詩集「妹よ~悲恋・夢詩・恋歌」

妹よ

 

妹よ

感傷的な世界に浸る あなたを知りました

片恋であり 失恋であり

告白前の夢恋を 知りました

憧れの恋を 知りました

 

妹よ

恋に 逃避した

恋に恋していたのは あなただった

それが 夢想の世界なのか 現実なのか

決して 答えてはくれない

 

妹よ

恋に苦しみながらも

青春を駆け抜けたという

その真実をさらけ出した 詩との出会いに

痛みを伴う 深い共感を抱いた

それは

あなたを理解する 唯一の手がかりとなった

 

妹よ 新しい旅立ちの日は 間近だ

だから 

あなたが残した 恋詩(こいうた)の一片を

あなたが残した 淡く切ない恋情のかけらを

いまこうして 書き残すことを

兄からのはなむけとして 受け取ってほしい

あなたのために なにもできなかった後悔と

あなたが 妹であったことへの 深い感謝を込めて

 

20191117日。妹琴代との50年を超えての語らいです)

 

 

暁に舞う

 

ある日 少女は目を閉じて

心の唄を きいてみた

それは淋しく 静かにひびき

安らかな 祈りを灯して

咲く花の 命を唄う

 

あの日 少女は愛を知り

嬉しいはずのほほえみが なぜか悲しく

空を仰いでいながら

暁の目覚める夜半の音に 包まれながら

咲く花の命は 尽きた

 

暁の舞う夜に 少女は身をとじた

暁の恋に破れて 少女は身をとじた

暁と化して 少女は身をとじた

 

1967101日に書かれた作品)

 

 

夢詩(ゆめうた)

 

夢を見ました

あなたの夢です

手には届かない あなた

だから 夢で会うのです

あなたの笑う顔が 見たくって

私は いつも夢で会うのです

あなたのために 私は眠る

あなたに逢いたくて 私は眠るのです

私の夢は いつまで夢なのか

いつわりの愛に 目覚めたい

夢を抜け出して あなたの心に灯を ともしてみたいのです

あなたの夢を 今夜も見ましょう

そして 話しましょう 夢はいやだと

あなたの手の中に

あなたの心の片隅に

あなたの脳裏に私は住みたい

愛を知ったから

 《「夢を抜けだして」昭和4472218歳》

 

白紙のままで 終わりたくない

このまま歩いてゆけば あなたとは平行線

交わることもなく 微笑むこともなく

差しのべてくれない 手の冷たさ

これが 恋なのか

恋は 私に苦しみを与えて 終わるのでしょうか

それは 恋とは呼べない

あなたに尽くし あなたに燃えて あなたの心の中で育つ

恋に恥じない 恋をしたい

白紙のままで 終わるなら

恋とは呼べない

恋とは呼べない

《「恋とは呼べない」昭和4482618歳》

 

叶えられることのない 恋ゆえに

この味を ただひとり噛みしめた

追いつくことも 追い抜くこともできない

《「片恋」昭和4391517歳》

 

妹よ

感傷的な世界に浸る あなたを知りました

片恋であり 失恋であり

告白前の夢恋を 知りました

憧れの恋を 知りました

 

妹よ

恋に 逃避した

恋に恋していたのは あなただった

それが 夢想の世界なのか 現実なのか

決して 答えてはくれない

 

妹よ

恋に苦しみながらも

青春を駆け抜けたという

その真実をさらけ出した 詩との出会いに

痛みを伴う 深い共感を抱いた

それは

あなたを理解する 唯一の手がかりとなった

 

妹よ

新しい旅立ちの日は 間近だ

だから 

あなたが残した 恋詩(こいうた)の一片を

あなたが残した 淡く切ない恋情のかけらを

いまこうして 書き残すことを

兄からのはなむけとして 受け取ってほしい

あなたのために なにもできなかった後悔と

あなたが 妹であったことへの 深い感謝を込めて

 

 

悲恋

 

雪降ることを 祈りました

雪が降って

私を洗い清めてくださるように 思えたから

けれど

雪が 今降ろうとしている空をみると

雪の降ることを 祈るのは

私にとって 最高のわがままだと 気づいたのです

私の心の中に住みつく 黒い影を取り除くには

歩む道を まちがえてしまったと 気づいたのだから

まちがえた道を

私の道として 私のものとして 雪にめぐり逢いたい

雪の降ることで 私は幸せになりたい

《遺稿「雪降る」昭和44年初冬18歳》

 

涙が流れます

封印してきた あなたの詩情

受けとめられなかった あなたの心の奥の声

まちがえた道を 私の道として歩むと決めて

天を仰いで 倖せを祈るあなたの姿

その青き苦悩に 寄り添うこともなく

その青き願望を 理解することもなく

いま 雪降る闇夜を仰ぎます

 

