと 白浪五人男はつまるところ盗賊チーム   日本駄右衛門は非道はなさぬ五人男のリーダー 弁天小僧菊之助は女に化けて美人局 ガキのころから手クセが悪い忠信利平 武家のお小姓が身を持ち崩した赤星十三郎 浜育ちの野生児は南郷力丸 歌舞伎作者河竹黙阿弥が筆を執る 七五調の名台詞で啖呵切る東西きっての人気演目   さてこちらに控えしは安部派を率いる五人衆 萩生田政務調査会長に世耕参議院幹事長 松野官房長官に西村経済産業大臣と高木国会対策委員長 いずれも派閥トップには物足りない不人気目立つ五人衆   跡目相続争い抜け駆けできぬつばぜり合い 帯に短したすきに長しの五人衆 信頼置けぬと警戒の幕を張る傍観者 大所帯切り盛りするには人格足りず財足りずの五人衆 一統できぬ派閥はいずれ総裁選の草刈場 勢力を分割するしか収拾つかぬ五人衆   強きをくじき弱きを助ける 三匹の侍にはなり得ない むろん義憤に駆られた七人の侍の野武士の風情は一欠片もない 望むことすら叶わぬ私欲がギラつく五人衆 歌舞伎の舞台で喝采を受けることもない五人衆 政治の舞台で評価もオーラも薄い五人衆 誰がトップになろうと次代のリーダーには勘弁してほしい せいぜい今のままでのせめぎ合いがお似合いの五人衆   〔 2023 年 7 月 6 日書き下ろし。派閥の内部抗争もどきも安倍首相襲撃事件 1 年を迎えて熱を帯びるのか? 五人衆とはただの群れ〕

講座はすでに始まった

4 日ボランティア講座のレジュメを送り込む 乞われて 4 年ぶりに内地へ飛んでゆく   与えられた課題はボランティア入門編 ボランティアに関心はあるが戸惑う人がいる その背中を押すきっかけをつくる入門講座   戦火に逃げ惑う子らの恐怖にさいなまれる顔と破壊された街 今夏も長雨にたたられ家屋も田畑も浸水した被災地 テレビに映し出される犠牲者たちのやりきれない表情 怒りや義憤に拳を握り憐憫の涙を流す なぜそう感じたのか なぜ心動かされたのか 関心や興味を抱いてもその先には進めなかった 無力感に襲われ日常に戻ってゆく   立ち止まったままの人たちがいる 講座のチラシを見て動いた 申し込みをした ここからすでに講座は始まっていた 参加の選択と決定はその手にあった 自由意思が働いた事実と向き合うことになる それがボランティアの本質なのだと知る日まで 覚醒へ導く意識は眠ったままその日を待つ   このままでいいのだろうかという疑念と悔悟 ボランティアってなんだろうという興味と関心 何かしたいという衝動と社会的欲求 何かできるのではないかという葛藤と可能性 何かできることがあるかもしれないという願望と探求   「心を耕し 心を紡ぐ 〈わたし〉になる」 講座のテーマに惹かれた人もいるだろう 何を求めて来るのかを推し量る 講話とワークショップを組み込んだ 110 分のプログラム 〈わたし〉と向き合いながらどう生きるのかを問う 〈わたし〉の人生を肯定しつつ生き方を確かめる 〈わたし〉が何を為すべきかのきっかけを見つける   16 編の自作の詩を準備した 詩との出会いの因縁を心証づけたい 心を揺さぶることができるかが鍵になる 触発された心が解を見つけようとあがくのもいい   〈いまのわたし〉と〈これからのわたし〉 手探りで見つめるきっかけづくり 求める〈わたし〉になる道程の始まりを共に愉しもう   〔 2023 年 7 月 5 日書き下ろし。内地は長雨が続いている。来週の旅立ちは天候も荒れぬよう願うばかりだ〕

社会の不を減らす

不平を言ってもせんない 不満を吐いても変わらない 不正にはあらがえない 不快はしのぐしかない 不遇を嘆いてもつまらない 不当な扱いには慣れるしかない 不便は我慢を強いられる 不道は当たり前でしかない 不幸は不運と諦める 社会には不がたくさん取り巻いている   不条理な社会は憤りの芽を摘む 不公平な社会は差別をはびこらせる 不自由な社会は監視を強める 不平等な社会は批判を閉じ込める 不誠実な社会は利欲に走る 不道徳な社会には腐敗がはびこる   生きることへの社会の壁は厚い 暮らすことへの不安の種は尽きない つながっている不が生きにくさとなる   不の連鎖を断ち切るには非力すぎる 不の現実を受け入れるのは許せない 不への私憤を枯らさぬよう動くしかない   ひとりではなしえぬこともひとりから始まる   〔 2023 年 7 月 4 日書き下ろし。ボランタリーな活動のひとつの動機付けに「不の削減」がある〕

主人在宅ストレス症候群

テレワークでの在宅勤務の功罪 日中いなかった亭主がずっといる 外出も気ままにできない束縛感   仕事にかこつけた命令口調 仕事のストレスをぶつける八つ当たり 仕事で逃げてきた子育ての鬱陶しさ   亭主の本性がつぶさに見えてきた 我慢を強いられ諦めが先に立つ ストレスを強く感じ逃避したかった   別れることも考えた 子どものことも考えた 親のことも考えた 身動きがとれず地団駄を踏む   テレワークがようやく終わった 日常の暮らし方が戻ってきた 残渣のような感覚が心にざらつく   〔 2023 年 7 月 3 日書き下ろし。高齢夫婦の危機も退職後の妻が主人在宅ストレス症候群を発症するという〕  

50年ぶりに出会った友よ

新卒の時に出会った 1 年間の付き合いだった 転勤後の年賀状のやりとりもいつかついえた   6 月民生委員の全道研修会で 50 年ぶりに出会った 互いに年相応の風貌だったが面影は残っていた 不思議な因縁と互いの無事を喜び合った   今日メールが来た ふるさとで民生委員のリーダーとして活躍していた 幼い頃からの輩がこぞって地域づくりに汗をかく   ふるさとに生きる彼のおもいの深さに嫉妬する ふるさとの土に生きる彼の農仕事に憧れる ふるさとの人を耕す彼の生きがいに惹かれる   50 年の歳月は瞬く間に過ぎ去った 50 年のつながりは無となっていた 50 年の時間を埋めるのは不要となった   二人にはたった 1 年の出来事が人生のスタートだった 教員の卵たちが熱く論じ合い励まし合いはじけた 何物にも代えがたい青春の 1 ページこそ私の起点となった そこに優しげな面差しの彼がいた   〔 2023 年 7 月 2 日書き下ろし。 50 年して再会できた感激と同じ活動をしていることに不思議を覚えた。これから新たなきずなを紡いでいきたい〕