キッチンリフォーム
母がキッチンに立つ
何十年もその後ろ姿を見てきた
当たり前の日常の風景だった
老いはキッチンに立つことを拒んだ
料理する意欲が湧かなかった
80を越えた身体は悲鳴を上げ始めた
買い物に出て転んだ
足は腫れ上がりブス色に変色した
痛みが続いたが幸いにも骨は無事だった
痛い痛いと庇いながら立ち歩く
ただ朝食だけは欠かさず作った
長い習慣からか夫への献身だった
母と相談しながら娘はリフォームする
大勢の家族の食事を作ってきた母の苦労を回顧する
二人で真新しくなるキッチンを嬉しそうに眺める
食器も鍋も3人家族では持て余す
娘は母が納得して整理することを促す
独断では処理せず同意を求めつつ心に添う
母がキッチンを使う時間は限られている
新しいキッチンで母の料理を食べたい
一緒にに立つ姿を見つつ父がビールを呑む
今日ようやくリフォームが終わった
キャンプ生活から解放される両親の笑顔が嬉しい
娘は心のリフォームをしつつ3人での暮らしに幸せを見る
〔2024年10月30日書き下ろし。老両親と同居する娘はいまを大事に生きる〕