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理想を追い求める

かくありたいと理想を描く かけ離れた理想像を追及する 果たして求めるには脆弱さが禍する   かくありたいと願う 惹かれる人間像を想像する 果たして願うには貧しい品性が禍する   かくありたいと夢見る 憧れるモデルを模倣する 果たして夢を叶えるにはセンスが禍する   かくありたいと挑む 難しい課題を明らかにする 果たして報われるには中途半端が禍する   かくありたいと切望する 改革へのプランを具体化する 果たして成就するには人望のなさが禍する   かくありたいと理想に燃える 賛同する仲間と取り組む 果たして持続するには気力だけでは禍する   かくあるべきだと理想を掲げる 導くカリスマの力量に頼る 果たして目的と利害の衝突が禍する   かくあるべきだと理想が消える 求めても求めきれない現実にたじろぐ 果たして理想を喪失した世は禍をもたらす   求めるのは理想そのものではない 人間社会のありようが人間らしく生きることを可能とする 求めるのは理想へ向かうエネルギーのベクトルだ 人間社会でのあるべき姿が人間として生まれた幸福を証明する   〔 2025 年 8 月 12 日書き下ろし。理想とは何か。人はなぜ理想を追い求めるのか〕

当たり前ってなに

当たり前の事実に向き合おう 困ったことがあれば手を貸してくれる人はいるかい ひとりでは出来ないことがあれば声をかける人はいるかい どうにもならなくなったら素人では無理だね   当たり前だと思い込んでいなかった 困りごとは誰かが手を差し伸べてくれるって ひとりでやれないことは誰かが手助けしてくれるって どうにもならなくなったら誰か相談にのってくれるって   当たり前にするってどうして だって困っていればほっとけないしょ ちょこっとしたことなら出来るっしょ どうにもならないことまで深入りはしないよ   当たり前に思うのはどうして お世話されたお世話することのお互い様かな 恩を仇で返すのは心苦しいしょ どうにもならないときは助っ人を呼ぶわ   当たり前に考えるのはなぜ 子育てもひとりで悩むのはしんどい 老いて動けなくなるのは不安でしょ どうにかしたいとき誰かがいれば少し安心できる   当たり前ができない 自分勝手なことばかりで嫌われたらアウトだね 不平不満をぶつけてくるのも厄介だね どうにも余計なお世話は焼くことはないかな   当たり前を互いに創る 人を気遣う思いやりがあったかいね 損得なしに動けるのが一番だね どうかして世間にはそんな人が少なくなったね   当たり前を確かめる 助けって言ったらすぐに駆けつけてくれる人はいるかい 助けって言われたらすぐに駆けつけることができるかい どうぞ指を折って数えてください それがあなたの存在価値かも知れません   〔 2025 年 8 月 13 日書き下ろし。今朝知人の死亡記事を見た。冥福を祈ろう。お世話になったことを思い浮かべながら「当たり前」が出来なかったことを悔やむ〕

祈り

信仰の厚き者は真摯に祈る 信仰の薄き者は場に合わせ祈る   信仰の厚き者は己と向き合う 信仰の薄き者は世間体を気にする   信仰の厚き者は教えに忠実である 信仰の薄き者は教えをはぐらかす   信仰の厚き者は教条に頑なに従う 信仰の薄き者は教条を利用する   信仰の厚き者は啓示を引き受ける 信仰の薄き者は運命に身を委ねる   信仰の厚き者は心穏やかに暮らす 信仰の厚き者は心定まらず揺れる   信仰の厚き者は寛容の心を育む 信仰の薄き者は中傷の心に苛む   信仰の厚き者は善行を積む 信仰の薄き者は悪行を重ねる   信仰の厚き者は自他を尊重する 信仰の薄き者は自己愛に溺れる   信仰の厚き者は天命を全うする 信仰の薄き者は改心を求められる   信仰のなき吾の祈りは虚無か   〔 2025 年 8 月 12 日書き下ろし。毎年盆供養の真似事を繰り返す。死者への敬慕か〕

煽る者たち

核は安上がりだと煽る 軽率で貧困なる想像力は歴史教育の賜物か 胡散くさいまやかしが民草を混乱させる 無関心が招いた民力の衰退を放置できるか   主権は国にあると煽る 民主主義を否定し国民主権を放棄するのか 偏向思想に同調する民草が感化される 専制化する逆行に民草の良識が試されるのか   敵は近隣国だと煽る 祖国防衛の少国民を育て戦場に送るのか 国防費を増額し米国の言いなりに補強する 戦争放棄は自滅だと民草へ戦意を昂揚するのか   頭を変えれと煽る 選挙の敗北は挙党体制を乱したことではないか 旧態依然のやり方がいまだ通ると勘違いする 解党を求める民草は日毎批判力を増強するか   学力を上げれと煽る 学力テストの結果は学校教育の現実を示すのか 教員の待遇改善は授業の改善に直結はしまい 教員への信頼は廃れ民草は期待を裏切られるか   賃金を上げれと煽る 物価高に追いつかない生活苦は解消できるのか 手元資金が枯渇する中小企業は倒産すら覚悟する トランプ関税で見通せない経済に民草は茫然とするだけか   エッセンシャルワーカーを護れと煽りたい コロナ禍で彼らの働きが注目されて暮らしを支えた 命や暮らしと直接結びついて厳しい労働に耐えてきた 人員が足りない職種もあり民草の敬意を喚起したい   〔 2025 年 8 月 12 日書き下ろし。煽る者たちが利権でうごめく。 80 回目の敗戦記念日が迫る。煽りに乗せられ悲劇を味わう民草に警鐘を鳴らしたい〕

