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5月, 2025の投稿を表示しています

毀誉褒貶

褒めたり貶(けな)したり面倒くさい 評判を取るのは世知がしこい 妬まれたら足元をすぐすくわれる 世間は気まぐれだけのこと   褒められてお調子に乗る 醜態を晒してバカを見る 信用半ばで挫折を味わう 世間の変わり身は素早いだけのこと   貶されて奮起する 堪忍袋の緒は切らぬ 失態を取り戻すには根性がいる 世間の風は冷たいだけのこと   褒められて有頂天になった 優越感にどっぷり浸かった 卑下した言葉で一転した 世間は豹変を見逃さないだけのこと   貶されて辱められた 罵声を浴びながらも転機を待った 忍苦し心は折らなかった 世間は正当に見るだけのこと   毀誉褒貶 人は動いた分だけ評価を伴う 人は嫉妬と羞恥の波を被る 人は寛容と情愛の風を纏(まと)う 世間の評判に屈せぬだけのこと   毀誉褒貶 人は裏切れば報いを受ける 人は慢心すれば凋落が始まる 人は求心力を失えば退く 世間はそっぽを向けだけのこと   ※毀誉褒貶(きよほうへん)賞賛したり悪口を言ったりすること。ほめたりけなしたりの世評。「毀」「貶」は共に、そしる(=非難する)こと、けなすことを意味する。「誉」「褒」は共に、ほめることを意味する。 相反する漢字を二度使う事でそれぞれの意味を強調する。 ※世知がしこい:世渡りの才があって,抜け目のないさま。   〔 2025 年 5 月 30 日書き下ろし。世間の風当たりの強さに抗弁が滑るのを見る。世の指導者に凋落の気配を感じる〕

気まぐれとむさ苦しさ

思いつくまま気ままにしてきた 相手の迷惑を顧みることはない 思い通りいかねば癇癪を起こす 気ままな上にオレ様が鼻につく 逆らうものなら牙を剥く 利にさとく徳はなし 群がるものはおこぼれに預かる どこの誰かと尋ねれば心当たりがあろう   むさ苦しいのが玉に瑕(きず)だ 損得なしに身なり構わず飛んで歩く 思い違いで一悶着もないわけではない めんどうちいのも愛嬌だと人受けはいい まるで幼子のような振る舞いも許される 悪気がひとつもないからついほだされる 生一本だから時に思慮浅いのも面白い むさ苦しくとも淀んだ空気が変わるのが一番いい   無頓着なのも困ったもんだ 世間知らずもいいところだ 害にもならずにいるが手がかかる 有り難さを知らぬ能天気が心配だ 怒っても泣いても世の中変わるもんじゃない ひとりくらいこんなもんもいていいだろう 人を拒まず愚痴を聞くのが取り柄か 情にほだされるよりは冷めるのも一考か   気まぐれが禍(わざわい)することもある 自分勝手で始末が悪い 言った先から言葉が乾く 誰も信用などするはずもない えらい自信家だがよくわからない 配慮など全くあり得ない いよいよ世間から三行半が下されよう 気まぐれでも心の奢りが身を貶(おとし)める   むさ苦しいのが禍することもある 臭いが立てば嫌悪される 垢で汚れていれば目をそらす 言葉が汚ければ距離を置く ひねくれていれば相手にしない 身も心も洗えぬところ性分か むさ苦しさにも優劣の見極めも必要か   〔 2025 年 5 月 29 日書き下ろし。全く違う二つの特性から見えてくる品格を考える〕

