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2月, 2025の投稿を表示しています

初任給

姉妹は 児童養護施設で育った   姉は 妹と二人で暮らしたかった 姉は 早く独り立ちしたかった だから 介護福祉士を目指し 資格の取れる高校を選んだ   姉は 3年間施設を離れ 資格を取った 姉は 卒業し施設を出て 老人ホームに就いた 姉は 念願の独り暮らしを始めた そして 初任給を手にした   姉は 迷わずスマホを買った 姉は すぐに妹に手渡した やっと 誰にも気兼ねなくつながった   姉は 二十歳になった 姉は 成人になった ようやく 妹を引き取る条件のひとつをクリアした   姉は コロナ禍介護の仕事に汗を流す 姉は 妹と会えずにいる でも スマホが二人の希望と絆を紡ぐ   〔 2021 年 1 月 15 日書き下ろし。児童養護施設で育った姉妹の小さな夢。今日この話を聞いて心が揺さぶられた。厳しい介護の現場で頑張る姉と一日千秋の思いで待つ妹にエールを贈りたい。あれから 4 年、二人はどう暮らしているのだろうか。 2025 年 2 月 28 日再掲〕  

現代を生き抜く資質とは

知力 少女のような賢明な思考 少年のようなロジカルな思考 聡明な判断力はそこから始まる   想像力 少女のような美意識への憧憬 少年のような自意識への覚醒 自覚へと導くはそこから始まる   創造力 少女のような異次元の誘惑 少年のような好奇心の思索 新しきことはそこから始まる   反骨心 少女のような笑顔の裏側 少年のような涙顔の反抗 同調圧力への抗いはそこから始まる   鈍感力 少女のような相手にしない無関心 少年のような相手に対する無愛想 禍を避けるにはここから始める   寛容力 少女のような純真さは危うい 少年のような軽信さは誤る 清濁を飲むにはまだ未熟だ   共感力 少女のような感化し合う情感 少年のような響き合う友愛 よき人との出会いからしか始まらない   包容力 少女のような丸い心のカタチ 少年のようなぎこちない態度 包み込まれる子からしか始まらない   行動力 少女も少年も動いてこそ自分を知る 生きるという命題は真剣さを求める 人の道に挑む逞しさはここからしか始まらない   〔 2025 年 2 月 28 日書き下ろし。少女と少年が現代を生き抜く資質とは何かを問う〕

確かなことは

この世で確かなことはあるのか   確かなことは何一つない 確かなことはそう考える己が在ることか 確かなことは何一つ定かではない 確かなことは不変なものはないということか 確かなことは何一つ約束されない 確かなことは必ず破られるということか   確かなことは己がまだ思索する 確かなことはそれすら疑うということか 確かなことは己がまだ感じる 確かなことは何ものでもないということか 確かなことは己がまだ生きている 確かなことはいずれ死ぬということか   確からしさは危うい時代を人間が作ること 確からしさは悪意ある人間が生まれること 確からしさは貪欲な利欲で世界を覆ったこと 確からしさは存亡の危機に無垢の命が奪われること 確からしさは地球が悲鳴を上げて環境破滅を予見してること 確からしさは宇宙の荘厳な時空間を意識できず放棄すること   確かなことは生命の神秘に畏敬の念が喪失したことに尽きる 確かなことは愛が人類の破滅から救うことを信じるしかない   〔 2025 年 2 月 24 日書き下ろし。この世で確かなことは何か〕  

教師に問う

 子どもを粗末にしない共育 この教育理念の教育的価値について 教育哲学的真意を論ぜよ そこから導き出される教育愛を論ぜよ その上で共育の真意を論ぜよ 〔2025年2月26日書き下ろし。学校の現場にいた時代の私の教育理念である。これを否定して葬った校長がいた。彼には共育の真意さえ思索できない無能な教師であることを自らあばいた。いまなおこの理念は間違いはないと確信している〕

