詩集「子どもと生きるを問う」
詩集「子どもと生きるを問う」
子どもを変えようとしない
関係を壊さない言葉が、ここにある
教えない。急がせない
ただ、そばに立つ
子どもと生きるための言葉が、ここにある
その1 心の兆候
「見えそうで見えない」
霞(かすみ)がかかる
見えていたつもりが霞んでゆく
なぜか不安だけが取り残された
靄(もや)が広がった
おぼろげにまだ見えそうだ
なぜか不吉な予感がした
霧が覆った
視野が徐々に塞がれてゆく
なぜか思考が停止した
雨が強くなった
暗転の空に滝が生まれた
なぜか捨て身を晒した
晴れるのを待つしかない
果たして頭を上げることができるのか
なぜか悔しさがこみ上げた
先の見えそうで見えない世の中に
憤りの拳を握るしかなかった
希望さえ見出せぬ世の中に
悲痛な声を上げるしかなかった
軽率な言葉の世の中に
真意を求める拳は下ろすしかなかった
「話せない子」
せっつかれても
いまの気持ちを言葉にできない
歯がゆくてどうしよう
話そうにも
言葉がすぐには出てこない
焦るだけで息を吐く
話したくても
わかってくれるかどうか
心配が先に出る
聞いてあげるよと
次から次と質問ばかり
考えがおぼつかない
言いたいことが自棄(やけ)になる
気持ちがなえてしまって
もうどうでもよくなった
肝心なときに話せない子だね
ちゃんと考えをまとめなさい
手のかかる面倒くさい子となる
話したいのはさ
こう考えているよってことを知ってもらいたかった
こうしたいってことをわかってもらいたかった
こうしたらってことを一緒に考えてほしかった
黙って聞いてくれるだけでよかった
言葉足らずでもわかってくれると思った
話したいって思ったのにうまくいかなかった
聞いてるふりでは思ってることは言えない
また後でねという決まり文句でジエンド
「きみはきみだ」
不安でこころがバクバクする
落ち着かなくてオロオロする
眠れなくてイライラする
誰かに見られているようでオドオドする
誰かに陰口を叩かれているようでドキドキする
誰にもこころを打ち明けられずボロボロになりそう
意気消沈するばかりで笑顔を失う
変えられない明日は失望だけが積み残る
ネガティブな気分が支配してゆく
殻に引きこもって身も心も固まってしまった
誰もわかろうとはしない
叱るばかりで心が萎える
誰もわかっちゃくれない
何も言えない自分が恨めしい
誰もそばにいなくなった
期待に添えない自分を責める
思い込みの強さが自分を追い詰める
報われない弱さが自分を問い詰める
憧れを見失った虚しさが自分を押し詰める
悶悶としている毎日
落ち込んでいくだけの毎日
言葉を失ってゆく毎日
蔑みに耐えるだけの毎日
ひとつ想い出してほしいことがある
きみが生まれたときに祝福されたことを
ひとつやらなければならないことがある
きみはきみを決して嫌いになってはいけないことを
ひとつ忘れていることがある
きみはきみを生きる主役であることを
ひとつだけ内緒に教えよう
きみと同じようにボクも悩んでいたことを
※ 厚生労働省と警察庁は2025年3月28日、2024年の自殺者数の確定値を発表した。小中高生は前年より16人多い529人で、統計のある1980年以降、過去最多となった。男女別では、女子が初めて男子を上回り、女子中高生で計38人増えた。小中高生の自殺者は、男子が239人(前年比20人減)で、女子が過去最多の290人(同36人増)。小中高生別では、高校生は男子が166人で女子が185人、中学生は男子が64人で女子が99人。小学生は男子が9人、女子が6人だった。原因・動機(重複含む)は、学業不振や学友との不和などの「学校問題」が最も多く、「健康問題」や「家庭問題」が続いた。(読売新聞2025/03/28 )
その2 関係の摩擦
「いやだなー」
どうすればわかってるのに
いちいち言ってくるのって
いやだなー
心配するのもわかるけど
いちいちあんたのためにって
いやだなー
なにかしたくても
いちいち口をはさんでくるのって
いやだなー
からだよりも心がおいつかない
いちいちこうしてああしてって
いやだなー
なんともないときにも
いちいち大丈夫って
いやだなー
考えることができるのに
いちいち子どもあつかって
いやだなー
反抗期ってさ
こんな感じかな
いやだなーって思うことで
少しずつ親離れしていくのかな
いやだなーって考えることは
少しずつ自分でしなきゃいかないのかな
いやだなーって顔するのは
ほんとはいやだなー
だって母さん少し悲しそうだもの
「心配性の克服」
いつまでこの子の心配をするのやら
気にかかるとつい言葉をかける
大丈夫?
