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世間に棲む小人

何でわたしが 追い越される 置いていかれる なぜか悔しさよりも妬みが起きる 器量の狭き小人の本性か   何でわたしが 劣っているの 認められないの なぜか憤りよりも憎しみが湧く 度量の乏しき小人の本音か   何でわたしが 否定される 非難される なぜか反発よりも忿怒(ふんぬ)する 器量をわきまえぬ小人の才知か   何でわたしが 見くびられるの 疎んじられるの なぜか恨みよりも怨念を抱く 度量を知らぬ小人の浅ましさか   何でわたしは 人の不幸を喜ぶのか 人の評判にケチをつけるのか なぜか嫉ましさに世間も呼応する 裁量のなき者たちが慰め合う   〔 2025 年 5 月 9 日書き下ろし。世間に蔓延る小人 ( しょうじん ) たちが歪な日本社会の風紀をつくる。我もまたそのひとりなりと自覚する〕

カタチばかりの撤回と謝罪

「悲惨な戦争の実相を記録にとどめ、歴史の教訓を後世に伝えようという、沖縄県民をはじめとする関係者の努力を一顧だにしない、無神経きわまる発言だ。いい加減な事実認識の下、歴史の書き換えをしようとしているのは、ご本人(西田昌司参院議員)ではないか」( 2025/05/10 朝日社説)   誤認にも関わらず持論を主張した 過去の曖昧な記憶を確かめることすらなかった 思い込みが事実を歪曲し公然と講演した 歴史が書き換えられると沖縄の教育の偏重を批判した   沖縄県民は憤怒の声を上げた 省みることなく持論を擁護した マスコミもこぞって批判と撤回を求めた 自民党の中からも批判の声が上がった 事態の収拾はおぼつかないと気づいた 発言の撤回と謝罪に応じた   記者会見で幕引きを図りたかった 頭を下げたのは 1 秒にも満たなかった 横柄な謝罪態度は記者の質問の返答にも表れた 沖縄に対する認識や思想的偏見が簡単には変わらない 『自分たちが納得できる歴史をつくらなければならない』 根本は国家主義思想や戦後教育批判だから変わるわけがない 発言の撤回や謝罪は全く心に響かないのは当然だ 卑下された県民の心を逆なでして火に油を注ぐ   発言の撤回とは間違えを正すことである 言ったことを「なし」にしましたと開き直ることではない 論拠となった展示物を捜せとさえ指示する傲慢さを見せる 自分には瑕疵がないと恥の上塗りをする   謝りとは赦しを乞うことである 一方的に問題を収拾することではない 政治家の多くは撤回と謝罪で済ませてきたことに誤りがある 参議院選挙への影響を畏れた政治的な意図は分かりやすい 本人の意向を曲げられたことへの反発が見え隠れする 謝罪とは縁遠い弁解めいた胡散臭さを感じた会見だった   彼に感謝しよう 沖縄の悲惨な戦争を振り返るきっかけを与えてくれた ひめゆりの塔の若き犠牲者への追悼の機会を与えてくれた 全国から徴集された兵士と県民の犠牲に平和があることを示してくれた 沖縄の地はいまだアメリカが占領し治外法権を是正できない事実を見せてくれた 沖縄をいまも苦しめる元凶が自民党だと...

日向の匂い

お日様ポカポカ 幼気な子が微睡(まどろ)む お日様ポカポカ 幼気な子がぬくもる 日向の匂いを纏(まと)う   お日様ポカポカ 幼気な子は夢を見る お日様ポカポカ 幼気な子が風にあやされる 日向の匂いを運ぶ   お日様ポカポカ 幼気な子は乳房を離す お日様ポカポカ 幼気な子は母の胸に眠る 日向の匂いは二人を静かに包む   お日様ポカポカ 幼気な子に幸せを運ぶ お日様ポカポカ 幼気な子は乳臭い匂いがした 日向の匂いがふと消えた   〔 2025 年 5 月 8 日書き下ろし。日向にいる母と子の幸せな一瞬を切り取る〕

世界中で爆弾が降る

どうして爆弾が降ってくるの なぜボクらは殺されなきゃいけないの 理由を聞いても大人は答えてくれない バカな誰かが命じただけだった   どうして殺し合わなきゃいけないの なぜボクらの命を奪ってしまうの 理由を聞いてもだれも答えられない バカな誰かが勝手に始めただけだった   どうしてこんなに苦しい目にあわせるの なぜボクらの小さな幸せを壊すの 理由を聞いても大人は何もしゃべらない バカな誰かが神がかりに信じただけだった   どうしていつまでも争い続けるの なぜボクらの未来を惨めにするの 理由を聞いてもだれもわかっていない バカな誰かに刃向かうことすら諦めただけだった   どうして世界中で子どもをいじめるの なぜボクらが犠牲にならなきゃいけないの 理由を聞けば大人になれば戦士になるからだという バカな誰かは根絶やしにしたいだけだった   どうして世界中で爆弾を落とし合うの なぜボクらは生まれてきたのかわからない 理由を聞けばだれも哀しい顔をする バカな誰かがいつまでもバカを続けるだけだった   世界中の子どもの涙を集めたら悲しみの河になる 世界中の子どもの笑顔を集めたら美しい花園になる 世界中の子どもの夢を集めたらきっと平和が訪れる 世界中の子どもの命を奪ったら世界は滅びる 〔 2025 年 5 月 8 日書き下ろし。 7 日インドがパキスタンに対して軍事攻撃に踏み切った。空爆で民間人にも死傷者が出ている。「国境や民族・宗教の問題で長年対立してきた両国は、互いに核兵器を保有している。報復の連鎖がエスカレートすれば、南アジア情勢の不安定化は避けられない。双方に最大限の自制を求める」と今朝の日経社説は論ずる。根が深い紛争は、世界中で死人と瓦礫の山を築く。子どもの涙が涸れてゆく〕

