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正論にあらず

真なるかな幸福実現の民主主義 善なるかな倫理社会の法制度 美なるかな人間として享受する権利 三つの価値は無視されていく   正論は勝者の価値観に委ねられる   〔 2026 年 5 月 16 日書き下ろし。二大国支配の鐘が高らかに鳴り響く〕

看護する

地方の医療は機能を低下させる 人口減少は歯止めが利かず 病院経営は赤字を抱える 治療も入院も医療経営が優先する 患者は医療費も薬剤費も負担増で医療控えが増す 高額医療など経済的な格差は歴然とする 生死を分けるのは経済力か   介護保険もサービスの地域格差はさらに開く 介護保険を強制的に搾取されたまま サービスを受けられずに在宅に閉じ込められる 長寿社会は急速に老後の不安を増幅させる 地方自治体の福祉財源は縮小するばかり 認知症の介護度も動作評価以上の暮らし方の問題を抱える 公助も持続は期待できず自助・共助を求めるばかりだ 死に方の選択肢は少ないか   札幌に集中する人の流れは 医療や介護を受けるための 地方からの脱出なのか 入院しても看護できない地方の病院を見限る 癌などの重い疾患を抱えて札幌に来る 付き添いで定期的に離島から通院する友人もいる 看取りたいという願いを叶えたい一心で動く 看護のために交通費も宿泊費も札幌はバカにならない 老後にと蓄えた貯蓄はあっという間に消えていく 地獄の沙汰も金次第とは時世を映しているのか   医療も介護も公平にとは絵に描いた餅に過ぎない 疾病を抱えた多くの人が安心して生きる世の中が遠ざかる 看護し介護する人も添うことの厳しい現実を味わい尽くす 強慾な者たちが戦争を起こす度に暮らしはままならなくなる 世界の負の連鎖は医療も福祉も享受できない世界を招く   〔 2026 年 5 月 14 日書き下ろし。想像力の乏しい人間たちが命と暮らしを弄ぶ〕

手直しへの抵抗

6年分の報告原稿を書いていた 概ね書き終えてひと息ついた 流れもいいかと納得していた 細部をチェックすれば終わる 大きなミスに気づいた 年号と西暦が混在した 統一しようと手を付けた なぜか1年足りない 凡ミスに不甲斐なさを感じた 簡単な手直しでは済まなくなった 気が滅入る 少し時間を置いた 集中力が散漫になるのを堪える 資料を再度机上に広げる 一から見直しが始まる 億劫になる原因は年号の表記だ いつも西暦で書いていた あからさまに元号表記に違和感を覚えた 元号は天皇制に由来する 昭和と平成と令和で区切ったことで人間の質が違うらしい 日本人的な精神風土に抵抗しつつここでつまづく こだわりが手直しの出鼻を挫く 余計に鬱陶しさがつきまとう 意を決してかからねばならぬと苦笑する さてと やりますか 面倒くさい! 〔2026年5月14日書き下ろし。まだ締め切りまで時間がある。それでもなお「元号」はいつも思考の邪魔になる〕

餌場の争奪ごっこ

二頭の馬はローブで首をつながれた 目の前には干し草がたんと積んである 食べるには相手より強くロープを引かねばならない 拮抗する力が食欲をさらに高める 何としても相手をねじ伏せねば食べられぬ このまま対立していては互いに消耗するだけだ ようやく察した二頭は歩み寄った   これじゃいつまでも埒が明かん いっそ一緒に餌を食べてみないか 確かにおっしゃるとおり 二頭は一方の干し草を食べ終わって嬉しそうにいなないた もう一つの干し草に向かいながらつぶやいた この世界は俺らの餌場だな   遠方から痩せた一頭が恨めしそうに見ていた 仲間はずれは身から出たさびとも知らない 相変わらず隣の国の餌場をあさっていた 盗っ人根性は正義を唱えて我が物顔で君臨する   餌場荒らしは意気揚々と鼻息荒くいるようだ おやおや仲良しになった二頭はまだまだ腹の探り合い 信用のおけない者だけに噓はすぐにバレるだろう 餌次第ではすぐに化けの皮が剥がれてしまう 餌食にならぬよう餌場は戦々恐々の日々が続く   〔 2026 年 5 月 14 日書き下ろし。米中首脳会議が始まった。化かし合いを見ていこう〕  