なんともない?
細かいことに気が取られる
心の安まることがない
大丈夫?
なんともない?
目の届くところでいてほしい
学校で何もなければいいな
大丈夫!
なんともない!
今日も一日無事だった
明日も無事であってほしい
大丈夫!
なんともない!
子どもが嫌がってきた
押しつけがましいと感じだした
でもやっぱり気がかりで
大丈夫?
‥‥
なんともない?
‥‥
子どもが成長してるあかし
当たり前が少しずつ変わってゆく
大丈夫!
なんともない!
そう思う時間が少しずつ長くなればいいな
「小さな誇り」
まだまだ子どもだから
目を離すと心配ね
まだまだ子どもだから
それはまだ早いわね
まだまだ子どもだから
出来るって意地を張ってもダメ!
まだ子どもだから
一人では無理よ
まだ子どもだから
手伝ってあげるね
まだ子どもだから
ちゃんと言うとおりにしなくちゃね
いまは子どもだから
親の言うことは聞きなさい
いまは子どもだから
親が代わって考えてあげる
子どもだからって
失敗しちゃいけないわ
叱られたくないなら
ちゃんと話を聞きなさい
まだまだ子どもなんだから
大人になってからにしてちょうだい
いつ子どもの誇りは育つの?
その3 自己の芽
「いいとこ教えて」
ぼくのいいとこってどんなとこ
よくわかんない
他の子とくらべたらまるっきりダメ
勉強は苦手
授業はよくわかんない
早く終わればいいな
えっ我慢強いって!
そうだね
何時間も座っているもんね
友だちと会って遊ぶだけで学校に行っているかも
友だちはあんまり好き嫌いしない
いじわるもしないしいじわるもされない
だっていじわるしたら気分が悪いっしょ
えっおひとよしだって!
そうだね
いじめられてる子もいじめてる子も中にはいる
でも関係ないよ
楽しくできればみんなハッピー!
こうしたいとかああしたいとか
思ってもなかなかできないんだ
だからってうじうじするのもいやだな
えっきみもそうなの!
そうだね
自分で考えることが大事なんだ
あとは決めたらやるしかない!
運動も少し苦手
走っても速くはないしね
サッカーも野球もうまくはない
えっ元気ならいいじゃん!
そうだね
プロになるわけでもない
からだを普通に動かせればいいんだよね
ほかの子と比べられるのっていやだな
できる子の中には自慢する子もいるけどさ
できない子がおどおどすることってないしょ
えっその考えがいいって!
そうだよね
高校野球で優勝するのは1校だけ
あとはみんな負けじゃない?
でもあきらめないでがんばることが大事だよね
おおらかなきみがいい
心の根のやさしいきみがいい
だれにでもわけへだてないきみがいい
ときどき反抗するきみもいい
どうしたらいいか考えるきみはもっといい
納得できずにやってもうまくいかない
考えたことをやってみようとするきみが好きだ
動いてはじめて見えてくるものがきっとある
失敗しようともっとやろうと頑張るきみがみたい
一生懸命何かに集中できたら自信がうまれる
きみのよさは正直なのがいい
うそをつけず素直なのがいい
きみのよさはひとが好きだってことが一番さ
だからもっともっとひとを好きになろう
「大きく育つ種」
つまらぬこと
あほくさいこと
やらされてること
みんな意気が下がりそう
忘れられないいやなこと
はずかしい失敗をしたこと
やる気がしぼんでしまったこと
みんなも同じ思いをして大きくなるんだ
つらくて悲しいこと
がまんできないいやこと
にくたらしくてけんかになること
みんなまとめて大きくなる種なんだ
面白いと思ったこと
楽しそうだと感じたこと
元気が出そうと動かされたこと
きみが笑顔になれそうな種もたくさんある
でもね
きみは考えなきゃいけない
きみが持っている種をどう育てたらいいのかをね
きみは考えて決めなければいけない
何が出来るかな
きみは決めて動かなければいけない
何か出来るかもしれない
ただね
最初から出来ないかもしれない
そう考えるのだけはやめよう
そこはね
何もしないでいるだけだよね
だからね
きみがこうしたいとまずは動いてみようよ
そうすれば
きみの種がはじけて芽を出す用意が始まるんだ
でもね
ひとりでできないことは誰かに力をかりようよ
そしてね
少しずつきみの力でできるようになればいい
それがね