気力横溢

明確な目的があった 果たさねばならないミッションだった 能力は未知であるがゆえにチェレンジした 意志と裏打ちする熱情が湧き上がっていた 事は容易には成らぬと心して臨んだ 独り善がりに陥らぬよう心がけた 逸(はや)る心を抑制することが肝心だった 時に人は気力横溢の場に躍る   確かな信念があった 期待されたミッションだった 信望であるがゆえのチャレンジだった 使命と裏打ちする責務が背中を押した 事は根が深く慎重を要した 共通理解と協働に活路を見出した 状況を冷静に判断することが肝心だった 時に人は求められて気力横溢の場に立つ   強い憤りがあった 世の悪に抗うミッションだった 微力を承知のゆえのチャレンジだった 堪忍袋の緒は切れ言葉が汚れていった 事は治まることを知らず悪化する 侮蔑と憎悪が渦巻く世界が生まれた 無垢な健気さは微塵に打ち砕かれる 時に人は明日に立つ気力横溢の場を得る   優しさが生まれた 世に生まれた意味を問うミッションだった 寛容の心を棄てぬがゆえのチェレンジになる 事は残忍の限りを尽くす絶望にあった 虐げられようとも生命力を信じた 逆境に涙しながらも優しさに救われる 時に人は気力横溢の場に生きたいと切望する   ※気力:困難や障害に負けずに物事をやり通す強い精神力。気持ちの張り。気合。 ※横溢(おういつ)いっぱいにみなぎること。あふれ流れるほど盛んなこと。「気力―」   〔 2025 年 5 月 28 日書き下ろし。時代に弄ばれる子らの希望の火を決して消してはならない〕

つかむ

話の始めに興味を抱かす話題をふる 笑いをとるのも一手か これからの話に関心を持ってもらう一振り つかみを間違うと気が乗らない 白けてしまったまま本題に入る 盛り上がらない退屈の虫がわいてくる   話はストーリーが大事 ひとり芝居のような場ではなおさらだ 前触れの長いのは敬遠される 聴衆を巻き込みながら展開する 山場に入ったところで鷲づかみにできるか プロのプロたるゆえんはここにある   帰り際面白かったねとホールのドアを通る 感動という印象が残れば良しとする 過ぎた瞬間すぐに日常会話に戻る厳しい査定 その場限りの時空間を味わっただけのことだ つかみきれない中味と話術がお粗末だった 知らずにいれば話術の修練は終わる   語り手にはいつも修羅場だ つかみはいつも同じとは限らない 違う相手に話さねばならない 聴衆の醸し出す空気を一瞬のうちにつかむ 慣れがあれば付け込まれる 奢りがあれば嫌悪感をもたれる つかみ損ねれば恥辱を味わう   つかみを間違うと失態となることもある 同じテーマでも様相は常に流動的である 話術はウイットを効かすセンスが求められる 話術は巧みな感情表現も共感を刺激する 話術は音楽を奏でるような流れが心地よい 話術は時に覚醒を促す怖さを知らなくてはならない つかみどころを間違えると批判となる   〔 2025 年 5 月 26 日書き下ろし。人前で話すことの場数を踏んでもその厳しさからは逃れられない〕

怯懦する

おぞましさにおののく 殺傷するに躊躇しない 宣撫せずして根絶やしする 壊滅の命に狂った兵士が引き金を引く 現イスラエルへの抗議は反ユダヤで括られる 人間の皮を被った指導者と従う兵士は野獣と化す   民族の対立 宗教の対立 思想の対立 生きるか死ぬかの二択を叫ぶ 野獣は全てを飲み込む   卑劣さに憤怒する 米国の学生たちは反戦を訴えた 民主党寄りの大学に苛立ち札束で頬を打つ 反ユダヤと平然と噓を突きつけ思想と自由を弾圧する 滑稽な男は自国の大学の研究への制圧に弾みを付ける 科学も文化も人と教育を失い国力は致命的ダメージを受ける 支持する呆けた国民は愉快犯の如く理性を封印する 野獣は冷徹な無知さを隠さず際限なく曝け出す   目先の飴と鞭 脅迫と懐柔 利得と損失 反抗か服従かの二択を叫ぶ 野獣は神になりたいのだ ※怯懦(きょうだ)おくびょうなこと。おじおそれること。また,そのさま。    〔 2025 年 5 月 26 日書き下ろし。イスラエルの首相を務めたエフード・オルメルト氏が、ガザ攻撃を「戦争犯罪」であり、止めるべきだと訴えた(イスラエルのハアレツ紙に 5 月 22 日に掲載された寄稿から)。同調するアメリカのトランプ大統領はこれを好機ととらえ、大学の弾圧に利用する。愚劣な行動を容認する支持者や閣僚たちは、薄ら笑いを浮かべる〕  ※オルメルト氏は、「イスラエルの攻撃を、ジェノサイドや戦争犯罪と非難されることに以前は反論していた」としつつ、子どもや高齢者を含む民間人を大量虐殺し、支援物資の搬入を阻止する作戦を、単なる「巻き添え被害」と捉えることはもはやできない。「我々がガザで行っているのは絶滅戦争だ。無差別で、抑制されない、残虐な民間人殺害の犯罪だ」「こうなったのは特定の区域が予想外に統制できなくなったからでも、特定の部隊の戦闘員が暴走したからでもない。これは、政府による、故意で意図的、悪意を持ち、冷酷で無謀な政策の結果だ」「そう、我々のやっていることは戦争犯罪だ」(ハフポスト日本版 2025/05/26 )

