引け目を感じつつ
人間の度量の違いを知った
世に名のなき人である
名さえ残さぬ市井の人である
目を見て話す穏やかな語り口の人である
立ち振る舞いに実直な人柄がにじむ人である
ふと子ども心を見たような気がする
人間の包容力の大きさを知った
名声など求めぬただの人である
聴けばおもいを捉え話せば確信を突く人である
選り好みせず誰もが胸襟を開く人である
自然に心を許し素直になれる人である
ふと子どもに戻って抱かれたような気がする
人間の裁量のあり方を知った
悔悟に気づかせる人である
悪しき考え方や行動を認めさせる人である
相手の心の痛みに添う覚悟を諭す人である
過ちと向き合わせ改悛の情を導き出す人である
ふと子どものたわいない告白のような気がする
人間の寛容の要を知った
世をいたずらに嘆くことをよしとしない人である
憤怒の感情も静かに堪えている人である
卑劣な言葉にも動揺せず受け止める人である
世をはかなむ感傷にも安易に添わない人である
ふと子どもの悪態を優しく許すような気がする
人間の慈愛の深さを知った
人をひとりの存在として受け入れる人である
善悪の判断を間違っても戻れるよう共に考える人である
人の気づかぬ無償の愛を共に見つけ出す人である
苦悩し絶望の淵に立っても踏み止まる決心をさせる人である
ふと子ども心に父と母の慈愛にくるまったような気がする
引け目を感じつつ
こんな人になりたいと
老境に入ってなお憧れる
〔2025年6月4日書き下ろし。未熟さを知る。そうありたいというおもいが残り火となる〕