もどかしさ

そこまで言っても気づかない 鈍感なのか それとも気にもかけないのか 他人事にはこれくらいがちょうど良い   そこまでしても気にしない おざなりなのか それとも当たり前なのか 他人事ならこれくらいでもましか   そこまでされても気にもとめない 面倒くさいのか それとも無関心なのか 他人事ならなおさらか   そこまで気がまわらない 自分本位なんだ それともどうでもいいとなげやりか 他人事には距離を置く   そこまで気疲れするか もどかしいならやめればいい それともしなきゃ気が済まない 他人事だから大概にしたらいい   そこまでそこまで切りがない ほっとけない性分がいとわしい それとも見てはいられないか 他人事はいつか自分に跳ね返る   〔 2026 年 5 月 13 日書き下ろし。世間には他人事に奔走する奇特な人もいる〕

信を失う

信じるに足るのは何か その人そのものって よく分からない   その人の何を信じるのか 裏切らない人さ 何をもって裏切らないのか それでもいいと納得済みさ   よく分からずに信じるのか たとえ裏切られても大丈夫 信じたことは後悔しない 怒りのダメージを与えられないとね   なぜそんなに無頓着なのか 自分の判断を簡単に変えたくない 裏切られたとはっきりしてもかい 信じることの呪縛を容易に解かない   逃れられない罠のようだ 騙されたと知っても仕方がない 不穏な空気が漂ってる そう感じるのは不信の塊かな   正しいかどうかどうでもいいの はて正しいってなんだい 道理に外れても構わないの はて真実なんてどこにもないよ   虚構世界に果たして善悪はあるのか 信じるよう情報を操作する 虚実で固めて装飾を施す 信じるに足るのは虚無か   〔 2026 年 5 月 13 日書き下ろし。信じることの虚しさを知るのは不幸だ〕

母の日と末娘

夕方末娘がやってきた 日曜出勤で無理かと諦めていた ピンポンが鳴った ドアを開けると笑顔で立っていた   妻はソファーで寒気がすると横になっていた 知らせると満面の笑みで出迎えた 母の日のプレゼントを差し出された この間もらったのにと嬉しそう 今日は母の日だけのことと分からぬ言い訳だ   大相撲を見ながら妻が贔屓の高安が勝って大喜びした 横綱豊昇龍に右足裏にアクシデント しばらく立てず土俵を降りるときも介添えが必要だった 花道を引き揚げる途中振り向いてひとり土俵に向かった 観客は帰り支度の最中だった 立ち止まり土俵に一礼した 横綱として相撲人としての矜持を示した 今朝の報道で休場を知った 土俵上の形相とは全く違う若者の作法に人間性を見た   その夜親子水入らずで母の日を祝った 妻の手料理に舌鼓を打ちながら 飲み残しの日本酒はすぐに空いた 冷やしておいた白ワインも空いた デザートは娘が持っていたエクレアと紅茶 バスの最終には間があった   娘を送りがてら久しぶりに二人の時間だった 地下鉄の改札口まで見送った 帰り道 CO-OP に抜ける地下道を選んだ 幸いまだ開いていた 酔い覚ましに店内を散策する この時間惣菜の半額が目に止まる トンカツをゲットした 明日カツ煮をしようと決めた 途中コンビニでスニーカーズ ( チョコ ) を買った 低血糖の症状が出たときの対処法がチョコだった 年に数度の事だが手元にあるだけ安心だ   帰宅すると娘から無事ついたと妻にメールがあった 世界卓球は女子は敗れていた 寝る支度をして机でやり残している仕事が気にかかった 今日の午後には一本原稿を送り込んだ でもまだ一本しゃべりのレジュメが残っていた 締め切りまではまだ猶予があると油断は出来ぬ 思いついた構想を忘れぬうちにメモした   今日はなぜかぬくまった夜になった   〔 2026 年 5 月 11 日書き下ろし。母の