大人になってゆくということなのさ
いまはね
きみが大人になる種をたくさん見つけること
そこにね
きみが一番大切にしたい種がきっと見つかるよ
だからさ
きみはその種を大きく育てなきゃいけない
きっとね
きみにやさしさと元気と勇気を育ててくれる種になる
「心の栄養」
きみの心が喜ぶことって何だろう
きみの心がドキドキする瞬間に
きみを変える心の栄養が生まれる
きみの心のエネルギーとなって
きみを育てていくんだ
こうしたいという気持ちが生まれたら
きみの心を強くする栄養になる
こうしてあげたいという気持ちが生まれたら
きみの心をやさしくする栄養になる
許してはいけないという気持ちが生まれたら
きみの心を正し悪から守る栄養となる
自力で成し遂げたいという気持ちが生まれたら
きみの心をたくましくする栄養になる
考え方がちがってもわかろうとする気持ちが生まれたら
きみの心がしなやかになる栄養となる
するかしないか悩む気持ちが生まれたら
きみの心がしたたかになる栄養となる
こうありたいと願う気持ちが生まれたら
きみの心が熱くなる栄養となる
こうしてみたいと望む気持ちが生まれたら
きみの心は世の人となる栄養にする
こうしようと強い気持ちが生まれたら
きみの心は世の力になるエネルギーに変わる
その4 共在の倫理
「きみは誰を信じる」
いつもやさしくしてくれるひと
いいね
なにかあこがれるね
きみもそうしたくなるよね
小さなことでもほめてくれるひと
いいね
なにかうれしくなるね
きみもだれかのいいとこさがそうよ
めったにしからないひと
いいね
でもしかられることも大事だよ
きみがなぜしかられたのかかんがえよう
うそをつかないひと
いいね
でもうそをつくときはあるよね
きみもうそがばれたときさいあくだよね
元気づけてくれるひと
いいね
おちこんでるときには一番だね
きみもだれかにやってあげてみようか
なんでもはなせるひと
いいね
かくしごとが多いとおちつかないね
きみがすなおになれるかどうかだね
おもしろいひと
いいね
いつもわらわせて明るくしてくれる
きみもそのわらいのわのなかにいるかな
目を見てはなしてくれるひと
いいね
しんけんさがつたわってくるよね
きみもまた目を見てはなそう
きみが出会うひとたちは
きみがなりたいひとの鏡になる
きみが出会いたいひとたちが
きみがなろうとするひとのもとになる
きみが出会ったよき人たちは
きみが信じるひととなる
「臆病なきみへ」
ひとりでは何もできない
まわりの空気を読むしかない
うまく立ち回ってガードする
臆病だから考えてはいけない
ただ一緒にいるだけのこと
ひとりでは動かぬようにする
ターゲットにはなりたくない
うまくおだてて視線をかわす
臆病だから目立ってはいけない
いいねをくりかえすだけこと
みんなも同じだと思ってた
いじめられたりシカトされるのが怖い
友だちなんかじゃない
臆病だから文句は言わない
聞かれても何でもないと答えるだけのこと
みんなも我慢してると気がついた
薄ら笑って小馬鹿にする
ほんとは劣等感のかたまりみたいなやつ
臆病だから隠そうと無理してる
強そうなふりをしているだけのこと
みんなはずる賢さを知っている
頭がいいだけ悪知恵を発揮する
陰で告げ口や脅しも平気にする
先生とはいい子ぶって味方につける
後の仕返しが怖いから黙るしかない
みんなはやっぱり臆病者だけのこと
ドジな子とレッテルを貼られて泣いてる子
抵抗できずに好き勝手にされてる子
周りに惑わされてただ流される子
不登校になってしまった子
自分の世界に閉じこもり相手にしない子
そんな子を気にもかけないクラスの子ら
臆病が蔓延して空気になった
臆病者だと
自分でそう信じているだけかもしれない
臆病だから
自分を守るしたたかさを学んでいるのかもしれない
臆病だからこそ
相手をよく見て考えて動いているのかもしれない
臆病は
誰かのせいにしていてはいつまでも変われない
誰かの後ろに隠れていたらいつまでも変わらない
誰かのために何かをしたら少し変るかもしれない
その5 語る主体
「少年よ 語れ!」
少年よ
臆することなく
自らの大いなる夢を語れ
少年よ
ためらうことなく
自ら出でる大海を語れ
少年よ
惑うことなく
自らの欲する道を語れ
少年よ
畏れることなく
