昔を語るいま

昔はよかった

町は若いのから年寄りまで大勢いた

商店街の賑わいったらそりゃすごいもんだった

映画館も飲み屋も繁盛してたね

本屋はいつも子どもも大人も立ち読みで混んでいた

 

昔はよかった

学校が終われば一目散に帰ってきた

ランドセルを玄関口にぶん投げて遊び回った

日暮れてくると誰となく家路を急いだ

いつまで遊んでるのと近所のおばちゃんの声がした

 

昔はよかった

貧乏だったけどもみんなそうだったから感じなかった

もらい物があれば近所におすそ分けを届けた

自分ちが足りなくなっても文句なんか言えなかった

その分またおすそ分けが回ってきた

それが当たり前のことだった

 

昔はよかった

悪さをするとすぐに見つかって焼きが入った

子どもの喧嘩もいじめももちろんあった

でも弱いのをいじめるのは勘弁ならなかった

決闘だといて裏山でちゃんばらに明けた

怪我するまでもなく疲れて終わった

それでも何か正義感に満ち足りていた

 

昔はよかった

隣近所の付き合いも深かったり浅かったりまちまち

口うるさいおばちゃんもおじさんのいたことはいた

根がいいだけに恨みを買うことはなかった

その分正直者で人のいいおばちゃんは必ずいた

うまくバランスが取れてたってことかな

世間は平穏無事で無尽だと言ってはお茶っこしてた


昔はよかった

世知がない世の中でもなんだかほっこりしてた

暮らしは貧しくとも性根は決して貧しくなんかなかった

学校の成績がすべてではない

上の学校に上がれなくても手に職を持って十分稼げた

十分世間にいっちょ前だと認められていた

家庭をもって子も授かって仕合わせを手に入れた

 

なんでいまこんなに貧しい時代になったんだろう

近所の付き合いもプライバシーだといって薄っぺらになった

子どもも遊べず友だちとも薄っぺらな付き合いになった

勤めても同僚との付き合いは面倒くさくなり飲むこともなくなった

しゃべれば互いの駆け引きばかりでうさんくさいばかりだ

遊びも金ばかりかかって文句をたれ携帯ゲームにはまる

若い男女も結婚までの付き合いは面倒ちいらしく

恋愛も中途半端で独り身がいいと強がり別れていく

 

よかった昔よりも快適ないまの暮らし方

それをプレゼントしたのは年寄りだ

よかった昔よりより快適ないまの生き方

そう錯覚してたことに気がつかずにきた

よかった昔よりも孤独になったいまの在り方

それは失ったものの方が多かっただけのこと

 

[2023222日書き下ろし。煩わしさがないというのは人との摩擦が少なくなったこと。でもそれが逆に人との関係の面白さを削いでしまい空虚になったのかもしれない]


このブログの人気の投稿

跋渉はかなわぬ

こんなもんさ

職歴とは何か