先生になりたい(再掲)
「大きくなったらなにがしたい?」
「将来は先生になりたいです」
「どうして」
「先生は未来に触れることができるからです」
先生の仕事の本質とその魅力を簡潔に表現する
賃金だ時間だと労働環境が巷で論議される
待遇を改善すれば教員が集まるとはさもしい限り
若い労働力のパイの実が小さくなる中人手の奪い合い
崇高なおもいは誰も持ち合わせてはいない
指導要領に則った外れぬ公教育をすれば済む
教育哲学は誰も持ち合わせてはいない
授業の仕方と子どものあしらい覚えれば済む
教師の本質は誰も知ろうとはしない
労働者であり就労環境さえ整備されれば済む
未来よりも目の前のことで精一杯
未来のためと嘯(うそぶ)くだけで精一杯
未来に触れるなど一笑するだけで精一杯
教師の本質すら見出せぬ者たちが闊歩する
教師の本業すらないがしろにする者たちが息巻く
教師の本分すらわきまえぬ者たちが大手を振るう
己もまた未来に触れる教師とはなれなかった
過去におかした数々の過ちは子らの未来を小さくした
過去におかした様々な醜態は子らの未来を妨げてきた
過去におかした実践の貧しさは子らの未来を歪ませた
ブータンの山の小さな学校の子らの澄んだまなざしに
後悔の念が鮮明に甦(よみがえ)る
教師としての才覚のなさがいたたまらない
継がせる人としての責務のなさが許されない
人間としての度量のなさをひたすら悔いる
〔2022年3月28日書き下ろしを再掲する。アカデミー賞ノミネート外国長編作品「ブータン山の学校」予告編を見た。後悔を伴いつつ心動いた。魅力のない教師が子どもの夢を壊し続ける〕