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心のとげ

だれでも心にとげがある  言い知れぬ悔いがとげとなる 忘れられぬ失敗がとげとなる 己への裏切りがとげになる   だれでも心のとげに苦しむ 相手への妬みがとげとなる 相手への憎しみがとげとなる 相手への仕打ちがとげになる   だれも心のとげを抜けぬ 刺さったとげは忘れられぬ悔恨 刺さったとげは背負い続ける自責 刺さったとげは自戒する恩讐   だれしも心のとげから逃れられぬ とげは無恥なる心の疼痛 とげは卑しき心の戒め とげは悪しき心への警鐘   だれもが心のとげをいたわる 己の生き方の是非を判断するものさし 己の善悪を判断するせめぎ合い 己の言動の正否を判断する分かれ目   心のとげを感じつつ せめて悔いることのないよう 生きていくことが償いとなるのか   [ 2022 年 12 月 20 日書き下ろし。 70 年も生きてきたら、多くの悔いる思い出が蘇る。心にとげを刺して最終章へと向かう。2026年3月31日改めてその意味を問う]

しゃらくさい

しゃらくさい わけもわからずわかったふりする 訳知り顔が鼻につく 説教垂れる高慢ちきさが胸くそ悪い   しゃらくさい 知ったかぶりで教えたがる 物知り顔がいやらしい 人望も薄いゴリ押しが胡散臭い   しゃらくさい できる人間と勘違いする 先の見通しは怪しい おもねるだけの才覚を発揮する   しゃらくさい まだまだ出番があると思い込む 老害は過去の遺産を食い潰す 敵を作って弄(もてあそ)ぶ   しゃらくさい 狡知さだけは衰えぬ 騙しの技を磨くに磨く いつかだまし討ちに遭うまで続く   しゃらくさい 不信だらけで世も末と せめて信じた人と在たい ぼやくよりも己を正せか   しゃらくさい さもさもらしいのもダサいだけ 生きる拠り所を見つけたい しゃらくさいのは己と自覚する   〔 2026 年 3 月 30 日書き下ろし。ただしゃらくさいというだけならダサいと自認する〕

子を育てる

子を一人育てるには ひとつの村がいる   子はコミュニティにいる 親もコミュニティにある   子の問題行動は親に負わされる 村人は無関心を装うだけ   子はコミュニティから排除される 親はコミュニティから除外される   子は育ちゆく根を断たれる 村人は不穏な根を断つだけ   子はコミュニティを喪失する 親はコミュニティに孤立する   子を育てる機能不全が起こった 親を支える機能麻痺が起こった   果たして子を産み育てる村はあるのか 果たして子を見捨てない村はあるのか 果たして親が誇れる村はあるのか   村人の無関心こそ育つ力を奪う 村人の無干渉こそ育ち合う力を萎えさせる 村人のエゴこそ育てる力を無力化する   〔 2026 年 3 月 30 日書き下ろし。子育ての問題をコミュニティが引き受けないところに根深さがある〕

幼子の心根

幼子のやさしさの心根 どこから生まれてくるのかな 生まれもったものかな それとも母のこころかな   幼子のいじわるな心根 どこにあったのかな だれもおしえてはいないのに それともだれかがわるさしたのかな   幼子の分かち合う心根 どんなことから生まれたのかな だれもが当たり前にしてたのかな それとも母のねがいかな   幼子のかなしい心根 どうしても生まれるんだよね とめることはむりかもしれない それともためされているのかな   幼子のはてなの心根 どこでもなんでもしりたいんだよね せかいをかんじていたいんだよね それとも母のそばにいたいから   幼子のわがままな心根 どうにかしてもそうしたい へこたれないつよいおもいだね それともただのぐずりんぼうかな   幼子のやわらかな心根 どうにかなりそうでとろけてしまう ねがおにみとれてほっぺをなでる それともかるくキスをする 〔 2026 年 3 月 30 日書き下ろし。母の 13 回忌。長男で生まれたことでどれだけの愛情を授かったのだろうか〕

かさぶた

心から血を流した 傷ついて 傷つけて 掻きむしった 慟哭の悲痛 悼むことを拒む阿鼻叫喚   薄いかさぶたを剥がす 出来ては剥がす 何度も剥がされる 壮絶な苦闘 悼むたびに心渇く阿鼻叫喚   無情を叫ぶ 涙涸れぬ 涙枯らさず 愛の絶望 悼む深さゆえの阿鼻叫喚   無念を苛(さいな)む 悔いる 蔑む 死生の葛藤 悼むことを抗う阿鼻叫喚   子の自死を受け入れる かさぶたを愛しむ かさぶたは癒やす 魂の交わり 悼むことに導かれる祈り   〔 2026 年 3 月 28 日書き下ろし。自死した子を持つ母の慟哭と祈り〕

魂の宿る場所に

衝撃は想像を遙かに超えた 慟哭するしかなかった 死霊に取り憑かれた子を救えなかった 張り裂ける胸を強く打ち続けた 夢であってと嗚咽をあげる 残酷な現実が時間を凍らせる   悔悟が強く支配する 何か出来たはずだ 何が足りなかったのか 何でもっと話さなかったのか 何を躊躇っていたのか   追い詰める母の胸に去来したのは何か 人を疑うことのない純な子だった 人に憎まれるなどあり得なかった 仕事で悩み苦しみひとり抱え込んだ 真面目で優しいがゆえに逃げ場を失った 死に神は母を絶望の淵に落とした   生への執着が断たれた瞬間絶句した 止めようと抗ったが生存を拒絶された 慰めは心に響くことなく霧散した 悲嘆の波は繰り返し襲い自らを貶めた 母は深甚な自責の念に縛られる   終わりなき葛藤が始まった 受け入れ難い現実をどう受け止めるのか 忘れがたい記憶とどう向き合うのか 終わりの始まりにどう立ち上がるのか   母の胸に去来する魂の叫び 抱きしめた魂を宿るべき心に置く 抱きしめて魂の宿る場所にそっと身を委ねる 抱きしめる母の元に還ってきた魂と祈りを捧げる 母と子の魂の救済の場はいつの日か訪れよう   〔 2026 年 3 月 27 日書き下ろし。( 1745 )「断腸の思い」の続編。自死した子の母がどう回復への道を歩むのか。物質的存在が消滅したゆえに、母と子の魂の救済があって欲しいと〕

断腸の思い

自死で子を喪った母 その苦しみは 腸が裂ける痛みに喘ぐ   母は痛みから解放されるのか 子の喪失から癒える日は来るのか 母と子の魂は救済されるのか   時が止まった瞬間に 母は抗えぬ悲嘆にいる 子は未来を閉じた   〔 2026 年 3 月 26 日書き下ろし。息子の自死に向き合う母と出会った。何をか語らん。驚愕し言葉を失う〕