流される男
自分を見失った男はただ忘却の河に流される
自分を感じられない男はただ時間の河に流される
自分が何ものでもなくなった男はただ無常の河に流される
為すべきことさえ放置した男は無為の河に流れた
働くことさえ拒否した男は怠惰の河に流れた
情感さえ鈍った男は傍観の河に流れた
逆らうことを諦めた男はただ黙認の河を流れる
考えることを棄てた男はただ追従の河を流れる
話すことをやめた男はただ沈黙の河を流れる
相手に翻弄される男は狐疑の河に流された
相手にされなくなった男は孤独の河に流された
相手の空気を読めぬ男は孤立の河に流された
裏切られた男は不信の河の流れに身を捨てた
自らを過信した男は傲慢の河の流れに溺れた
欺き嘘偽りがバレた男は侮蔑の河に身を投げた
事に身構えることもなく男は穏やかだった
何かを求められることもなく男は安らかだった
欲情を掻き立てることもなく男は静かだった
何も期待されることもなく男は河の流れに身を委ねた
つまらぬ男の人生で果たしていいのか
ふと自意識が河の流れに抗うように蘇る
突然俺って何ものだと憤りの叫び声をあげた
〔2024年10月9日書き下ろし。人は絶えず河の流れに身を置きつつ存在を確かめる〕