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優しさの強さ

長い人生もふり返るとつかの間だった 固く心に決め 札幌に嫁いできて早 55 年 誰ひとり知人も友人もなく頼るは夫と義母だった   妻として母として嫁として誠心誠意尽くしてきた 寝たきりの義母はママさんありがとうと目を落とした 子育てが終わると民生委員を頼まれて 30 余年務めた   気遣うことが優しさの強さとなった 世の冷たい風にたじろぐ人の身に添った 幸せはともにわかちあい笑顔で魅了した   夫婦仲は円満で夫を立てる古風さも自然の体だった さりげなく添いつつも心根の優しさが滲み出ていた いつも互いの身をおもいつつ長寿を生きる   いつまでもおげんきで そう願わずにはいられないかけがいのないお二人 越路吹雪の「愛の賛歌」が互いにおはこだと最近知った 歌詞に込められた愛しきおもいが二人を強く結びつけていた 師と 35 年も前に出会ったことが因縁だった 「因縁諸生法 縁欠不生」 師から教わった仏法を噛みしめる日ともなった   ※「因縁諸生法 縁欠不生」(いんねんしょしょうほう えんけつふしょう)とはこの世に在る生きとし生けるものは、因縁によって存在する。縁がなければ存在することがないという法である   [ 2022 年 10 月 20 日書き下ろし。師の奥様の誕生日に感謝を込めて祝いの詩を贈る]

これからとこれまで

これからは信念があり未来志向の嘘のない政治が始まる これからは希望に満ちた未来が広がる これからは子どもの夢が膨らむ これからはいじめや差別のない教育が実現する これからは医療も福祉サービスも公平に受けられる これからは年金で安心して暮らしていける これからは心も豊かな暮らしが出来る これからは誰もが幸せに生きていける これからは争いごとのない平和な世界が生まれる これからがこうなるのは決してありえない   これまでいい加減な政治だったことに焦点が当たった これまで意図的に国民を分断してきた人が死んだ これまで法の解釈を都合よく変えてきた人だった これまでの胡散臭いゴリ押しは踏襲され国葬を実施した これまでの功罪の評価もせずに批判を葬って神聖化した これまで隠されていた暗部が事件のおかげで次々と暴き出された これまで民主主義の根幹を揺るがしてきた負の事実が明るみにされた  これまで関わった者たちは記憶喪失を偽装し説明責任を果たさずのさばる どれだけ悪しきことをしてきても謝罪で済ましバッジを汚して平然とする これまでのことはなかったことにと厚顔無恥の者たちがたむろしていた これまで苦しい思いで生きた人へ添えないまま政治不信を増幅させた これまでも政治家としての覚悟を示すことなくその場しのぎで対処した これまで世論の支持率下げても聴く耳持たずに無視したツケが回ってきた   これまでを検証せずしてこれからを語ることはおぞましい これまでの検証が嘘っぽいからこれからはもっと嘘っぽくなる これまでを得心のいく検証であってこそこれからに注力できる これまでもこれからも一本の時系列でつながっているのだ これまでもこれからも国をリードする者への不信は拭えない これまでもこれからも期待するだけバカを見る   批判をかわすだけの方便でこれからを語るのは情けない 守らなければならないのはいまを真剣に生きる民人たちだ 自己保身に走る者たちには覚悟を悟ることさえ無意味だろう   [ 2022 年 10 月 19 日書き下ろし。最後のチャンスと言い放ったソ~リ節が戻ってきた。旧統一教会の解散と被害家族の救済を強く望む]

流れに身を任す

流れるままに生きる   流れに身を委ねるしかなかった 流れに逆らうことはできなかた   流れ着く先に身を託すしかなかった 流れ着く先に身を任すしかなかった   どこに流されようと諦めるしかなかった どこに流されようとあがいても仕方なかった   人のおもいに流されて生きる 世のおもいに流されて生きる   ふと疑問が湧いた この流れって一体何なんだ 流されていくままでいいのか   ふと怒りを覚えた 流れを変える力のなさを嘆くな 流されることへの叛意を声に出せ   ふと潮目が変わる予感がした せめて流されてゆく先を知りたい   [ 2022 年 10 月 18 日書き下ろし。衆議院予算委員会の初っ端萩生田議員の自己擁護の長い演説を聴いて怒りがこみ上げてきて、すぐにテレビを消した。雛壇に並ぶ精彩のない顔ぶれに改めて日本のいまを憂う]