人間教師になりたい

人望のある教師よ 子どもを味方につけよ 子どもに認められてこそ教師となる   心血を注ぐ教師よ 子どもに一心にあれ 子どもが惹かれてこそ教師となる   愚痴をこぼさぬ教師よ 子どもと共にあれ 子どもが信じてこそ教師となる   偽りなき教師よ 子どもに噓はつくな 子どもを愛しむこそ教師となる   熱意ある教師よ 子どもと共に笑え泣け 子どものおもいを感じてこそ教師となる   教え学ぶ教師よ 子どもを明日に導け 子どもに夢と希望を託してこそ教師となる   真実を伝える教師よ 子どもに悪しき世を伝えよ 子どもと良き世を考えてこそ教師となる   教師になることを夢見た教師よ 子どもの個々の現実から目を背けるな 子どもの抱える問題を我がことにしてこそ教師となる   人間性を問う教師よ 子どもに自らの弱さを見せよ 子どもと向き合う勇気こそ教師となる   共育を実践する教師よ 子どもの好奇心を奮い立たせよ 子どもの疑問に添ってこそ教師となる   共育を哲学にする教師よ 子どもが育つ力を発揮させよ 子どもは自ら殻を破って羽ばたく   共育を探求する教師よ 子どもはその教師を人として育てる 子どもと共育の価値を学んでこそ教師となる   共育に生涯をかける教師よ 子どもの思慕を突進力とせよ 子どもを妨げる壁を打ち破ってこそ教師となる   共育の研鑽に努める教師よ 子どもはその成果を身につける 子どもを粗末にしない信念こそ教師となる   〔 2025 年 2 月 22 日書き下ろし。共育の本質すら問うことも考えることなく仕事する教師たちに問う。教師とは何ものか?〕 

Lakuraから人生のリスタート

百年の石蔵が壊される 耐震構造が脆弱だと行政指導の結果だ 補強する資金は貸主にはなかった 惜しまれて解体作業が始まる   Lakura という店が閉じる 二十年料理と酒と音楽で常連客をもてなした 蔵にはグランドピアノが鎮座する 娘が音大進学のために買った中古のピアノ 35 年娘と連れ添うパートナーになった   Lakura という蔵で曲がりなりにも暮らしがなった 幼子を抱えて借金返済に苦労した 子育ても二人の息子に手を焼いた 親子四人それでも一緒に涙し笑った 蔵の解体は人生の区切りをする終わりの始まりだった   Lakura という店は人が憩う蔵だった 心が傷ついた人も病んだ人も素直になれる蔵だった 人へのいたわりと優しさが自然に満ちた蔵だった 集う人たちが勝手に作った癒やしの蔵だった   Lakura という音楽蔵がなくなる 東日本大震災のチャリティーコンサートにも使った チェロリストの土田英順氏が娘を鍛えた 二人で演奏旅行中には母親が孫三人の世話をした 音楽を愛する仲間たちが演奏会を開いた 集う蔵が明夜でクローズする   Lakura という蔵は大きな想い出を作る 今日から蔵を舞台に斎藤歩主演の映画づくりが始まる 三日間の撮影で 6 月にはクランクインする短編だ 300 万円の資金は寄付でまかなう 娘の人脈が試される機会となった   Lakura という蔵は人を育てた ここで人生を語り愛しそして世を去った人もいた 挫折した若者が生きる勇気を集う人からもらった 屈折した社会に挑む若者たちは音楽に道を選んだ 心を開き泣くまで笑った語り合いが深夜まであった   Lakura という蔵は閉じても人の心は閉じられない 昨夜最後の夜を満喫し笑顔でさよならする人の熱気に溢れた 内地からも道内からも多くの方が集まってくれ感謝しかない 久しぶりに孫の三きょうだいが揃って写真に収まった 末娘は心地よく酔いながら動画を母に送ってきた 明日は休みだから酒豪の末娘は心いっぱいになるまで酔うだろう   Lakura という蔵から...

プッツン

なぜあれだけ こだわったのだろう どうして 頑なに意地を張ったのだろう   プッツンと切れた とたんに なぜどうしてだけが き・え・た   なぜあれだけ 無理強いをしたのだろう どうして 異言を拒んだのだろう   プッツンと切れた とたんに なぜどうしてだけが に・げ・た   なぜあれだけ 情熱を注いだのだろう どうして 視界を狭くしたのだろう   プッツンと切れた とたんに なぜどうしてだけが と・ん・だ   悔しさが の・こ・る 虚しさが し・み・る おのれを わ・ら・う   〔 2020 年 9 月 9 日書き下ろし。 2025 年 2 月 23 日書き直し。現役を引退したとき、振り返りたくない残滓を笑う自分がいる〕

きみがただいるだけで

子どもの犠牲に震撼する時代 きみは生まれた   きみがただいるだけで 世界は どうしてこうも明るくなるのだろうか きみがただいるだけで ひとは どうしてこうも優しくなれるのだろうか   きみといるだけで どうしてこころが安らぐのだろう きみといるだけで どうしてこころがぬくもるのだろう   きみが泣くと 世界中の悲しみを みんな集めたよう きみが笑うと 世界中の喜びを みんな集めたよう   きみの小さなその手には 大きな愛を 握っている きみの大きなその瞳には 大きな希望を 見つめている   きみとは会えなくても きみがすこやかに育ちますよう 祈っています   きみとは出会うことがなくても きみが仕合わせになりますよう 動く人に なります   〔 2025 年 2 月 23 日書き直し。五年前に書いた詩編はいまの時代を映し出す。これからも無垢の命が奪われてゆく時代に、平和を希求する一人でありたい〕

