悲戦歌
貧しさゆえに兵士になった
故郷から遠く離れた異国の地にいた
過酷な戦闘の前線にいた
瀕死の重傷を負った兵士は銃殺された
捕虜もなぶり殺しされていった
背後から撃つと脅された
異常な世界に誰もが狂気にまみれた
無抵抗な者への略奪と暴行そして殺戮は許された
善悪の判断は歪み憎悪と暴力が正義となった
国を守る戦いではないと確信した
不安と不満を暴発させてただ憤死する地獄だった
現実の死の恐怖からは逃れられないとあがいた
異常な世界に正常な精神などありえなかった
臆病者となじられても死にたくなかった
志もない上司の命令に従うしかない一兵卒だった
死にゆく友の一滴の涙が無念さを語った
すでに戦意は失せ怯えていた
いまだ生きているのが不思議だった
神からも見捨てられた戦場では救われる者はいない
夜ごと無事を祈る母の優しげな顔を思い浮かべた
母は救いの神だった
若い兵士は帰還することも許されなかった
非戦を叫ぶ母の声は誰もが耳を塞いだ
悲戦はいまも侵略者の烙印を押され戦い続ける
若い兵士は夢すら絶望の中に破棄された
帰郷したとしても身体や心に傷を負い一生を悔いる
悲戦は戦後も彼らの人生に暗い影を落とし苦しめる
悲戦を乗り越える歌がほしいと闇の中で願い葛藤する
〔2025年6月10日書き下ろし。戦争は若い兵士たちのおもいなど無視する。戦後精神を病む者たちは「悲戦」から逃れられない〕