土方歳三と榎本武揚

熟老の修学旅行は 3 日目を迎えた ホテルでのビュッフェスタイルの朝食から体調は万全だった 師の妻女は食べられないと言いつつも見事完食した 若い二人は朝カレーで締めた 4 人とも昼は食べられないほど満腹だった   秋空の下土方歳三が松前を攻めた道をなぞる 函館から国道 228 号線を 80 ㎞海岸沿いに走る 途中当別のトラピスト修道院に立ち寄る 北海道で酪農を始め乳製品を作った聖地だ 赤とんぼの作詞家三木露風夫妻もここで生活していた 正門から津軽海峡に真っ直ぐに延びる坂道の風景に心奪われる 坂道を迂回して杉の木の山道を往復しながら森林浴を楽しんだ   新幹線の北海道入りの最初の駅木古内を過ぎ 小さな町の高校が甲子園を湧かした知内に入り高校野球の話題になる 町外れの新幹線の出入り口を左に見て福島に入る 大相撲の千代の山と千代の富士を傑出した小さな町に記念館が威風堂々と建つ   福島から土方軍は苦戦を強いられる 松前軍は防衛戦を退きながら次々と町を焼いてゆく 冬 11 月酷寒の戦場に宿泊する場所を奪われていく 歳三は野営すらできぬと強行に行軍を鼓舞する 大砲も弾丸も担ぐ銃も兵糧も人力でもってする行軍の悲壮さを想う 止まれば凍死するこの道程を車で走りながら必死の進軍を想像した   ようやく松前に着いた 城の駐車場は 2 台しか止まっていなかった 三層の小さな城は土方軍を撃破する大砲での攻防も城門を破られる 展示を見ながらここには屏風図や書の類いが多かった 代々の城主は絵師や書道家そして歌人のパトロンだった アイヌに襲われることを警戒して辺地に城を築いた 幕末まで交易の場所として栄え文化を愛でた場所にいた 松前桜をロンドンの南東ベネンデン村に植樹する記事が道新に載った 100 年前に貴族だった祖先が桜と出会い庭園に植えていたという 1993 年桜守淺利政俊さんが英国王立公園から松前桜を購入したいとの依頼を受けた 第 2 次大戦時多くの英兵が収容され苛酷な環境の中落命した函館捕虜収容所 その償いの意味を込め平和と友好の印として無償で提供したという 師夫妻は春に桜を観に来た昔を懐かしみながら...

外遊じゃ逃避行

11 日 NHK 世論調査の結果発表 岸田内閣を支持するが 38 %  支持しない 43 %で不支持が上回る 13 日の時事通信の世論は世論の肌感覚か 支持しない 43 %は NHK と同様 支持は 27 %と初めて 3 割を切った 朝日が先月 3 割切りをしたが政権は静観した 当たらずとも遠からずの政権危機のバロメーター 青木率は「 50 ・ 5 」危険水域に達している   危ない橋を叩いて渡る度胸もない 大好きな外遊に逃避行とはにべもない 国費をかけた外交辞令のパフォーマンスに明け暮れる 安倍国葬で味噌を付け旧統一教会絡みで面目を失い やる気を出して動いたための支持率急落ダメージ深い いまさら統一教会の調査検討では風見鶏の風失いで評判落とす   首相の器でないとの判断は正しかった 禅譲を待つことだけの予告編で良かった なりたくともなれない器ばかりがのさばる 欠けた茶碗は修復しても大きさはそのまま どれだけなりたいとごんぼをほってもなれるものではない その時のタイミングでしかないのは歴代のなぜこの人がで学習済みだ それでもなお冴えない器に番が来て居座った だから古老は口出しせねばならぬといらぬちょっかい出してくる   緊急に手を打たねばならぬ国会対策を放置する 外遊優先で飛び回りしばし世間の風当たりを回避する 国民生活は後回しで実の上がらぬ外交に現を抜かす 外交より内政優先を求めた世論の結果に危機感持たぬ   党派を問わずどこまで政治感覚が鈍いのか 勘違いの議員たちにいまだいいように振り回される 鉄槌を下す日を待つしかない   ※青木率とは、自民党参院幹事長・内閣官房長官などを経験した青木幹雄氏が唱えたとされる指標。 内閣支持率と与党第一党(自民党)支持率の和が 50 ポイントを下回れば、「現政権はもうもたない」と言われる。   [ 2022 年 10 月 16 日書き下ろし。旅行中に世論調査が出ていた。困った者たちが困ったことに困ったことを困ったようにしかできない無策集団という困った事態がわかった]