膾炙せしこと

世にはびこる膾炙(かいしゃ)せしこと   政治家は口が上手いとうこと さらに間違いでも正しいと意固地になること 不倫は男の甲斐性で箔がつくということ 嘘偽りは切り取り誤解を与えたと言い張ること 世直しは苦手で現状維持を心得ること 何もせずしてやったふりで税金を浪費すること ボスに傅(かしず)き下々を邪険にすること 信用はなくてもバッジで風を切ること 選挙を有利にするには邪悪な者も事も飲み込むこと 人権侵害は仲間の擁護のためにあること 野次がうまければ国会での存在価値があるということ 議員の特権を奪われないよう戦々恐々と選挙に臨むこと 仲間内の裏切りや転向はさして批判されることではないこと 真摯に受け止めるとは何もせずそのままにしておくこと 非があっても決して認めず何食わぬ顔をして居座ること 評論家ばかりで実害なしの者がたむろしていること マスコミは相変わらずつまらぬ者のコメントで世事を汚すこと メッキの剥げた事をいつまでも正義ぶって論じてるだけのこと 大局を見通す能力や魅力のない者たちが群れていること 消費税ゼロの問題もけちくさい論争で呆れ果てること 若者にシフトするだけで素人集団が政治家になってしまうこと 政策もその場限りで何をするのかしたいのか見えないこと スローガンだけで飯が食える良い商売だこと   いま怯まずに果たさねばならぬ大義とはなにか 信なくても立つのでは次はないと心得よ 選びし者たちの正すべき民力が問われていく   そんな彼らに贈る言葉 「生死事大 無上迅速」   ※膾炙(かいしゃ)膾(なます)と炙(あぶり肉)は味がよく万人に好まれることから、ひろく世の人々にしれわたっていること。  ※「生死事大無上迅速」とは、一人の人間にとって生き死には重大事であるが、無常の背後にあるそれは迅速に訪れる。ゆえに、人の生に明日があるとは限らない。いま為すべきことをひるまずしっかり果たさねばならぬということ。   〔 2025 年 5 月 8 日書き下ろし。地方も国も頭数だけの者たちがのうのうと生き残り、民主主義を歪にしていく〕

為して知る

連休後仕事を辞める 勤めて 1 ヶ月 若者は悩んだ末に退職を選ぶ   仕事が合わない 何を基準に判断したのか 何をしても不満が募る 仕事が面白くない 何を期待して選択したのか 何を言われても不平が生まれる 仕事の人間関係が煩わしい 何を求めて離心したのか なぜか必要とされていないことを知る   仕事のノウハウもまだない 何をしても心が弾まない 何がそうしたのかわからない 仕事の要領がつかめない 何をしても上手くいかない 何かそぐわない自分気づく 仕事に対する情熱が冷めてゆく 仕事の中味に不満が募る 仕事の仲間に何も感じない   この仕事を選んだのが間違えだった どこかで自分に噓をついたか ここならやれると思い込んだか この仕事への憧れが汚されてゆく どこかで腐ってゆく自分に気づいたか ここにはもう存在価値すら見出せない この仕事を辞めてもいい どこかで早めにけりをつけよう ここから終わりの始まりとしよう   自分に合った仕事はきっと見つかる これは決して挫折ではない 自分探しのアクセントに過ぎない 自分の能力を発揮する仕事はきっとある これは能力を試した結果だ 自分探しのほんの入口に過ぎない 自分を評価する仕事にきっと出会う 自分を信じる旅の始まりに過ぎない   〔 2025 年 5 月 7 日書き下ろし。若者の GW 後の離職が始まる。仕事と自己評価のアンバランスが社会現象を起こす〕

侮る顔

重大な事態を軽くあしらう 責めれば冗談だと薄ら笑う 醜い顔に吐き気をもよおす   賢人が逝けばすぐに茶化す 責めれば誰かのせいする 得意げな顔に嫌気がさす   謝罪は敗北だと信じる 責めれば頑なに我を通す 得意げな顔に不安がよぎる   正義は力だと豪語する 責めれば制裁をひけらかす 欲に酔った顔に卑劣さが走る   敵対すれば犠牲となる 責めればさらに過激となる 残忍な顔は神すら捨てる   思い通りにいかねば切れる 責めれば暴言悪行を吐く 正気を失った顔に末路を知る   化け物になることを望んだ 責めれば凶暴になり甚大な害を及ぼす 侮(あなど)る顔はすでに人にあらず   〔 2025 年 5 月 7 日書き下ろし。人はここまで残酷になれるのか。そのモデルが実在する恐怖に震撼する〕