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物語を編む

世にある何者にも言葉が宿る この世は物語に満ちている   言葉を紡ぐことはできるか 何者を感性で探るしかない   好奇心を動かすことが条件だ 感覚を研ぎ済ますしかない   この世に在る全てに言葉に満ちる 物語は無限大にソースを有する   言葉は存在の代弁者となる 真理を求める知力が試される   ことの本質を理解せねば無に帰す 情熱と叡智が言葉を見出す   この世にある未知に言葉が挑む 物語りたい発見をいまだ待つ   言葉は数字であり文字と成る 読み解くには時間と労力を要する   絶え間なく湧き上がる疑問に立ち向かう 忍耐と希望が書き続ける動力だ   この世にある限り言葉は生きる 多様な言語ゆえに表現できる   言葉は精神を継承してやまない 言霊となり求める者に開明する   人は自らを時代の語り部とする 物語を編む主人公となる   〔 2025 年 10 月 10 日書き下ろし。どんな人間でも人生はその人の舞台でしかない〕

緩急の装置

北の四季は暑さ寒さのバランスにあった 夏の熱気は 9 月末まで支配した 帯状降水帯は釧路管内を襲い JR が止まった 白老では数度にわたり記録的な大雨で市街地が冠水した 降水量は例年を大幅にクリアして秋を迎えた 坂道の森林が突然開けたように木々の立ち振る舞いが傍観できる チャリで登る道には大量の枯れ葉が風に舞う 冷気が唐突に襲い秋はすぐに深まる 寒暖をスムーズに移行させる自然の緩急の装置が狂いだした 寒暖のバランスは健康の維持にも影響するだろう 身体を暑さ寒さに慣らすことの装置を奪われてしまった 異常な暑さに痛めつけられた身体は休む間もなく冬を迎える 温暖化は地球の悲鳴となって四季の装置を破壊する   人間社会には緩衝体があった ギクシャクする人間関係に対応する なあなあまあまあと両者をなだめる 意見の相違で対立するも上手に仲を取り持つ 緩急の使い分けは情をも動かす 人の世に反目さえも穏やかにする装置が働いていた いまの世は欲に飢えた人間が緩衝体をぶち壊す 優位に立って攻め立て屈服させようと専一する 人も国も独善的な行動に突っ走るばかりだ 強突く張りが緩急を脅しの装置に転用する 地球の生命体の存続を蔑ろにして嘯く   過激な思想は差別と排除を押し進める 右か左かの極端な線引きは緊張を強いる 叛意を翻す者は全て敵と見なし糾弾する 温和な人たちを恐喝して服従を強いる 世論を操作しマスコミを制御しプロパガンダを行う 緩急を支配装置に組み込んで大衆を意のままに動かす 破壊と殺戮の世界に緩急の装置を持ち込む 思想といい宗教といい囚われた者の狂気が見境なく凶暴化する 地球の破滅は阻止できぬほどに急を告げる 緩急の度合いが事の深刻さを計るゲージとなった   〔 2025 年 10 月 9 日書き下ろし。緩急は必要不可欠な装置だ〕

狭量な男

決して付き合いたくない男 自己主張ばかりでめんどちい 気分次第でコロコロ態度が変わる 自分の失敗を棚に上げねちこく責める 小心者で口だけは達者でよくしゃべる 陰でこそこそ噂話を広めて悦に入る 利に目ざとく立ち振る舞いがエグい 恨まれようなら執念深く付きまとわれる にらんだ目つきが尋常じゃない 相手によって態度を豹変させるカメレオンだ できる男と自認するだけたちが悪い 噓をついても言い繕いがうまくまた騙される 信用のおけぬだけに本性はなかなか現さない 何を考えているのかよく分からないのが不気味だ 寄って来たらすぐには見抜けぬだけの社交性はあるかも   狭量の男から学ばなければならないこと 人の意見を汲み取らずコケにする 自分には非がないと相手を打倒する 度量が小さく承認欲求だけは強い 憎しみの情は強く哀れみの情は薄い 保身することに全てをかける 知的能力の差違はあっても人間性はイマイチか 人を信じ人を慈しむ心に未熟さを見る 人の手柄を横取りしてはばからない 善悪の道徳的判断がいつも疑われる 倫理的にもいかがなものかと不信を醸す 不快感を与えても自覚することなく平然といる 厚い面の皮をして恥を恥とは思わない 些細なことで腹を立て面倒を引き起こす 相手にされぬと分かっていても寄ってくる そんな男でもどこか良いとこあるよとは言えない 嫌われていようがいまいがお構いなしに振る舞う そうそう自分が一番可愛い男なんだね   人生訓を学ぶに相応しい狭量な男たち お構いなしに現れては泡沫のように消えてゆく 虚しき出会いにこそきみの幸を祈ろう 否! 人間の醜さは誰しもあり糾弾するは我にあり   〔 2025 年 10 月 8 日書き下ろし。出会ってしまう悪縁を引きずらぬように我にも問う〕