見えざるものを見せる

言葉にしか出来ない 思い描きしものを詩にする   どう描くのかもどかしさに苛立つ 言葉の拙さにあがき屈する   感じた情景に心惹かれる 言葉が表れては消える   何を伝えるべきかおもいの凝縮を待つ 思考しつつ言葉が醸し出させる   心の奥底の澱をかき回す 悩みの深さか世の憤りかを言葉が探る   伝えるべきテーマがその姿を現す 紡ぎ出される言葉が踊り始める   思索は詩の表現に整えられてゆく 伝えるべきおもいは言葉により発せられてゆく   見えなかった心の情景が感じられる イメージが膨らみ詩の言葉が走る   詩作は己の曖昧さを言葉で顕わにする 書き上がった詩に己を投影する   己の世界観を詩編に示すことで存在価値を問う 時に共感を共有し時に反目を甘んじて受諾する   見えぬことを詩に表現したい 感じることを詩にしか表現できない 思っていることを詩で表現するしかない 言葉はその手立てとなり己の心の内を明かす   〔 2025 年 8 月 11 日書き下ろし。なぜ詩を書くのか。自問自答を繰り返す〕

逆進性

一見公平に見られる制度 誰かが優遇されて誰かが割を食う 誰かが厚遇されて誰かが奪われる 誰かは贅沢しても誰かは明日にも困る   一律の消費税 福祉に特化した集金システム なんでもかんでも購買すれば誰でも払う 支払いを拒むことが出来ない強要システム 公平平等の悪しき制度が疲弊する 物価高騰で差別化される逆進性システム 貧困に喘ぐ者たちには買い控えの抵抗も虚しい   強制的に徴収される介護保険料 高齢化による介護の社会支援システム 介護認定後に受給されるサービスの地域格差が広がる 介護を担う人材育成や事業者を疎かにした歪な制度設計 サービスを提供する人も場も不足する事態は深刻化する 利用者のサービスに差別化が顕著になる逆進性システム 富める者は長寿を約束され貧しき者は保険料を支払い続ける   教育の国民の義務 公教育による義務教育の保障システム 塾への依存で成立する学力は教師の授業力を誤解する いじめや不登校に機能しない逆進性システム 建前重視の学校は面倒な事案の責任を回避したがる 学校教育を受けられない子でも卒業させる年齢システム 多くの不登校児を生んでも社会的に批判されない不思議な国だ   選挙権の男女平等 国民主権を体現する選挙システム 権利放棄は政治への批判票だと粋がる者がいる 主要政党や政治家の腐敗した既得権システム 嫌気がさして反旗を翻した者たちへ票が流れる アンコンシャス・バイアス(無意識な思い込み)による逆進性システム 男女平等も夫婦別姓も女性天皇論も男の権威を不安に晒すと怖じけづく   〔 2025 年 8 月 10 日書き下ろし。逆進性という言葉を知った。さらにアンコンシャス・バイアスという意味の深さを知った。どう表現するのかを試してみた〕

楽をする

苦あれば楽あり 体験が習得され経験値になればの話 苦ありてさらに苦あり 体験が生かされず苦労を重ねる人もいる 苦を積めばなおさら苦あり 能力を見込まれて期待される人もいる   中途半端に楽することを覚えた 軽薄な判断で事を進めて恥をかく 経験値は浅くして信頼は薄くなる   うまく立ち回れば楽することを知る 仕事よりもご機嫌取りのスキルを磨く 覚えがめでたければ取り立てられる   忙しいを免罪符に楽を手に入れる してもしなくても高額の手取りは補償される 無理して苦労しない知恵だけは回る   不平不満を解消するには楽がいい 仕事はほどほどに余暇を全力で楽しむ 貧乏人と蔑んで優越感を味わう   楽するには負担を減らす 断りの言い訳だけが巧みになる やれないと周りに思わせる 仕事の手柄を手にして笑う   楽になりたくとも楽になれない 仕事は苦楽の緩急を付けるしかない 手を抜くか集中するかの案配を見極める   楽ではないが苦を楽しむ やり遂げた達成感は解放と愉快を手にする 評価と信頼を得て生きがいを見つける   楽することはたやすい 誰かに押しつけてしまえばいい 誰かのせいにすればいい 誰かの後ろに隠れればいい 誰かに気づかれなければいい そんな生き方出来ますか   苦あれば楽あり 苦労している人の暮らしが楽になる 苦渋を舐めてきた人の心が少し楽にしたい 苦難を乗り越えようとする人にこそ楽を見せてあげたい   〔 2025 年 8 月 9 日書き下ろし。長崎原爆記念日。式典で小学生が歌い上げた合唱曲「くすのき」が心に刻まれた時間だった。地球市民の全てが楽になるには核兵器廃絶しかない〕