墜落
透析をやめた
痛烈な痛みが全身を支配した
苦悶の声を吐き出し闘い続ける
モルヒネを求めた
医師は効果を疑問視した
家族は喘ぎ続ける表情に涙する
どこまで落ちていくのか
妻が手を強く握る
意識はまだらに残像を引きずる
最期の瞬間まで生に執着する
墜落の感覚はすでに麻痺し出した
落下の衝撃を想像する
まだ落ち続ける
戻ってと妻が悲痛な声を出す
意識は遠のきつつあった
死の淵を彷徨い続けた末路にいた
死に神は限界まで苦しめ手招きする
長い闘病はようやく最期を迎えた
家族がベッドの周りで最期を見届けていた
妻も子も孫も二度と会うことはない
抱きしめることさえ叶わない
遊離魂を信じて涙する家族へ託した
感謝のありがとうと幸せだったを
闇の世界から一瞬の光を放つ
そして闇に紛れてゆく命とは何か
そこに織りなす人模様を人生と称するのか
仕合わせは涙する愛する人に比例するのか
永遠の旅立ちに人は自らの定めを映す
〔2025年10月8日書き下ろし。病魔に冒された肉体は苦悶の声を吐き出す。緩和ケアを受けられぬ透析を拒絶された人を想像する。NHKの朝いちでも今朝取り上げられていた〕