献身的な妻と友への祈り
7ヶ月近くの入院生活が続く
骨折から突然内科的な疾患が重度化した
一時は肺炎を起こし駆けつけた
透析が命綱だった
バイタルが悪化すれば絶命する
医師は回復の可能性は極めて小さいと言う
何度も危機を越えて耐えてきた
医師は心臓の強さが延命の力だと言う
妻は友に異変を察知していた
目が見えていない
懸念された失明に内科医の対応が遅れた
妻は両目が失明することを案じた
憤りを抑えながら訴えた
ようやく外部の眼科を受診した
まだ可能性のある右目の手術が決まった
透析を続ける友には厳しい日程だった
手術日は金曜の透析から3日後になった
手術の負担やバイタルの低下を懸念した
妻はもしもがいつも心を乱し続けた
反応が弱くなってきた友を見舞った
眠りを覚ますよう妻は声をかけた
見開いた眼に来たかという力を感じた
言葉にならぬうなり声を上げた
持参した詩集から数編朗読した
今日の見舞いはそのために準備してきた
オレの友へのおもいを朗読に込めた
明日の目の手術に不安がよぎる
自らを鼓舞するように励ました
たった30分の面会を終えた
友は静かに目を閉じ右手を握りしめて別れた
もしもの時は駆けつけられないと謝った
キャンセルできない仕事が目白押しだった
送りがてら昼食を二人でとった
ここ数ヶ月でのやつれが目立った
昨日まで東京から来ていた従姉妹が戻った
前には食べられた量がまったく受けつけないという
胃が縮んだと笑った
久しぶりに食欲が湧いたのか蕎麦を食べた
市内まで送ってもらった
道すがら明日手術する眼科を教えてもらった
介護タクシーで午前中搬送されるという
当日の体調を心配していた
市内で降ろしてもらい別れた
時間つぶしに古本屋に入り「北海道方言辞書」と出会った
詩作へのモチベーションの高まるのを感じた
釧路駅は行き交う人もまばらで閑散としていた
待合のTVで大相撲を見ていたが朝乃山が負けた
贔屓力士の黒星は意気消沈させる
バスターミナルに行くと友の妻がいた
お土産を手渡すのを忘れたと意って届けてくれた
心の余裕がなく日々送ってきたのだろう
札幌行きのバスが入り見送った
後ろ姿は肩が丸くなり悲哀を背負っていた
重圧を小さな身体で支えてきたからだろう
何度も振り返っては頭を下げて帰っていった
明日への不安を抱きながら主のいない家路に就く
帰宅してお土産を開いた
車中での小腹を空かしたときの心遣いが詰まっていた
トーストしたサンドイッチを妻といただいた
今日一日の様子を話題に行って良かったと伝えた
翌朝寝坊した
手術の無事を祈るメールを送った
11:50電話が鳴った
手術が成功して目が見える!!
明るく弾んだ声は何ヶ月ぶりだろうか
一緒に嬉し涙した
間髪おかずに食べろよ!
食べてくれと祈りのように伝えた
病院に戻ってからメールが来た
心配していた透析は予定通りできるという
今日はすべて良い方向に進んでいると
夫婦愛に乾杯!
期待に応えてくれる男です!
ありがとう
ありがとう
感謝しかありません
友は今頃疲れた身体を横たえて寝入っているだろう
妻はここ数日の疲れからしばし熟睡できればと祈る
友は生命力のある限り挑戦を続ける
泣き笑いした友の顔を思い出しながら綴る
〔2026年1月19日書き下ろし。二人の愛の姿をこうして記録と記憶に残そう〕