自らを鼓舞する明日を語れ
少年よ
疑うことなく
自らを信じる友を語れ
少年よ
ごまかすことなく
自らいさぎよく語れ
少年よ
屈することなく
自ら真意を語れ
少年よ
黙することなく
自ら心動いた詩を語れ
少年よ
怯むことなく
自ら熱きおもいを語れ
少年よ
求められる人を語れ
少年よ
世にあるべき人を語れ
少年よ
宇宙に愛を見出す人を語れ
「決意と自己実現」
決めた瞬間
ひとは心を熱くする
揺るぎないと確信する
決めた瞬間
ひとはやる気を満たす
やり抜けると得心する
決意は頓挫する
ひとは気力が失せてゆく
挽回できると言い聞かす
決意はいつか消滅する
ひとは次への充電を装う
達成できなくとも凹まない
決意はその時の決意
その瞬間にベストを決めた
変化に対応が出来なければアウトだ
決意は自己決定
常に自由意志を尊重する
行動を再考しトライするだけだ
決意を疎かにしてはいない
他者に委ねれば存在は脅かされる
変わることも捨てることも
それもまた自己決定でしかない
己の生き方から逃げないための決意
自己実現への自己主張そのもの
挫折を覚悟のうえで自力を尽くす
その6 社会への手渡し
「Tomorrow
is…」
きみの明日は
笑顔がこぼれているだろう
きみの明日は
憧れにこころ躍らせているだろう
きみの明日は
たくさんの友だちに囲まれているだろう
きみの明日は
素敵な夢に溢れているだろう
きみの明日は
辛い悩みも吹き飛んでいるだろう
きみの明日は
死の恐怖から解放されているだろう
きみの明日は
安全に食べるものがあるだろう
きみの明日は
学ぶこともきっとできるだろう
きみの明日は
きみが生まれてきたことを祝福するだろう
「心のおもむくままに」
なにげない暮らしに包まれた幸せ感
昨日と変わらぬ日常にある幸せ感
当たり前に身近にある幸せ感
何か物足りなさを感じた
心の渇きのような気がする
何かし残しているように感じた
心の悔いのような気がする
何かときめくように感じた
心の熱さのような気がする
感じるだけでは何も始まらない
心のおもむくままに動いてみよう
感じるだけでは何も起こらない
心が惹かれることに動いてみよう
感じるだけでは何も得られない
心が満たされるよう動いてみよう
世の中があらぬ方に変わっていく
見過ごせないことを黙認してきた
許せないことも傍観してきた
小さな幸せ感に満足していた
気づいた
子どもによく生きたと伝えられるのか
子どもが背中を見て育っていけるのか
子どもと人として学び合っていけるのか
子どもらの未来を手渡すために
何を為すべきなのか考えよう
わたしを変える小さな一歩
できることから始めよう
わたしらしさを見つける小さな一歩
出会う人から見つけていこう
「誰もが自ら殻を被る」
誰も知らなかった
心が躍る学びがここにあった
心に染み渡る詩とここで出会えた
心を確かめ合う語り場がここだった
誰もが変わるきっかけがほしかった
見方が変わるとは期待しなかった
心を揺さぶられるとは思わなかった
潜在意識が醒めるとは考えもしなかった
誰も予想だしなかった
目を見張る気づきがあった
目を輝かす詩と出会った
目と目を見て語り合った
誰も予感しなかった
抗うことなく心を動かされることを
素直に自らの本音と語り合うことを
変わってゆくおもいを受け入れることを
誰もが殻を自ら破った
こだわりや思い込みを捨てた
もやもやしたおもいから解き放された
よりよく変わることを躊躇しなかった
誰もが「次に。」を意識した
いままでを振り返る時間だった
これからを考える時間になった
こうしようと触発された時間となった
誰にも変わるチャンスがある
学びは自己変革へと導く成長の糧となる
変わりつつある自分を率直に容認する
人生の価値を見出す一歩を踏み出す時がきた
その7 共育を信じる
「育つ」
育てるにおもいが傾く
思い通りに育たない
気負うほど空回りする
育てるに力が入る
こうしなさいが口癖になる
我慢できずに声が出る
育つにおもいを傾ける
小さな気づきが生まれる
子ども目線で考える
育つは待つことと知った
繰り返し考える癖を付けさせたい
失敗は育つチャンスと教えた
育てるから育つへのシフト変更
育てるという一方通行を見直す
育つという子どもの力をともに引き出す