悩ましい

起床時に起こるめまいやふらつき 耳鼻科でも脳神経外科でも原因は特定されず 内科を受診し血液検査や問診からも何も出ず 症状には個人差があり医療的にも追求は難しい 体調不良は天候との関係も見逃せない 季節の変わり目や気温の変動でも引き起こされる 医療的に診断するお天気外来というのもあるらしい 原因不明では対処法がないのが悩ましい   世の中の移り変わりが不確実 何をどうするのかさっぱり埒があかない つまらぬことに時間をかけて肝心なことが疎かになる 政治の世界の貧弱さはいまに始まったわけではない 右だ左だと言い合う政治観のなさが展望のなさに繋がる 確かなことが見通せない時代であるがゆえにバカを担ぐ アメリカの半数が屈辱を味わい国威を凋落させる 中国もロシアもイスラエルも禍根を次代に引き継ぐ 世界の混乱を牽引する者たちが悩ましい   メディアでは専門家と称する者たちがコメントする わかりきった話に権威をひけらかす TV ではどこの局でも同じような中味で溢れる 底の浅い笑いとしゃべりで低俗な文化を啓蒙する スキャンダルは他人の不幸と尻馬に乗る 企業はコマーシャルを垂れ流し莫大なスポーンサー料を払う 企業ポリシーよりも視聴率で稼ぐしかない 意図的に創られた虚空世界に弄ばされ民力を貶める ネットの情報の虚実すら見抜けぬままに知ったかぶりをする 問題が起これば教育のあり方が問われ多忙な教師に押しつけられる 社会的閉塞感の著しい学校への過信もまた悩ましい   思い通りにはならぬことに歯ぎしりする 努力もせずに成るものとおもう根拠がわからない 失敗経験をできるだけなくし褒めて育てよう 結果は自信過剰で自己顕示欲が目立って育った 挫折には丸っきり弱いが責任転嫁は優れてる ときに相手は我慢を強いられ分が悪い 指導すればセクハラパワハラと訴える 社会で育てることもままならぬことも悩ましい   〔 2025 年 5 月 25 日書き下ろし。悩ましいことばかりの世の中。無関心でいれば済むことも多いか。口を噤もう〕

沈思黙考する 

あがいてもどうにもならぬ それでもなお沈思する もがいてもなにもつかめぬ それでもなお黙考する   からんだ赤い糸がほどけない あきらめずなお沈思する きれそうな赤い糸にすがる しつこくもなお黙考する   なやましい縁がたちきれない すてきれずなお沈思する あさましい縁にくるしむ わかれられずなお黙考する   あつき情にくじける なさずしてなお沈思する ほとばしる情におぼれる みをやくもなお黙考する   みえぬ先をおそれる びくつくもなお沈思する えがけぬ先につまずく ふたたびの道になお黙考する   ※沈思黙考 ( ちんしもっこう ) 沈黙して深く物事を考えること   〔 2025 年 5 月 24 日書き下ろし。考えて考えてなお考えて、それでも答えが見えぬこの世界か〕  

