函館中堅教室で朗読された詩編

『背負い込んだ重さ』

 

断り切れない人の頼み事

不承不承で引き受けた

民生委員の活動とその役目

責務の重さに目眩(めまい)した

 

問われる人柄と教養

持ち合わせのなさに 逃げ出したくなった

ましてや 赤の他人とのコミュニケーション

経験値もノウハウもなく 寡黙になった

 

活動を支えるものは何だろう

福祉の専門知識

事務処理の適切な能力

仲間との上手なつき合い

当事者との信頼関係づくり

町内会や社協とのつながり

 

大事なことだけれど

身につけるには おいそれとはいかない

だから余計に 出来ない自分が恨めしかった

活動が重たいと いつも感じていた

人と向き合う自信は いま一つなかった

モチベーションが低いと知りつつも

幾多の学びの機会と活動を得て

心の重荷を いくらか軽くしたいと願った

背負い込んだ重さは

思い込みの頑なさ

心の器量の狭さ

世間とのつながりの薄さ

そして 人と社会への関心の低さ

 

あるとき はたと気がついた

気の重さが その分相手の重さとなることを

冷めた言葉が 相手の弱くなった心を刺すことを

事務的な対応が 相手の警戒心を強めることを

 

自身を理解することなしに

相手と向き合うことの 気恥ずかしさを知る

自身を高めることなしに

相手に添うことの 思い上がりを知る

自身の心の弱さを知ることなしに

相手と対等になれぬことの 口惜しさを知る

 

心の負担は モチベーションのバロメーター

活動へのためらいも

関わることのしんどさも

続けることのことわりも

こころ模様と気力に表れる

 

心の負担は なくなることはない

相手の心と暮らしに 添うことで

心の痛みが 伝わってくる

不安や求めが 見えてくる

地域で生きることのしんどさを 感じる

でも 安堵した笑顔が 素直な喜びとなった

 

人により 与えられる〈学び〉は

迷いに始まり 人の道へと誘う

情に始まり 情感を豊かに耕す

出会いに始まり 人生をさりげなく彩る 

 

『きょうという日』

 

にがてなこと

やりたくないこと

あきらめたこと

 

いやでにげだしたこと

とちゅうでなげだしたこと

あとでしようとほったらかしたこと

 

それはみんな ほんとはしなきゃいけないこと

しなきゃいけないって おもっていたことばかり

きょう しなければならないことを

さきのばしにしたことで またきょうの日をむかえた

そしてきょうの日も なにもしないでまたすぎる

 

いつも いつでもやれるんだと

あんじをかけていた

いいわけだけが うまくなった

そして いつのまにか あたりまえにしなくなった

だから きのうも きょうも あしたも なんにもかわらない

なにもやっても むだだと

さもさもわかったようなふりをして

なんにもかんがえない なんにもしない なんにもかわらない 

“わたし”

 

このままずっと こうしていたら どうなるんだろう?

とつぜん そんな気もちに おそわれた

なんだか あたまも こころも からっぽになったような気分

それが 生きてるってこと?

 

そんな“わたし”に ようやくいやけがさしはじめた

するか しないか かんがえてきめるのは “わたし”

ないないないという こころのからを 

わらなきゃいけないって 気づいたら

むずかしくかんがえないで 

こころのままに ちょこっとうごいてみよう

いままでとは ちょっとちがった

こころの景色が 見られるかも…

そこにきっと 信じられそうな“わたし”が 

見つかるかも‥‥しれない

 

えっ! だれかが“わたし”の手をにぎった!? 

 

『ほころびを繕うということ』

 

人は人によって 傷つく

ちょっとした 言葉のあやでも 

簡単に 傷つく

傷つきやすいのでは ない

人は 誰でも 傷つくのだ

傷つかないように 傷つけないように

絶えず 相手との距離をはかって 暮らす

 

小さなほころびは すぐに広がり 傷となる

だから ほころぶと 

すぐ繕(つくろ)わなければ 仕合わせは 続かない

気くばり 心くばり 目くばり

その気配を察して 未然にほころびを防ぐ

 

なんという 気苦労か

なんという 徒労の連続か 

それが 「世間」に生きると いうことなのか

疲れ果て うとましく感じたそのとき はたと気づく

わたしもまた 鬱陶(うっとう)しく 煩(わずら)わしいという

世間の しがらみの中で

こころある人の

気くばり 心くばり 目くばり によって

生かされていることを

 

逃げ出すことのできない 

時空間に囚(とら)われた時代(とき)を

生きるしかないのなら

せめて こころのほころびを

慰藉の手を持つあなたと

繕いながら 生きてみたい 

 

※慰藉(いしゃ): 悩み、苦しみ、不安などを慰めいたわること。 

 

『求められて動く』

 

才覚があるわけでもなかった

お金なんかあるはずもなかった

世話好きだけは 母親譲りだった

 

