勝負の妙
秋場所優勝決定戦
テレビ桟敷で熱戦を期待した
熱海富士は貴景勝に注文相撲で沈没した
一瞬の薪切れに場内も騒然となった
大関と返り入幕の21歳の幕尻
上がることだけを目指して貪欲に稽古した
困窮を知る少年は母妹をおもい稽古した
二度負けて稽古が足りないと叱咤した
稽古の足りない大関が勝負に拘った
本割で体力を消耗した大関には2番は無理だった
満身創痍で戦い続けた先は優勝しかなかった
恥も外聞もなく勝つことだけが座を守ることだった
おもいを言葉にするが共感にはほど遠かった
11勝の成績はまるで十両優勝の様相だった
新大関はあまりに期待外れだった
関脇も取りこぼしてようやく星勘定を合わせた
ここ数年下剋上が始まった
平幕優勝が続く
番付編成も成績のいいもの同士を当てていく
結果秋場所の4敗が4人も出てくる結果となった
優勝決定戦に3人残れば貴景勝には勝ち目はなかった
2番続けて取るだけの体力はなかった
ずば抜けて21歳は馬力だけはある
二人の勝負はすでに決していた
持久戦では勝ち目がないことは明らかだ
変わるしか勝機はない
愚直な21歳は目標を失った
勝負はいつも残酷である
勝利者に栄誉を
敗者に名誉を
[2023年9月25日書き下ろし。興業スポーツに一喜一憂しながら、その勝負の妙を楽しむ。
横綱になれぬ不運な貴景勝とこれからの角界を背負う若武者の戦いは続く]