誕生する

子どもが出来た 若すぎる? だからどうしたっていうんだい 金はなくても祝う人はたくさんいる   授かった尊い命だ 若すぎる? それが何かあるんかい 一緒に大人になるってことさ   やたら嬉しいね 若すぎる? だからこそいいんじゃない 青春に熱い愛を見つけたってことさ   みんなで祝ってあげようよ 若すぎる? そんな了見マジうっとうしい 泣き笑いの舞台の幕開けってことさ   すごく逞しいね 若すぎる? これが人生ドラマってもんだろう 二人で決めて生きるってことさ   〔 2025 年 5 月 24 日書き下ろし。若い子が出来ちゃった婚をする。祝詩を贈ろう〕

親しみが崩れる

親しみが生まれる 関心事の共通性 趣味趣向の類似性 価値観の近似性   親しみが湧く 共有の深化 共感の覚醒 共生の昂揚   親しみが冷える 認識の相違 利欲の表出 懐疑の自問   親しみを失う 固執の嫌悪 確執の苦渋 信頼の失墜   親しみが戻る 誤解の解消 相違の承認 寛容の発動   〔 2025 年 5 月 24 日書き下ろし。互いに必要とするも言動が亀裂を生む〕

人生に飢える

人生に飢える なぜ生まれたのか わたしを否定できぬ不可解   人生に飢える なぜ生きるのか わたしを理解できぬ慚愧   人生に飢える どう生きるのか わたしを生かすことへの渇望   人生に飢える なぜ人の道を求めるのか わたしが赦しを乞う慢心   人生に飢える なぜか乾きを覚える空蝉(うつせみ) わたしの虚無を覆う無常   人生に飢える どう人の道に立つのか わたしに許されない道理の裁き   人生に飢える なぜ人は愛を求めるのか わたしの存在理由の明証   人生に飢える 生まれたということ 生きるということ 宿命に抗うゆえの飢えを知る   人生に飢える わたしという存在の不思議 わたしという報命の不思議 天命に添うゆえの飢えに堪える   ※報命(ほうみょう)〘仏〙 前世の行為の報いとして決定されている現世の寿命。定命 (じょうみょう)。 ※明証(めいしょう)①はっきりと証拠をあげて示すこと。また,その証拠。②〘哲〙 ある判断がもつ直接的確実性。明晰判明な判断がもつ確実性。直証。「―的判断」   〔 2025 年 5 月 20 日書き下ろし。人生の飢えとは何かを問う〕

思惑が外れる

相手のいることだ 己の思うところに事は進まぬ 己の思うように事はならぬ 大言をするも何も変わらぬ   相手の意向を甘く見る 己が正しいと事を進める 己の考えが拒否される 壮言するも無力を味わう   相手とのバランスを欠く 己しかと傲慢に推し進める 己の面子が潰される 豪語するも恥を晒す   相手を突き放す 己に従順さを強要する 己に刃向かむバカもいる 決裂するも身の程を知る   相手にされない 己の判断を過信する 己の批判に激高する 反発するも屈辱しかない   相手に阻まれる 己の威光を傘に着る 己への恭順を示威する 交渉するも思惑は見事に外れる   〔 2025 年 5 月 21 日書き下ろし。停戦の調整など多難な交渉に商売人のセンスが挫折する。尻拭いは誰もしない〕

民草に

民草の 一茎となり つい果てし 心ならずも 世に未練なし   民草と 侮ることの 罪深し 本性を晒し 恥辱に塗れる   民草の 心あらずに 治めし世 いまだ年貢に 憎し苦しみ   民草が 利を求めれば 堕落せし 倫理なくば むき出す憎悪   民草の 一人ひとりに 思いあり 言葉一つに 真意分かれし   民草に 紛れし智慧を 生かせしは 憂ありて難 灯なりて明   民草の 信じる明日を 描けしか 民力なくば ただの空言   民草を 生きし身にこそ 人寄りて 真心尽くし 結びし絆   民草の おぼしき陰に 惹かれたる 民意集めて 栄え世づくり   〔 2025 年 5 月 21 日書き下ろし。大勢の国民を総した民草のひとりとしてのあり方を世に問わねばなるまい〕  

