投稿

先行き不透明

世の中が急激に変化する 政治も経済も科学も情報も いたずらに異次元を標榜して変えようとしている 何が起こるのか先行き全く不透明   世の中の変化にたじろぐだけ 子育ても安定した仕事と収入が課題だ 防衛で金をばらまき生まれた子は兵士にするのか 政治の旗振る者はスローガンだけで生き延びる 投票率が最低でも民意を得たと勝った気でいる 地方自治を担う者たちが中央集権に拍車をかける 政治への関心も薄れ委ねる先は不透明   日銀の総裁が 10 年でようやく替わった アベノミクスを推進した上級国民総裁 金融引き締めだけで国の財布を担った 国債発行だけで功績は何ひとつない 新総裁の検証も仕事も行きつく先は不透明   「 ChatGPT (チャット GPT )」 AI 研究は現実化を突きつけてきた AI が人間の知能の分析や判断そして表現までやってしまう 国会の答弁書にも利用できると閣僚はぶち上げる 国防も教育も経済もチャット GPT に答えてもらおうか 役に立たない政治家も官僚もこれでは立つ瀬はないだろう 人間が判断ミスをする確率よりもかなり高い精度で短時間に処理できる ビッグデータから予測される未来図をのぞいてみたい これが金儲けの手段だけではなく人間を統括する力に変わる おぞましきものか救世主なのか全くわからない 世界の行きつく先はすこぶる不透明   理解不能の事態が判断不能な我が知能を減退させる その生きる先は混沌として不透明   [ 2023 年 4 月 12 日書き下ろし。事態を理解できない。世情の情報処理と分析の能力が低下中。世の中の変化に追いつけず、困惑している]

言葉を奪われる

日本帝国が韓国を併合した時代 朝鮮語は弾圧され日本語が強要された 名前も奪われ日本名に改名させられた 朝鮮民族の言葉が奪われていった 民族の魂が宿る言葉が強奪されたのだった   朝鮮語を死守する研究者 日帝との熾烈な闘争に多くの民衆も陰で支えた 方言を集め標準語に統一する作業は困難を極めた マルモイ(辞書)を編纂する者たちは弾圧され投獄された 1942 年「朝鮮語学会事件」で 2 名が拷問死した 13 年の月日を費やしてマルモイの原稿は完成した しかし日帝の執拗な捜査の中原稿は紛失した 懸命に探したがついに見つからなかった そのときの喪失感は想像を絶した   1945 年 8 月 15 日日本の敗戦 民族の解放の日は民族の魂を取り戻す日となった 解放後奇跡的に原稿が発見された 1947 年「朝鮮語大辞典」が無事編纂出版された   ウクライナを支配下に置いたロシアが最優先したのは 市民へのロシア語強要だったことは記憶に新しい 領土だけではなく民族の魂を奪うのは 従属国にするための常套手段であることをいまも示す   「ミンドゥルレ(タンポポ)の語源は 門(ムン)の周り(ドゥルレ)に咲き広がる花だから ムンドゥルレがミンドゥルレにかわってゆく 一人の十歩よりも十人に一歩が大切だ タンポポの種が飛び広がるように生きた言葉を伝える 知識の輪が広がれば世界は変えられる そうすれば独立も勝ち得ると 人が集まるところに言葉があり 言葉が集まるところに志があり 志が集まるところにやがて独立への道が開かれる」 (韓国映画 2020 年『マルモイ~ことばあつめ』の字幕から)   「朝鮮語大辞典」は自国の言語と民族の魂を 復活させた祈念書ともなった   [ 2023 年 4 月 12 日書き下ろし。朝『マルモイ』を見終わる。韓国との関係を改めて見直した映画だった]

喪失を超えて

喪失は避けられない 形あるものはすべて滅びる 手にしたものはすべて失う 残せしものは想い出だけか   喪失は防ぎようがない 人は失うことなしに生きられない 人は滅びゆく定めを生きるしかない 残した印は名のみか   喪失は苦行か 人は愛する人との別れに痛哭する 人は愛することで別れを刻印する 残された日々は苦悶か   喪失は覚悟か 我が身を削る痛みを引き受けるしかない 我が身に余る痛みを乗り越えるしかない 残された身はいまを生きる   [2023 年 4 月 10 日書き下ろし。必然的な定めをかわすしかない弱き身も愛する者の喪失は避けようがない。老いるのはその覚悟を日々求められることかと ]

刷り込まれる恐怖心

人はいつ恐怖心を植え付けられるのか 人はなぜ恐怖心を抱き続けるのか 人はどのように恐怖心を刷り込まれるのか   国家は過去の恐怖心を恨みの文化に育てる 国家は過去の恐怖心を憎しみに仕立て上げる 国家は過去の恐怖心の再生を際限なく繰り返す   恐怖は継承された統治力に変異する 恐怖で恫喝しつつ権力者の欲望を満たす 恐怖から逃れられない教育統制を強化する 恐怖を煽り敵愾心を愛国心にすり替える   衣の下に鎧を身につけて民生を説く アジテーションは服従を強要する 逆らうものは銃火にさらし牙をむく わずかな施しを与え自由を奪う 陰謀と欺瞞だけが世に満ちる 身勝手な振る舞いは恐怖心から発する   外敵を常に意識させ労働と窮乏を強いる 兵器開発に科学者はうつつを抜かす 食糧難で民も兵士も体力を消耗するばかり 恐怖は宗教に救いを求め神は権力の意に添う   恐怖心にかられた者たちは 時代を超えて蘇る 恐怖心を抱く者たちは 歴史を学ばず蘇る 恐怖心に凝り固まった者たちは 己の恐怖心を克服できぬ小心者だった   [2023 年 4 月 8 日書き下ろし。戦争を誘発する要因に国家として恐怖をいかに継承するのか。仮想敵国を想定した安保 3 文書もまた大きな危険を孕む ]

