詩集「言葉が詩情に迸る」

はじめに「詩はどこから始まるのか」

 

「心揺さぶる」

 

心揺さぶる

いまもあってほしい熱情

これからもそうあってほしいと

 

心激しく揺さぶる

もう味わうことのできない激情

果たしていつのことだったか

 

心揺さぶられる

いまあってほしい感動

これからも出会いたいと

 

心強く揺さぶられる

避けて通れない宿命

これから起こりえる別れか

 

心揺さぶる

生きていく実感

心揺さぶられる

生かされている認知

 

心揺さぶる

未知なる衝動

心揺さぶられる

未体験の衝撃

 

心揺さぶり揺さぶられながら

人生に情理の綾を描く

 

 「詩片があれば」

 

こころを揺らす詩片に出会う

悩めるこころに染み入る

苦しきこころを励ます

辛きこころで涙する

悲しきこころを慰める

 

こころに響く詩片に出会う

ことばがこころに届く

ことばがこころを叩く

ことばがこころを開く

ことばにこころが酔う

 

こころを動かす詩片に出会う

憂いにあるこころに訴える

迷いにあるこころを導く

欲に満ちたこころを叱る

望に向かうこころを奮い立たせる

 

こころに添う詩片に出会う

情感を育て深める

心情を理解し動く

自分らしさを取り戻す

 

こころが喜ぶ詩片に出会う

響鳴しつつ思索を広げる喜び

響感しつつ感情を確かめる喜び

エールをもらって共存する喜び

 

 その1「言葉の限界と逼迫」

 

「語り尽くせぬ」

 

世の中の心痛むことさまざま

ただただ沈思(ちんし)するばかり

言葉は逃げるしかない

 

世の中に小さき命さまざま

ただただ愛(め)でるばかり

言葉は謳うしかない

 

世の中の蔓延(はびこ)る悪行のさまざま

ただただ忿怒(ふんど)するばかり

言葉は濁るしかない

 

世の中に熱き情けさまざま

ただただ抱擁するばかり

言葉は迸(ほとばし)るしかない

 

世の中の卑しき欺瞞(ぎまん)さまざま

ただただ憎悪するばかり

言葉は尖(とが)るしかない

 

世の中に反撥する生き方さまざま

ただただ意思を貫くばかり

言葉は勇気を与えるしかない

 

世の中の利権争いさまざま

ただただ虚しくなるばかり

言葉は道具に成り下がるしかない

 

世の中に美しき善意さまざま

ただただ心洗われるばかり

言葉は人を信じるしかない

 

「言葉が刺さらない」 

 

言葉が刺さらない

言葉は空虚になる

 

言葉が希薄だ

言葉は消える

 

言葉が惨めだ

言葉は濁る

 

言葉が軽い

言葉は妄信となる 

 

言葉が踊る

言葉は散る

 

言葉が汚れる

言葉はさもしい

 

言葉が伝わらない

言葉は残響となる

 

言葉が貧しくなる

言葉は潰(つい)える

 

言葉が飾られる

言葉は隠される

 

言葉が途切れる

言葉は捨てられる

 

言葉がない

言葉は感情となる

 

 その2「言葉が生まれるまで」

 

「沈思黙考する」 

 

あがいてもどうにもならぬ

それでもなお沈思する

もがいてもなにもつかめぬ

それでもなお黙考する

 

からんだ赤い糸がほどけない

あきらめずなお沈思する

きれそうな赤い糸にすがる

しつこくもなお黙考する

 

なやましい縁がたちきれない

すてきれずなお沈思する

あさましい縁にくるしむ

わかれられずなお黙考する

 

あつき情にくじける

なさずしてなお沈思する

ほとばしる情におぼれる

みをやくもなお黙考する

 

みえぬ先をおそれる

びくつくもなお沈思する

えがけぬ先につまずく

ふたたびの道になお黙考する

 

※沈思黙考(ちんしもっこう)沈黙して深く物事を考えること

 

 「見えざるものを見せる」

 

言葉にしか出来ない

思い描きしものを詩にする

 

どう描くのかもどかしさに苛立つ

言葉の拙さにあがき屈する

 

感じた情景に心惹かれる

言葉が表れては消える

 

何を伝えるべきかおもいの凝縮を待つ

思考しつつ言葉が醸し出させる

 

心の奥底の澱をかき回す

悩みの深さか世の憤りかを言葉が探る

 

伝えるべきテーマがその姿を現す

紡ぎ出される言葉が踊り始める

 

思索は詩の表現に整えられてゆく

伝えるべきおもいは言葉により発せられてゆく

 

見えなかった心の情景が感じられる

イメージが膨らみ詩の言葉が走る

 

詩作は己の曖昧さを言葉で顕わにする

書き上がった詩に己を投影する

 

己の世界観を詩編に示すことで存在価値を問う

時に共感を共有し時に反目を甘んじて受諾する

 