Happyendはあるか

嫌いな人に会いたくない 嫌いな事はしたくない 心がざわつくから   痛い目はあいたくない 見たくもないのは目をつむる 心がぐらつくから   Happyend は望めない   裏切られたくない 噓はつかれたくない 心が凍てつくから   憎んではいけない 妬んではいけない 心がさもしくなるから   Happyend は遠ざかる   抗ってはならない 憤ってはならない 心が張り裂けるから   愛してはならない 信じてはいけない 心が壊れるから   Happyend は起こらない   身を縮こませるしかない 息を凝らすしかない 心を捨てられないから   寡黙になるしかない 存在を消すしかない 心を温め直すから   Happyend は絵空事か   〔 2025 年 5 月 20 日書き下ろし。戦火や不遇に抗い生きる子らに Happyend は訪れるのか〕

巻き返す

負けるわけにはいかない 劣勢を認めぬ 認めれば瀕する 勝つまではと鼓舞する 巻き返しは容易ではない   兵士も市民も騙すことに徹する 累々と屍と瓦礫が積み上がる 泣き崩れる痛ましさを冷酷に無視する 勝てば全てが報われると幻想を見る 巻き返しにはさらなる犠牲を強いる   世界中の涙は乾いた心の砂漠に流れる 殺された者は涙さえ流せなかった 苦しみと怒りに歪んだ顔が砂塵に塗れる 戦場には正義も大義もなく汚れた愛国心が捨てられる 巻き返せと支配者の強欲な檄が飛ぶ   世界は軍事力の均衡が破れ強国がエゴをむき出す 仁智なく己の醜さに向き合うことなく称賛を信じる 迎合する者たちは安全地帯で欲をかく 経済すら武器にする傲慢な手法も資本主義の弊害か 巻き返すは元の巻いた状態に戻すとあるがそれはない   侵略された国は巻き返すのは並大抵ではない 劣勢に陥っている国力は消耗戦に勝機を失う 大国は核で脅しつつ周辺国の仲間割れを懐柔する さらなる憎悪感と失望感の均衡が戦争を維持する 巻き返すには敵国の慟哭の母の涙を集めねばならない   〔 2025 年 5 月 19 日書き下ろし。ロシアの侵犯は世界を震撼させたが、戦火は飛び火しいまも涙は流れる〕  

知性と哲学

知識の所有を誇る 物知りと言う それだけのこと 知ってるだけでそれ以上ではない   高学歴の所有を誇る 勉強が出来たと言う それだけのこと 鼻にかければ敬意は薄れる   財産の所有を誇る 金持ちという それだけのこと 奢れば心貧しくなる   地位の所有を誇る 特別という それだけのこと 偉ぶるだけで狡さが透ける   持っているだけで誇る 優れているという それだけのこと 見事に勘違いを起こす   信念を秘める 尽くすという それだけのこと 称え求めず真を求める   尊敬の念を抱く 話し方に謙虚な人柄を見る それだけのこと 知性が自ずからにじみ出る   世と人のあり方を問う 話すことに含蓄を忍ばせる それだけのこと 共感を生み心根を太くする   克己に精進する 柔和な表情に慈愛を受ける それだけのこと 哲学する知性がその人となる   〔 2025 年 5 月 18 日書き下ろし。知性も哲学すら感じぬ支配層が精神世界を貧しくする〕