けなげさ

けなげさということば 幼子が力を尽くす姿が目に浮かぶ 好奇心の塊は一点に集中する 真剣な表情に引き込まれた   けなげさということば 勇ましいさまも意味する 狂ったような姿は想像できない 勇健な表情には似つかわしくなかった   けなげさということば すこやかで健康だけではない しっかりしていて強いさまも意味する 年寄りにけなげにとは優しすぎるか   けなげさという柔らかい表現 そこに勇ましさを知った そこに強さも知った それでも幼子が懸命に頑張るさまが心に落ちる   けなげさという生き方にも通じる 果たしてけなげに生きてきたのか 果たしてけなげに生きているのか 果たしてけなげに生きていけるのか   けなげにこそ生き抜く力を感じる 幼子にはけなげさが似つかわしい 幼子の真剣な眼差しに賢明さが芽生える   〔 2025 年 2 月 21 日書き下ろし。何気なく使っている「けなげさ」にふと心が動いた。そこに幼子がフェードインして現れた〕

イエスマンの叛逆(はんぎゃく)

そうとおくないむかし あるところに イエスマンがおりました とても自分のことが大好きな 王さま気取りの男に 仕えていました   男は とても人の目を気にかけました 男は いつも人の悪口を気にかけました 男は しきりに人の評判を気にかけました   男は イエスマンを呼びつけました 「おい俺の評判はどうだ?」 「とても悪いです」 男は その言葉を聞くと すぐに首にしました 男は 別のイエスマンを呼び出しました 「おい俺の評判はどうだ?」 「すこぶる完璧で非の打ちどころがないくらい…」 男は その言葉をさえぎり すぐに首にしました 男は 別のイエスマンを呼び寄せました 「おい俺の評判はどうだ?」 「よろしいです」 男は 満足げにうなずきました   男は 単純に 「イエス」だけが聞きたかっただけなのです 男は 単純に 「イエス」と応じる者がいればよかっただけなのです 男は 単純に 「イエス」としか言わないイエスマンをそばに置いただけなのです   世の中に イエスマンがはびこりました 男は とても不安になりました 男は とても疑り深くなりました 男は 疑わしいみんなの首を…切りました イエスとしか言えなかったイエスマンたちが 恐怖心を棄てて立ち上がり 男を葬りました 男は 最期に聞きました  「俺の評判は ほんとは悪かったのか?」 イエスマンだった者たちは一斉に 「イエス!」と 歓喜の声で叫びました   〔 2020 年 7 月 10 日書き下ろし。 2025 年 2 月 22 日再掲する。見事に裸の王様を気取った男の五年前にその姿があった。イエスマンしか求めない者たちの凋落をかたく信じたい〕

混濁と汚濁

混濁する意識は善悪すら困惑する 混濁する存在は生死さえ昏迷する 混濁する世界は明日をも迷走する   混濁する 生存を問う 汚濁する 利得を問う   混濁する 共存を求める 汚濁する 共存を拒否する   混濁する 共生を祈る 汚濁する 共生を斬る   汚濁する意識は悪意が支配する 汚濁する存在は生命を脅かす 汚濁する世は疑心暗鬼で満ちる   混濁は汚濁へと変化し染まってゆく 混濁は汚濁を抗うことなく受け入れる 混濁は汚濁に塗れて息を潜める   〔 2025 年 2 月 21 日書き下ろし。混濁する時代は徐々に汚濁が広がっていく。予兆を感じるいまがある〕

君だけのうた

君だけの うたがある 哀しいときに ふと口ずさむ うたがある 耐え忍ぶときに 嗚咽(おえつ)を堪(こら)える うたがある 懐かしむときに 涙枯れる うたがある   君だけに 響くうたがある 辛くて逃げ出したいときに 踏みとどまる うたがある 不安にかられたときに 払いのける うたがある 悔いるしかないときに 立ち上がり歩きだす うたがある   誰かと 歌えるうたがある 嬉しいときに こころも踊る うたがある 愛を確かめるときに 勇気をもらう うたがある 仕合わせなときに ともにわかちあう うたがある   君にしかわからぬ うたがある 人生を噛みしめる  苦くて甘い うたがある 人生の迷いを晴らす  目覚めに誘(いざな)う うたがある 人生を彩る  こころ模様が刻まれた うたがある 人生に希望をもたらす  意気に感じて動く うたがある   君だけのうたとともに 君は 明日を生きる   〔 2020 年 6 月 20 日書き下ろし。 2025 年 2 月 21 日再掲する。閉塞感を醸す現代社会に歌や詩が、生きる力を与えている〕