函館山の夜景と誕生前祝い

2 日目の夜箱館山に登った ロープウェイは定期メンテナンス中 タクシードライバーのガイドを楽しむ 夕陽は緋色を撒いて徐々に下界を染めてゆく   頂上は修学旅行生や団体で賑わいつつあった 展望台に上ると幸いなるかな一人分スペースが用意されていた 師の妻女を押し込んで男三人風よけとなった 登ってきた時間といい場所取りといいナイスタイミングだった 街灯が光を強めていく様を喧騒の中で眺めた 街の輪郭を光で形作ってゆく暮れゆく景色に時間を忘れた 十分堪能し展望台の裏に回ると松前方面の残照が美しかった   夕闇が街を覆う中ホテルに着いた 往復予約のタクシー代は 6,400 円 ロープウェイの4人分に匹敵した 運行停止でのタクシー利用はコロナ対策にもなった   冷えた身体を温泉の湯船に沈めた 今晩のメインの誕生前祝いが始まった 師の妻女の 82 才の誕生日を旅中で祝う 乾杯の後タラバガニの身に取り憑き寡黙となった 妻女の嬉しそうな様子が師には一番の贈り物だった 昨夜の反省からビールは控えめにしたつもりだった 一日のふり返りと明日の旅程を語る愉快な時が流れた 80 代の夫婦と 70 代の男 2 人の熟老修学旅行の 2 日目を無事終える ドライバーを担う師の弟はベッドに入るなり速攻で眠りに落ちた 明日は渡島半島を半周するロングドライブとなる   [ 2022 年 10 月 15 日書き下ろし。天候に恵まれ時間の束縛もない気ままな一日を満喫した]

白浜に遊ぶ

啄木小公園の白浜には蟹はいなかった 土手から波寄せる浜にためらいなく降りた 砂鉄で真黒くなった砂浜は真っ白い砂に変わる 空は果てしなく碧く澄み渡り波は静かに寄せてくる 影は限りなく短く足下にある 師夫妻は童心に返ったように楽しんでいた   右手の函館山はまだ緑を多く羽織る 箱館戦争で戦死した旧幕府軍の兵士たちの供養碑に参る 碧血碑(へっけつひ)には土方歳三など約 800 人が眠る 函館八幡宮の近くの山腹に建てられた碑を探した 案内板を見つけ 60 段程の階段を登った先に大きな石碑を見つけた 箱館山の市民散策ルートから少しそれてひっそりと立つ 澄んだ空気の中師は短く読経し南無阿弥陀仏と唱えた   そこから石川啄木一族の墓は近かった その先に立待岬があった 環境客はまばらだった 岬から青森の大間崎から竜飛岬に目を転じた 波間に数隻のフェリーが行き交う マッタリとした時間と空気を静かに感じていた 与謝野晶子の歌碑のある近くのベンチに腰掛け 4 人はソフトクリームで渇いた喉を潤した   天候に恵まれたことが一番のご褒美だった 車は土方歳三記念館に向かった そして白浜で戯れた 波との追いかけごっこは見事に負けた 小波から大波に変わるタイミングを間違えた 靴は波に洗われた 師は流れ着いた杖もどきの白い棒を拾った 師は娘が喜ぶといって車のトランクに入れた これでお土産代が浮いたとも   歳三記念館は展示館としては手狭だった ただ資料は豊富でついつい熱中して時間を忘れた 混み合うこともなくゆっくり鑑賞できたのは幸いだった 特に新撰組隊士の日本刀は圧巻だった どのように集めてきたのか気にかかった   晩の食材を奮発しようと駅前の朝市に入った 朝からの発送作業を終えて 14 時前には店じまいする 3 人は先に駅のレストランに行ってもらった お目当てのタラバガニを面白く値切って買った 駅で落ち合い蕎麦をいただいた   元町を散策しようとハリストス正教会に向かった 残念! 工事中で見ることが出来なかった 早々に切り上げ夜の夜景に備えることにした...