手が止まる

この2日間 詩作の手が止まった 詩編は頓挫したまま放置された   1つは幼子の泣き顔にフォーカスした なぜか情け容赦なく命を奪われる子の顔が浮かぶ 明るい情景を想起する詩は挫折した   2つは不確実な時代に生きることを模索した なぜか書き出すと焦点ボケで思考が停止した 不確実さは詩作そのものだった   3つはウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領の逝去だった  なぜか哀悼の言葉につまずき深い悲哀が沈黙させた 彼の生き方に感銘して大学で講義したことを懐かしんだ   依頼されていた原稿は今朝添削を終えた 書き出してから 10 日間もかかってしまった 締め切りに追われたせいだと弁解する   思索の感度が鈍ってきたのか 言葉に詰まり思索を中断する 詭弁を弄することへの反動か   いまの心境を書き残す テーマと向き合うことへの躊躇(ためら)いが原因だ ここからしかリスタートはない   〔 2025 年 5 月 18 日書き下ろし。詩編への愛着を感じながらも、書くことに躊躇する自分に戸惑う〕

角逐する

人はなぜ競い合うのか 技術を磨く合う お互いに敬意を払い合う 伝統に裏打ちされさらに伝統を超える 緻密な図柄や大胆な造形 色使いの繊細さや使い勝手に優れた強靭さ 機能美の美しさを追求する競い合いは終わらない 切磋琢磨して互いを高め合う愚直な姿もいい 芸術性まで高めた技量に感嘆の声を上げる 文化は暮らしを支え豊かに潤す   人はなぜ勝つことにこだわるか 陸上競技は人類の身体能力の極限を競う 高い目標を掲げたゆまぬ鍛練を人知れず続ける 記録を破り未知なる世界を見ることに精進する 心折れそうな時も己を鼓舞し記録に挑む ライバルが存在することも大いに刺激されるだろう 鍛えられた心身を最大限発揮して記録を塗り替える 一点に集中する精神とは己自身に克つことか 勝てば称賛されるが記録は新たな目標となる   人はなぜ醜く競い合うのか 優れているという承認欲求からか 自尊心と優越感を満たす 利益と地位を獲得する 権威と支配欲を強める 優劣を決めるのはどんな基準なのか 知的能力の是非は学歴偏重に現れる 身体能力の是非はスポーツ偏重に表れる 経済的格差は貧困を強いる 民族的蔑視は差別を容認する 政治的権力は軍事力に依存する   角逐する世界はいまも優劣の格差に精神を病む ※角逐(かくちく)①力を比べ合うこと。②勝とうとしてお互いに競い合うこと。   〔 2025 年 5 月 15 日書き下ろし。競い合う根底に資本主義の悪しき儲け主義が君臨する〕

見た目以上に

見た目で判断出来るか 突飛な格好で顰蹙(ひんしゅく)を買う ケバケバしい化粧でアピールする ファッションの世界は見た目で勝負する 奇想天外な発想をカタチにして発信する そのスタイルに刺激され共感し広まる 趣向の問題をあげつらうこともない 自己主張のスタイルに過敏に反応することもない 流行を創り出すトップランナーかも知れない そこに見えない思想や感覚を求めるのがいい 生きるという強いメッセージを表現しているのだと   見た目の印象で判断する 過去に出会った人から学ぶ分別か 嫌なおもいをされたなら距離を置く 用心して注意深く観察する 見た目によらず人柄がいい人だと気を許す 見た目が良さそうと思うと構えが緩む 付け込まれて誤ることも多々ある あの人に限ってと擁護するのは保身のためか 人を見る目のなさを内心悔やむ 騙すには格好の餌になる印象操作か 生きるというのは自分に都合の良い見方しかしない   見た目のギャップから学ぶ 思い込みからは誤解が生まれ失望も味わう 淡い期待をのぞかすのも人の良さが出る 人を見る目をいかに鍛えるのか 出会いは見た目から始まる 付き合いとは繋がりたいという欲求から生まれる 互いに胸襟を開く信頼の糸を見つけなければならない 人情は厄介で惚れると意固地になるのが怖い 利害関係があれば余計に冷静に距離感を取るしかない   なぜこの人かという問いかけを心がけたい 見た目以上に素晴らしい人との出会いは感動だ 眼力を信じたばかりにバカを見るのもが人生だ 己もこうして人を見極める目を鍛えられてゆく 人生とはこうして人のつながりが淘汰されてゆく過程である   〔 2025 年 5 月 14 日書き下ろし。見た目に惑わされることが不幸を呼び込む〕