葛藤しない教師

葛藤しない こんなタイプはすぐ身近に見つかるでしょう 葛藤には縁がない 上手に世渡りしてきた人もいる 葛藤は無用 教科書をマニュアル通りに教える 文科省が選定した教科書になんの疑問も感じない 葛藤には及ばない 独り合点の指導も授業も密室だけにわからない 学校もヤバいと知れば穏便に済ますことを考える 葛藤するだけ煩わしい 茨城大教育学部付属小学校の重大事態はその典型か 研究レベルの高い付属学校ですらそうなんだ だからどんな先生でも諦めるしかない   葛藤回避 道徳が教科になって久しい 教師個人の道徳的価値観は不要となった 教科書を教えるだけで個々の葛藤はなくなった 授業では子どもが教材を語り合えばいい 教材の読解力が求められるだけのこと 子どもは自己葛藤などせず言葉遊びに終始する 教師の姿を見れば道徳性は歴然と見えてくる 心の変容を求める指導力など期待できず   葛藤破棄 忙しいがすべての仕事の免罪符 雑務に追われて授業はいつも準備不足 できないまま授業に臨んで教えることが当たり前 雑務も処理能力がないから時間ロス 新しいスキルを学ぶ意欲もないから好都合 浅い経験値だけで仕事が出来る働きやすい職場   葛藤無視 落ちこぼれは構う時間も手間もない 学力が育たないのは子どもと親の資質と家庭環境 追いつくには親がしっかり見てあげて 親が出来なければ塾に通わせろと暗示する 職員室では親と子どもの話題で花が咲く   葛藤黙殺 熱心な担任が下手に補習でもしたいといえば 足並みを崩すのかと叱責されるのがおち だから一度こぼれると元にはなかなか戻れない 出来ない言い訳を正当化して子どもをこぼす やりたくないから忙しいと子どもをこけにする   葛藤皆無 授業は赤文字でポイントが書かれた虎の巻教科書で済む話 評価は教材ごとに市販のペーパーテストで済む話 出来た出来ないの単純な振り分け作業でお茶濁す 授業の検証など忙しくてできるわけないと開き直る 新学期 4 ヶ月もすればすぐ夏休みが待っている 超ご多忙のご褒美が待っている 長期で...

一枚の写真

師は野生動物を撮る写真家から写真を贈られた 幼鳥のフクロウの A3 サイズ 2 枚の写真 1 枚は三羽が仲良く枝に止まる白黒写真 もう一枚は大きな瞳を真正面から捉えた カラー写真   巣から落ちた幼鳥が這い上がっていく 写真家と同じ目線の高さで捉えた貴重なショット 柔らかな萌え色の葉陰に大きな瞳が写真家を見つめる 柔らかな薄灰色の産毛がぬいぐるみのようにその身を丸く包む あどけない表情が抱きしめたくなるほど愛らしい   自宅の玄関口から見える廊下の壁に飾った ウエルカムフォト 来客者に小さな感動を一瞬のうちに抱かせる ウエルカムフォト 来客者が癒やされる空間を愉しむだろう ウエルカムフォト 来客者は心に留めながら話題にするだろう   一枚の写真が住まいする家族を明るくする 外出から戻ったときに最初に迎えてくれる 一枚の写真で住まいの雰囲気がガラッと変わる 見守られているような不思議な感覚が生まれる 一枚の写真は住まいの中に自然の息吹を与える 小さきいのちに共鳴する感性を静かに刺激する   [2023 年 4 月 8 日書き下ろし。一枚の写真が持つメッセージ力は言葉を超える力がある ]

わずらわしきこと

ホテルの朝食時大声で話す外国人たちがいた 我が物顔の横柄な態度が目に余る 海外からの観光客の儲けを当てにする昨今 交通機関の外国語のアナウンスも復活する ただただわずらわしきことも多くなる   日帰り温泉はいまも黙浴を喚起する 年寄りが大声で知人とおしゃべりし出す そばで話してと言えば迷惑かと聞く そうだと言えば文句があるならサウナにこいと 訳のわからぬ言葉を残し入っていった ばつが悪かったのだろうか 残った相手は我慢が足りぬと説教始める 恥の上塗りに気づかぬエゴを見た まだひとりわずらわしいのが残っていた   コロナ禍で挨拶せぬことが当たり前になった マスクが外れても声に出すのはまれだ 挨拶しても黙礼だけですれ違う 身近に住まいしていても顔もわからぬ 職場に行けば挨拶励行はしているのだろう わずらわしさを回避するに はまずは出会わぬことか   世間のわずらわしさに関われば面倒くさい わずらわしさを拒んでも向こうからやってくる わずらわしくならぬよう無視を決め込むしかない そこがなかなか難しい己が一番わずらわしい   [2023 年 4 月 7 日書き下ろし。三猿にはなれぬ。猿に例えると誤解を招く昨今か ]