死者を悼む
きみには友や家族がいた
きみには恋人がいた
きみには妻も子もいた
そしてきみの前から全ては消えた
きみの魂が汚されていく
きみの正義が歪んでいく
きみの倫理は喪失する
そしてきみは人でなしになっていく
きみは生き残ったら英雄となる
きみはもしかして生きる屍になる
きみは生涯悪夢に苛まれ心を病む
そしてきみは悔恨と恐怖に身を焼く
きみはなぜ戦場に立ったのか
きみはなぜ銃を握っているのか
きみはなぜ人殺しになったのか
そしてきみはなぜ殺されたのかを知らない
きみと同じ夢を見ていた35万人がいた
きみが憧れていた未来をなくした35万人がいた
きみと敵味方で戦う地獄を見た35万人がいた
そしてきみたちは墓標の下に眠る
きみの命を牛耳った者たちはいまも殺しを続ける
きみの心を奪った者たちはいまも高枕で眠る
きみの未来を遮断した者たちはいまも幻想を見る
そしてきみは強欲な者たちから犠牲を強いられる
〔2025年6月5日書き下ろし。ロシアとウクライナの和平交渉は頓挫する。役立たずの無能な仲介者は匙を投げる。兵士だけの死ではない。民間人の犠牲をカウントすれば…許されざる無差別な殺戮が続く〕
※ロシアは22年2月にウクライナへの全面侵攻を開始。米シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)の推計では、25年5月までにロシア側で最大25万人の兵士が死亡。ウクライナ側の死者数は6万~10万人。双方合わせた兵士の死傷者数は140万人近くになるという。(毎日新聞2025/06/04)