墜落

透析をやめた 痛烈な痛みが全身を支配した 苦悶の声を吐き出し闘い続ける モルヒネを求めた 医師は効果を疑問視した 家族は喘ぎ続ける表情に涙する   どこまで落ちていくのか 妻が手を強く握る 意識はまだらに残像を引きずる 最期の瞬間まで生に執着する 墜落の感覚はすでに麻痺し出した 落下の衝撃を想像する   まだ落ち続ける 戻ってと妻が悲痛な声を出す 意識は遠のきつつあった 死の淵を彷徨い続けた末路にいた 死に神は限界まで苦しめ手招きする 長い闘病はようやく最期を迎えた   家族がベッドの周りで最期を見届けていた 妻も子も孫も二度と会うことはない 抱きしめることさえ叶わない 遊離魂を信じて涙する家族へ託した 感謝のありがとうと幸せだったを   闇の世界から一瞬の光を放つ そして闇に紛れてゆく命とは何か そこに織りなす人模様を人生と称するのか 仕合わせは涙する愛する人に比例するのか 永遠の旅立ちに人は自らの定めを映す   〔 2025 年 10 月 8 日書き下ろし。病魔に冒された肉体は苦悶の声を吐き出す。緩和ケアを受けられぬ透析を拒絶された人を想像する。 NHK の朝いちでも今朝取り上げられていた〕

正鵠を射る

正鵠を射ること自体が難しい 取り留めのない話に翻弄される たわいない話に付き合わされる どうでもいい話にその人を見る 何もつかめず徒労感が残る 中味の薄さに時間を浪費する 正鵠を求めたことがそもそも過ちだった   正鵠を射るしかない 事の次第を確かめなければならない 本論を聞き逃すことはできない 本音を聞き取らねばならない 枝葉末節を省いて芯を束ねばならない 正鵠を射ずして攻略の攻めを欠く   正鵠を射る力量はあるか 事の始末にわけもなく駆り出される 落とし所を見出せるのか 狙い所に間違いはないのか 急所を突いた分析ができているのか 正鵠を求められて戸惑いを隠せなかった   正鵠を射らねばならない 事の顛末を冷静沈着にまとめる 要領よく伝え得なければならない 理解を促す平易な言葉と文章こそ重要だ 次の行動を想起する要点を突こう 正鵠を射ることなしにステップアップはできない   ※正鵠(せいこく)①的 (まと)の中央の黒点。くろぼし。②ねらいどころ。急所。要点。   〔 2025 年 10 月 7 日書き下ろし。普段使わぬ言葉が本の中から現れた。気にかかる〕

罪深きなり

傲慢が衣をなびかせ歩いて行く 何とも言いようのない異臭を放つ ひれ伏すように感化されてゆく恐怖 抗うことさえ削ぎ落とされてゆく脅威 制圧と支配に屈し洗脳されてゆく教唆   増悪が衣からはみ出して揺れる 何とも言いようのない怨恨の顔になる 敵愾心を虚偽で煽り立てる排撃 逆らうことを決して容赦しない狼藉 服従と同意を求め理すら失う隷属   短慮が衣からこぼれてゆく 何とも言いようのない価値観の崩壊を招く 冷笑されようとも屈服しないカリスマ 困難かつ危険な状況を認知できぬ知性 差別と格差が増長されてゆく専制   強欲が衣にまとわりつく 何とも言いようのない快楽と堕落を見せる 儲けに反応して名誉を重んじる歪んだプライド 絶賛と黙従を強要しひたすら酔う自己陶酔 罪深さを告解すれば赦される利便なシステム 七つの大罪 傲慢・強欲・嫉妬・憤怒・色欲・暴食・怠惰なり この男 傲慢・憎悪・短慮・強欲では済まされず 求めるところに性力がある限り 人間の欲望を際限なく満たすエネルギーとなるのか ただただ性は生なりと驚愕する 罪は生なりしか   〔 2025 年 10 月 7 日書き下ろし。この詩は大変完成度の高い詩と評価されています。ご鑑賞ください〕  

はたらけ!働け!ハタラケ!

国会議員は怠慢だった 目一杯働かなかった 目先のことで目一杯だった 保身だけで目一杯だった 勝ち馬に乗ることで精一杯だった   ライフワークをこよなく実践した 働き方改革は朗報だった 派閥の解消はムダだった 派閥のボスは安泰で号令した 勝ち馬に乗るだけでよかった   ライフワークを捨てよ 新リーダーが号した はたらけ!働け!ハタラケ! 7 月の参議院選挙の公約が飛び火した 勝ち馬は働きたい改革を率先する   庶民の過労死など知ったことか 日本を良くするのに遊んでられるか 死ぬまで働けなければ暮らしては行けぬのか いままでも目一杯頑張って身を粉にしてきた 勝ち馬は求める社会改革を豪語する   ライフワークの返上は貧困なる魂に回帰する 働くことにしか価値を見出せない生き方を奨励する 自由な時間を制限され成果主義の経済に貶められる 自由意志と判断を揺さぶられる時代へと移行する 勝ち馬は議員にだけに檄を飛ばして働かせるだけでいい   〔 2025 年 10 月 7 日書き下ろし。 7 月自民党は参議院選挙で、「個人の意欲と能力を最大限活かせる社会を実現するため、『働きたい改革』を推進し、人手不足の解消にも努めます」と公約を掲げた。その意図はここかと勘ぐられた〕