見えぬことを詩に表現したい

感じることを詩にしか表現できない

思っていることを詩で表現するしかない

言葉はその手立てとなり己の心の内を明かす

その3「言葉は誰にとどくのか」

 

「誰かの琴線に」

 

逆らえない現実  

胸を掻きむしる

抗えない乖離

涙すら涸れ果てる

拒めない絶望

塗炭の苦しみは続く

 

突きつけられた現実

自力での解決を放棄する

追い詰められた判断

たじろぎもがき破棄する  

問い詰められる良心

世間体は無視する

 

こみ上げる憤怒

迷走の果ての決断

遺棄への悔悟

倫理観の崩壊

強いる自己納得

 

衰弱した心にしみた一編の詩

「私がわたしを生きる」

わたしを生きられるようにしたい

琴線に切なるおもいが詩編と重なる

 

 「言葉が沈黙を破るとき」

 

日常の営みにある小さな仕合わせ

何気なく見過ごしていたエピソード

ふと気づいた瞬間ぬくもりを感じる

さりげなさに心の通い路ができる

穏やかさに誰かの背にもたれる

その風景から見える言葉が訪れる

気負うこともなく言葉がこぼれる

沈思する前に言葉が沈黙を破る

書く手に何の躊躇いも迷いもない

 

世の中のエポックに憤る

人間の欲望の果てに見る残忍さ

人間の権力の果てに見る残虐さ

人間の信仰の果てに見る残酷さ

その事実に言葉が鋭く尖る

命を奪い心を蝕む事態に言葉は容赦ない

恥辱を生起する言葉は辛辣さを強める

書く手は憤怒を抑制しつつ訴える

 

宇宙の一点に生を受けた存在

奇跡の人生を謳歌する言葉を詩に託す

沈黙する虐げられた人の声を詩に託す

喜びに歓喜する人のエネルギーを詩に託す

哀しみの淵に涙する人の悲哀を詩に託す

文字を読めぬ人の琴線に詩の力を蘇られる

 

言葉が降りてきた瞬間静寂が破られる

生きている証に詩文が綴られる

生きる情熱が詩文に刻まれる

生きていく感性が詩文を際立たせる

共に在ることの仕合わせが詩文を求める

沈黙する言葉はついに堰を切ってこぼれ出す

 

 「沈黙は黙認」

 

黙ることしか出来ない

黙らなければ迫害される

黙っていれば難を逃れる

黙ってさえいれば命は助かる

 

黙っているだけでいい

黙らなければ反動と罪に問われる

黙っていれば賛同と見なされる

黙ってさえいれば訴えられない

 

黙って何も考えない

黙らなければ危険に晒される

黙っていれば不正に目をつむる

黙ってさえいれば見破られない

 

黙って騙されるふりをする

黙らなければ弾圧の的になる

黙っていれば胸が張り裂ける

黙ってさえいれば噓がまかり通る

 

黙って従うのがいいのか

黙らなければ汚濁を告発できぬ

黙っていれば偽善に染まる

黙ってさえいれば己を失う

 

黙ることしか出来ないのか

黙らなければ蹂躙される

黙っていれば隷属するばかりだ

黙ってさえいれば時代は後退する

 

黙ることを拒否する

黙らなければおかしいと知らしめる

黙っていることは人心を卑しくする

黙ってさえいればという世論を断罪する



その4「生を支える言葉」

 

「詩を力に」

 

書くだけの詩ではない

声を出し読まなければならぬ

行間に滲む情感を引き出せ

思いの丈を熱く表現せよ

命の鼓動が打ち続ける限り

詩よ

力を与えて欲しい

 

目の前で眼を見開く

覚醒する意識の中で

オレの声を聴く

魂を揺さぶる詩を聴く

魂を荒ぶる詩に乱れる

魂が目覚めた瞬間雄叫びをあげる

詩よ

もっと力を与えよ

 

絶望の淵から這い上がらねばならぬ

苦痛と苦悩の戦慄に屈してはならぬ

強靭な精神力をいま手放してはならぬ

魂よ!諦めるな

魂よ!蘇れ

互いの涙の涸れる果てまで

詩よ

さらなる生きる力を響かせよ

 

 「心に響かせたい」

 

詩は人の心をかき回す

ふり向かなければいいのに

情感で迫られると拒めない

なぜだろう 聴かなきゃいいのに

 

詩を疎んじていた

読解力だけでいいのに

抗う心が生まれた

なぜだろう 学校ではなかったのに

 

詩に逆らえなかった

ガードすればいいのに

ズバズバと刺さってくる

なぜだろう 避けていたことだったのに

 

詩が心を映した

見えなければよかったのに

言葉が優しく解きほどいた

なぜだろう 感性は渇いてはならないのに

 