生きている限り

生きている限り何かを為す 何かするしかない 何もしないではいられない 何をするかがそもそもだ 己のためなら心が強い 人のためなら心が熱い 為しえぬ後は心が残る 為しえた後は心が満ちる   生きている限り何かを感じる  何かに動かされる 何かが気にかかる 何をするかがそもそもだ 己の志が心を鍛える    人の情けが心に響く 実力がなければ心が萎える 実力があれば心は立つ   生きている限り何かを求める 何かを問い続ける 何かは自分らしくか 何をするかがそもそもだ 己の存在が心と重なる 人の存在が心を真とする 求めなければ心は歪む 求めてこそ心が己を刻む   生きている限り何かを残す 何かを意識するわけではない 何かは最期までわからない 何かをするかがそもそもだ 己の品行が心を表す 人の評価が心を照らす 世に残さずとも心は穏やかだ 世に残せば果たして心に残るか   〔 2025 年 5 月 12 日書き下ろし。生きている限り人は何かを残す。何を残すのかは結果でしかない〕

容赦ない指導

容赦ない理不尽な仕打ちに耐える 罵倒する声に身が縮こまる 指導という名の仕置きに従う   能力のない者は支配欲を暴力で満たす 知的判断の低い者は強要手段しかない 指導という名の大義名分をかざす   意に反しても指導を受け入れる 評判とは裏腹な品格を見せられる 指導という名の無恥に打たれる   逆らう者には執拗に悪態を続ける 自己陶酔に溺れる者は倫理を捨てる 指導という名の武器を駆使する   逃げられぬと思い込み諦める 自己否定を膨らませて自責に苦しむ 指導という名のしごきに限界を感じる   何度も注意をされようと自我を通す 過去の実績だけで妄信させる 指導という名の食い扶にすがる   報復を畏れて辞めることが出来ない 教師の面子を潰したと逆ギレされる 指導という名の裏の顔が見えてくる   個に合わせたメニューは持たない 忠実な僕(しもべ)であることを要求する 指導という名の優越感を腹一杯味わう   問題が発覚しても安泰である 賠償請求は税金で賄われ処分は寛大に異動で処理される 指導という名の悪行はいまもどこかで子どもをいたぶる   〔 2025 年 5 月 11 日書き下ろし。指導死が明らかにされるまで、時間がかかる。処分が下されるまで、当該教師は教壇に立つ。指導に問題があると指摘されても、外さぬ学校もある。教室も部活動も教師がいたぶる場にすることは決して許されない〕 ※ 6 年前の、 2019 年 4 月 18 日の夕方、熊本市立中学校の 1 年生の男子生徒、マサルくん(仮名、当時 13 歳)が自宅マンションから転落し、敷地内で倒れているのが発見された。 搬送先の病院で死亡が確認され、警察は自殺と断定。背景には小学校時代の担任、 X 教諭による不適切な指導があった。当時学校は担任替えを求める保護者の声を無視した。教育委員会は調査を開始し、約 1 年後の 2020 年 3 月 30 日に調査報告書をまとめ、 X 教諭の体罰 6 件、暴言 1 件、不適切な指導 26 件、保護者や教職員への不適切な対応 7 件、計 40 件を認定、マサル...