頼まれれば 二つ返事で引き受けた

意気に感じて 地域を走り回った

人の良さだけは 父親譲りだった

 

貧しさの辛さは 身に染みこんでいた

親の情愛の深さは 心に染みこんでいた

他人への温情は 父母譲りだった

 

困った人が近くにいれば 捨て置けなかった

貧しい人が頼ってきたら 相談にのってあげた

親身になって 話を聴くことしかできなかった

 

一つだけ誇れるのは 人儲(ひともう)けだった

求められたことに 汗をかいて励んだ

そこは 父母譲りで長けていた

 

かれこれ8年 民生委員を続けてこられた

善かれというおもいに導かれて 続けられた

他人様(ひとさま)のおかげで 人として育てられた

 

子どもが健やかに心優しく育つ

障がいのある人も家族も安心して暮らす

オレもすぐに仲間入りする先輩たちが

ここを終の住処に生涯を全うする

 

世間に役に立つことが まだ残っているようだ

もう一期  民生委員を務めよう

一番喜ぶのは きっと父母かも知れない 

 

『人を育てる』

 

育つを育てる

こんな人になりたいという 憧れを育てる

こんなことをしたいという 夢を育てる

 

育つように育てる

こうありたいという おもいを育てる

こう生きたいという 志を育てる

 

育てるのは周り

育つのは自分

育てるのは自分

育つのは周り

 

育てるとか育つとか

お互い様のこと

よりよき人となりたい

よりよきことをなしたい

 

そのおもいを素直に受けとめて

周りも自らも 育つ力を育ててゆく

それが育つということ

それが育てるということ

 

育てる力は

育ちたいというおもいを 引き出すこと

育てられている喜びを 感じ動くこと

内なる育つ力を 自ら解き放すこと

 

育つ先にあるのは

自分と周りの 仕合わせづくり

育てる先にあるのは

共に生きやすい 世間づくり 

 

『助かるわ』

 

夫婦二人のところに

精米した新米が たんと送られてきた

すぐには食べきれんから ご近所さんに ちょっとお裾分(すそわ)け

「お米嬉しい 助かるわ」

「なんもさ うちも助かるんだから」                                  

 

買い物の帰りに 町会の人の車に 乗っけてもらった

小雨がぱらついてきて 荷物もあったから

「助かったわ」

「なんもさ 雨の中 ほっとかれんからね」

 

家のもんが だれもいなくて ひとりでいたら

突然 胸が苦しくなって 消防に電話した

「助けて!」

サイレンならして 救急車が飛んできた

したら 隣の奥さんが 駆けつけて来て

「大丈夫?」っていいながら 病院まで付き添ってくれた

「本当に助かったわ」って こころから感謝したら

「お互いさまだよ」って 返ってきた

 

「助けて!」って 相手に負担をかけると 知っているから

なかなか 言いだせないことば

「助かるわ」って すぐに出てくる 感謝のことば

 

「助かるわ」「助かったわ」ということばは

他人(ひと)とのかかわりを 和(なご)ませる

そのかかわりの さりげなさが

いざというときに「助けて」って すぐに伝えることばに変わる

 

だから 「助かるわ」「助かったわ」は

お互いの助け合いや支え合いを 身近に感じることばとなる

そのこころは あなたを信じ 

分かち合いから生まれ 育まれて さらに豊かになる

 

それは 一人ひとりに宿る こころの風景そのもの

わたしのまちの 「愛ことば」

「助かるわ」「助かったわ」「なんもさ」「お互いさま」

愛ことばの往来(おうらい)が 

わたしのまちを 

ぬくもりあるまちへと 突き動かす 

 

『この子らに』

 

この子らのつぶらな瞳が 曇らぬよう

世の中のあしきことを 吹き飛ばしたい

この子らのあふれる笑顔が 引きつらぬよう

世の中のあしき人を 改心させたい

この子らの育ちゆく道が 健やかなるよう

世の中のあしき心を 押しのけたい

この子らの夢ある未来が 揺らがぬよう

世の中のあしき仕組みを 変えていきたい

 

この子らが 生きる喜びを  豊かに感じるよう

世の大人よ あしきものは 体を張って取り除こう

この子らが 生きる希望を 強く抱くように

世の大人よ 最善の努力を 惜しむことなかれ

 

ハグしてくれる子らの無垢なこころにうつる 

世の正義が問われている

ハグしてくれる子らの澄んだ瞳にうつる 

己の人生が問われている

この子らは 世の光 人類の希望 宇宙の一命

この子らこそは すべての大人が生きる存在理由

 

新しい世界は この子らのためにあってほしい

新しい世界に まだ生きながらえる者たちよ

いのちを張って 子どもらを護ろう

 

その気概を 今の世に満たさねば あの世には容易に旅立てぬ

いのちを張って 子どもらを慈しもう

その気概を 今の世に満たしてこそ 人生の価値が決まると心得よ

 

2022118日。詩集『情緒は私を支配する。論理よりも強く』より選定する]

 

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