詩はおもい滲ませた

素直に対話すればいいのに

言い訳のバリアを崩した

なぜだろう 怖じ気づいてはいけないのに

 

詩をじっくり朗読(よ)む

語らずとも黙せればいいのに

心の澱を流していく

なぜだろう 求めていた自分を見つけたからか

 

 その5「わたしという不可思議」

 

「表現とは」

 

自分が何ものであるのか

最も不可思議な存在

言葉では言い尽くせない存在

見失うと何ものでもない

 

自分にしか分からないのか

最も秘密を持つ存在

言葉に出せない存在

奥底が知れると何ものでもない

 

自分をなぜ自分と分かるのか

最も理解不能な存在

言葉では補いきれない存在

語ると何ものでもなくなる

 

自分にしか出来ないのか

最もわかりにくい存在

言葉で書くしかない存在

書き出すと何ものでもない

 

自分は他と違うのか

最も異質な存在

言葉にすぐに表せぬ存在

同じになれば何ものでもない

 

自分はなぜここにいるのか

最も根源的な存在

言葉以前の生命的な存在

命を全うすれば何ものではない

 

自分は何ものでもない

最も人間的な存在でありたい

言葉を表現とする存在

心を育まねば何ものでもない

 

 「言葉とバラード」

 

始まりはいつも突然だった

何気ないきっかけで出会った

心が掴まれたような痛みが走った

無言で立ち尽くすだけだった

世界が回り出した

 

沈黙は破られた

鼓動が高まるのを抑えられなかった

言葉は堰を切ったように浮かんだ

言葉を吐いた瞬間後悔した

世界は止まった

 

告白は終わった

心が空っぽになるような気がした

失恋はかくも苦しいのかと呑み込んだ

言葉は虚しく宙を舞った

世界は本心を試した

 

終わりの始まりだった

蒼然した顔に血色が戻った

物憂げな気持ちを棄てた

言葉はきっぱりと言い切った

世界は動いていると

 

 その6「言葉と沈黙のあわい」

 

「詩のかくれんぼ」

 

かくれんぼ

見つからないよう

姿を隠す

声を潜める

息を止める

通り過ぎてゆく過去

 

かくれんぼ

そろそろ見つかろう

体を動かす

音をたてる

息を勢いよく吐く

だあれもいない忘却

 

かくれんぼ

遊びから見放された

体が重い

声に応えてくれない

吐く息が早くなる

見つからない真意

 

かくれんぼ

期待は萎みかけている

体が窮屈だ

声に張りがない

息が上がってくる

見つけてもらいたい本意

 

かくれんぼ

やめなきゃいけない

体が動くうちに

声が涸れぬうちに

息が続くうちに

詩に姿を表そう

 

 「余韻が残る」

 

詩を朗読する

読み終えて余韻が残った

静かに問いかけてくる詩文が残った

いたずらに読んだ詩に心が揺れた

弱さをあからさまにされた

なぜか爽快感が紛れ込んでいた

 

詩を朗読する

読み終えて余韻に浸った

情感に迫るような詩文ではなかった

言葉は平易で難しい表現もなかった

素直にその意が伝わってきた

なぜか充足感が広がっていた

 

詩を朗読する

読み終えて余韻を噛みしめた

言葉が響き合い鷲づかみにされた

共苦を知り言葉にするのを躊躇った

わかり合えることの喜びに変わった

なぜか悲哀感が薄まっていった

 

詩を朗読する

読み終えて余韻を味わった

詩情はその世界を見せてくれた

短い詩文に圧縮されたのは想像力だった

感受性を試されて沈黙した

なぜか共感が強まっていた

 

詩を朗読した

読み終えて余韻をしたためた

涙の理由(わけ)を記した

感情の高ぶりを覚えた

表現力という技巧ではなかった

なぜか稚拙感に囚われていた

 

 おわりに「ともに在る言葉へ」

 

「誰かのために」

 

この詩が誰かに届けられますように

この詩で誰かが元気になりますように

この詩は誰かのためにあってほしいと

 

人は誰でも失敗します

人は誰でも心細くなります

人は誰かのそばにいたいと

そんな寂しさに添う詩であればいい

 

人はやり切れない憤りを覚えます

人は満たされない不安を感じます

人は誰かに護られていたいと

そんな孤独に添う詩であればいい

 

人は誰でも哀しみを抱えます

人は誰でも諍いに苦しみます

人は誰かに寄りかかりたいと

そんな苦しみに添う詩であればいい

 

人は誰かに恋をします

人は誰かを慕います

人は誰でも心のままにいたいと

そんな思慕に添う詩であればいい

 

人は誰でも笑顔に救われます

人は誰でも幸せを求めます

人は誰かとそうありたいと

そんな出会いに添う詩であればいい

 

人は誰でもいつか別れがあります

人は誰でもその日まで生きるのです

人は誰かのために尽くしたいと

そんな明日に添う詩があればいい

 

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