投稿

不登校どうする?

携帯の着信音が鳴った 「もしもし、あっ大家さん、ご無沙汰してました。お変わりありませんか?」 「ここんと電話がないので、忘れられたかと、つい寂しくて…」 「のっけから、嬉しいことをおっしゃいますね。ありがとうございます」 「いやいや、そう言えばきっと喜んでくれると思いましてね」 「なんですか、そのおっしゃりようは」 「いやいや、あんたも仕事で忙しくしていることだろうと電話のないのは良い便りと思いながらおりました」 「さすが年の功、お見通しで」 「仕事でお忙しいことは重々承知で、この電話いまはいいですかね」 「大丈夫です。ちょうど仕事の手がすいたところで、グッドタイミングです」 「電話をしたのは、ちょっと相談に乗ってほしいことがありましてね」 「私のような者でもお役に立つんですかい?」 「これといって相談する人もいなくて、あんたに電話した次第です」 「またまたおっしゃいますね。これまた嬉しいやら哀しいやら」 「相談というのは、子どものことです」 「えっ、隠し子ですか?」 「バカ言っちゃいけないよ。そんなこと口が裂けても言えません」 「身に覚えがあるってことですか?」 「いやいやそうじゃなくて、身の覚えもなにもこれっぽっちもありません。潔白です」 「さっきのお返し、ちょっとからかってみただけですよ」(笑い声) 「ほんとに人が悪い」 「それで、子どものことってなんですか?」 「そうそう、そこんところが今日の用件、話の腰を折らんでくださいよ」 「すいません。それじゃ正座してお聞きいたします」 「改まってもらうと話しずらいね。実はね、学校が始まって、近所の子どもらも元気に通い出したんだが、ひとり学校に行けない子がおりましてね。うちのばあさんが親御さんから話を聞いてきて、そのお鉢が私に回ってきたという次第です。どうしたもんかと思っていたら、あんたが不意に現れて、電話をしたという次第です」 「まるで妖怪ですね。なにか用かいって」(笑い声) 「またまた腰を折りますね」 「すみません。腰も口も軽いようです。あっしにはもう小学生の子はいないので、なんとも分かりかねますが、子どもにも子どもの事情ってんもんがあるんでしょうね」 「まるで大人だね」 「今どきの子は、けっこうしっ...

火炎に身を焦がす

ゆらめく炎を黙して眺める 風の揺らぎに身を任す 爆ぜる瞬間火花が散る   薪の弾ける音に聞き入る 風が揺らぐと炎が勢いづく 火炎が回りを明るく照らす   闇夜に燃える炎を眺める 風の揺らぎに火力を強める 高く上がった火の粉が降る   独り夜の静寂に座す 風の揺らぎは頬に熱を吹かす 冷気は炎に取り込まれる   火炎に刻を忘れる 風は揺らぎながら身を包み込む 原始からの営みに身を焦がす   火炎に魅入られる 風は強弱を繰り返し揺らぎ続ける 雑念は消え無心の境地に至る   〔 2025 年 2 月 20 日書き下ろし。火炎の不思議を思う〕  

瞬時に判断する

道民児連主催の新任研も終盤を迎える 改選から三年目 全道 9 地区を巡回する 幸いなるかな今日まで 7 地区無事終えた   12 月の次期改選まで研修テキストの改編がある 講師を託されて三回目の改選となる いまのテキストは二年前に改編したものだ その間民生委員活動に関わる詩編も多く書いた それらもテキストの編纂に参加する コンセプトを決めてかからねばならない 12 月の改編までさらにまた詩編が増える 2200 編の詩編の整理をしながらいまから構想を練る 編纂はこれから時間をかけて楽しみたい   研修はいつのもワークショップ形式だ この手法も 6 年を数える 基本的なカタチは出来たとしてもそれだけだ 人数の少ない参加者にどう満足感を与えるか 7 地区の基本的な進め方は同じであってもだ 詩編の選別に誠意を見せたい 84 編の中から参加者の状況を一瞬のうちに判断する   地区によっても男女比や年齢層の違いで訴えることが違う 会場で空気を読みながら再構成をする 詩編が変われば当然次の流れも変わる ストーリーを組み立てつつ流れを想像する これが生の研修の醍醐味だ 地域で踏ん張る方々への礼儀をこうして表す できる限り彼らの求めるものを感じたい だから複数路線を用意する ワークショップの最中にも変更するのだ 人は引き出しが多いと評価するが綱渡りだ   画一的な研修プログラムを拒否する 研修は参加者との真剣勝負でしかない 90 分という時間で高揚感を残しながら去るのがいい また会いたいという講師への最大の賛辞も嬉しい   今日は従来の手法を見直してさらなる参加型にした 男性が多かったことに起因する 感情移入する詩の朗読を参加と競演する 声に出すことで詩の本意が表現されてゆく 学校時代から遠ざかっていた詩の朗読にも抵抗がなくなる 詩の朗読シャワーを浴びて心を昂揚させる 一編でも心に刻まれた詩に出会えることを願う テキスト外の「くるまれて」を目を閉じて聴いてもらう 「私がわたしを生きる」を読みいまの自分を省みる 〆に「生まれてきた理由」を読み上げて終...

仲良きことは

仲良きことは 美しきかな 悲しきことは 定めなるかな 楽しきことは 愉快なることかな 嬉々とすることは 笑顔なるかな 善くすることは わかち愛なるかな 幸せになることは 集う人となりか   〔 2025 年 2 月 15 日書き下ろし。昨日師の 85 歳の誕生日を祝う会を家族と仲間と催す。その席で謳った詩である。長寿を願う〕

詩集「妹よ~悲恋・夢詩・恋歌」

妹よ   妹よ 感傷的な世界に浸る あなたを知りました 片恋であり 失恋であり 告白前の夢恋を 知りました 憧れの恋を 知りました   妹よ 恋に 逃避した 恋に恋していたのは あなただった それが 夢想の世界なのか 現実なのか 決して 答えてはくれない   妹よ 恋に苦しみながらも 青春を駆け抜けたという その真実をさらけ出した 詩との出会いに 痛みを伴う 深い共感を抱いた それは あなたを理解する 唯一の手がかりとなった   妹よ 新しい旅立ちの日は 間近だ だから  あなたが残した 恋詩(こいうた)の一片を あなたが残した 淡く切ない恋情のかけらを いまこうして 書き残すことを 兄からのはなむけとして 受け取ってほしい あなたのために なにもできなかった後悔と あなたが 妹であったことへの 深い感謝を込めて   ( 2019 年 11 月 17 日。妹琴代との 50 年を超えての語らいです)     暁に舞う   ある日 少女は目を閉じて 心の唄を きいてみた それは淋しく 静かにひびき 安らかな 祈りを灯して 咲く花の 命を唄う   あの日 少女は愛を知り 嬉しいはずのほほえみが なぜか悲しく 空を仰いでいながら 暁の目覚める夜半の音に 包まれながら 咲く花の命は 尽きた   暁の舞う夜に 少女は身をとじた 暁の恋に破れて 少女は身をとじた 暁と化して 少女は身をとじた   ( 1967 年 10 月 1 日に書かれた作品)     夢詩(ゆめうた)   夢を見ました あなたの夢です 手には届かない   あなた だから   夢で会うのです あなたの笑う顔が   見たくって 私は   いつも夢で会うのです あなたのために   私は眠る あなたに逢いたくて   私は眠るのです 私の夢は   いつまで夢なのか いつわりの愛に  ...