揺りかごを揺らせ

安らぎの揺りかごを揺らせ 母の乳房から離された 目はぬくもりを訴える時空間 求める手は空を切る   優しく揺りかごを揺らせ 小さな手が空を握る 気持ち良さそうに空を舞う 夢心地の幸せな時空間 のぞき込まれた瞬間笑みを浮かべる   静かに揺りかごを揺らせ 眠りに落ちまいと抗う 子守歌が優しく包む 夢見る前の幸せな時空間 目を閉じた瞬間夢路を駈ける   寝付くまで揺りかごを揺らせ 乳臭い匂いを纏う 愛しさが頬を撫でる 寝顔に魅入られる時空間 生かされることの幸せを身に宿す   〔 2025 年 5 月 13 日書き下ろし。揺りかごで眠りにつく乳飲み子と母を描く〕  

是非曲直

善悪の境目が曖昧になる 倫理観が損なわれ虚言に惑わされる 悪と知りながら加担し虚勢を張る 善は悪に侵略され胸中に幽門される 善なき世に蔓延る悪臭に嗅覚は麻痺する   是非曲直の判断は揺れて曖昧となる 過ちに気づけば時を失い自戒する 信ずるに足らぬ者に踊らされ苦渋を舐める 致命的な現状を打開できず忍従する 世にはばかる不義と不実に抗う気力も失せる   正邪の境目は曖昧になる 物事の是非は理に疎く利に走る 正義は斥(しりぞ)けられ不正に目をつむる 邪悪な心がもたげて卑劣さが際立つ 世に正義を主張しつつ邪心にすり替える   是非曲直の判断の基軸が折れる 揺り戻しの瞬間は歴史に刻まれる 邪悪な支配は打倒の憂き目に遭う 繰り返される攻防の果てに正義の芽生えを見る 世に無名の者たちが光明に導かれて邪悪を叩く   ※是非曲直(ぜひきょくちょく)物事の善悪や正邪。理非曲直。   〔 2025 年 5 月 12 日書き下ろし。世の不正は尽きることはない。歴史を学ぶこともなく繰り返し邪悪を呼び込む。いまの世にある危機は何かを問う〕  

箍が緩む

箍(たが)が緩む 緊張が緩めばリラックスできる 気力の回復にリセットするスイッチとなる 事に臨んで緩めば致命傷となる 持てる力を発揮できずに自滅する 箍を締める緩めるのタイミングを間違ってはならない   箍を外す 社会的規範は処罰されない限りかいくぐる 意識的にルールを無視するのは防ぎようがない 世間の暗黙の慣習もいとも簡単に破られる 自由気ままに暮らすのは確かに面白い ハチャメチャに羽目を外すのは快感だ ルールは自分だと豪語するのも壮快だ 傲岸な態度はさらに磨きをかけられる 外した箍が誰かのところに飛んでいった 誰かが迷惑するのを嘲笑う 箍を締めるには時を失った   箍の緩んだ組織は信用を失う ダレた規律は求心力を失う 繰り返される失態は取り返しが付かない 勘違いした無能な者が無責任な言動を繰り返す 周りに批判されようと開き直り無恥を晒す 箍を締めるには改悛の情がなければ切り捨てるしかない   箍は効かなくなっているのか 世の桶そのものがすでに破損しているのか 箍そのものが果たしてあるのか 世の桶に渦巻く乱れは収拾が付かないのか   〔 2025 年 5 月 11 日書き下ろし。箍をどう見るのかで多様な解釈が生まれる。自由の享受は社会との関係性に立つが、その社会が箍を締められずにある〕

ええじゃないか

何をほざこうが 何をしようが ええじゃないか ええじゃないか   人生一回限りの出たとこ勝負 面白がってらええじゃないか   どんなに噓をつこうと どんなにだまそうと ええじゃないか ええじゃないか   バカとハサミはつかいよう 好き放題すりゃええじゃないか   どうせなんにも変わらない どうせしがないだけじゃない ええじゃないか ええじゃないか   世の中みんなしょうもない やけくそでもええじゃないか   どうえらそうにされようとも どううとんじられようとも ええじゃないか ええじゃないか   裸ひとつで生まれたいのち 死ぬのはみんな同じでええじゃないか   〔 2025 年 5 月 10 日書き下ろし。幕末に伊勢神宮のお札を撒いて呆けた運動が起こった。ええじゃないかとかけ声に合わせて踊った。そんな絵を時勢に見る〕