 

生まれてきたもの

一つの愛の物語

無数の愛の花開く 片恋の道 無数の道

その一つ一つが 少年の五体へ通じる 

意味のある旅人

好きになった少年の唇を そっとこの唇で触れたい

生まれてきたものへ 通じる恋の道

《「生まれてきたもの」昭和4351917歳》

 

 

幼いとはいえない 恋心

叶わぬおもいを したためた

心残り 悔しさに

ただただ 涙が零れます

時に あなたは激情だった

だからこそ 生きていてほしかった

 

 

視界のきかない世界

それは 恋の地獄

もがきあえいで 

苦しみの果てに 花は散る

地獄の炎は 恋日記

全盲の壁を のりこえて 

叫び はいずり 狂い舞う

男は かかえる頭の重さを知らず

恋を捨てずに ノラ犬の如く這いまわる

女は 胸の痛みのとれぬままに 恋に捨てられ

ノラ犬の如く 男を探し求める

繰り返しの 恋日記

恋の地獄は さよなら地帯

もがき苦しみあえぎの果てに

青い焔が 一節詩う

さよなら地帯

《「さよなら地帯」4331317歳》

 

詩の中に 生身の女の子が 生きていた

それだけが 彼女の生の証

恋に身を焼く ヒロイン

求めてやまない恋情に

青の感性が 彩られていた

胸が 締め付けられています

いまも やるせないのです

どうしょうもなく やるせないのです

 

 

恋詩(こいうた)

 

 ひとりです

あの子はつかれて

この子は淋しぃ

雨の街を あなたを求めて歩きます

声をかけてくれたあなたの影を 求めて歩きます

あなたの恋する人が 別にいても 

あなたを求めて歩きます

ただ あなたからの一声をきくために

濡れた髪を 肩に垂らしたまま歩きます

 ひとりです

《昭和4351917歳》

 

東京の雨空の下 あなたは何を見ていたのだろうか

中学を出てすぐ 東京の美容専門学校に通った

母の親戚の店で仕事しながら 学校に通った

あなたの心の空虚さを知らず 

ただただ あなたは雨の街角を彷徨する

ひとりぼっちの孤独感を知らず

ただただ 父はひとり寡黙に無事を祈っていた

 

二人して ふり返ってみよう

後ろに咲いていた 赤い花房を

雨の滴を口に含んだ 幼い昨日を

あの頃の二人

仲の良い かわいいちいさなキューピット

今も変わらず 赤い花房は

二人で探した道に あるかしら

幼い昨日

幼い昨日に

手を取り合って 二人で駆ける

なつかしい 幼い昨日

《「幼い昨日」昭和4472418歳》

 

幼い妹の可愛い笑顔が 彷彿します 

手を取り合ったのは 誰でしょう

ふるさとの街 その風景に溶け込む幼児二人

末の妹だったのかも しれません

仲の良かった弟かも しれません

チャーミングな優しいお姉ちゃんでした

世界が光り輝き やさしいぬくもりに包まれています

涙が モニターの画面をぼかします

 

 

暗い部屋でばかり過ごしてきたから

私は明るいのでしょうか

太陽を忘れて歩いてきたから

あなたに逢ったときの 私の驚きは

言葉では言えません

私の心の中に入って

私の心を隅から隅まで調べてください

あなたのことでいっぱいです

あなたという太陽で

私の心の中で

あなたは 何と明るいことでしょう

暗い部屋の中で過ごして歩くのは もう疲れました

私の手をとって 肩を抱いてください

早く昔の私に帰りたいから 

何も知らない私に帰りたいから

もう 疲れました

《「疲れてしまった私」昭和4411118歳遺稿の一つ前の詩》

 

肉親だからと 言われても

肉親だからこそ 悲しみの淵は深いのです

十八歳の身空で 夢も恋も突然 なくした妹に

その悲しき残酷さを 恨みながら

ただただ悲嘆の思いを 閉じ込めて

五十年 生きてきました

 

父母との永久の別れは 覚悟の上での

看取り尽くした後の やりきれなさでした

でも 妹よ

あなたという存在が 

忘れてはならない存在として

いまも生きているのです

 

妹よ

言葉にならない言葉を越えて

意気地なさを 素直に表出できる存在として

いまも生きているのです

 

妹よ

浄土で あなたを最も愛しんだ 父や母と出会ったでしょうか

あなたは 五十年の刻を経て 輪廻転生します 

兄は もう二度とお会いできないのです

だから 父と母からあなたのことを尋ねましょう

 

妹 琴代よ

別れの刻が きたようです

あなたを忘れることは 決してありません

涙で言葉が かすれます

 

さようなら 妹よ

さようなら 琴代

 

20191121日五十回忌の命日、最期の別れとなりました)

 

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