ある男の物語
大祖国戦争を美しく飾りたて信奉した男 プロパガンダで無駄死にを粉飾した男 侵略戦争へと駆り出し亡国の岐路に立たせた男 士気を失い死路へ旅立ちを約束された男たち 祖国奪還の欺瞞を見抜けず背後から狙われる男たち 帰還しても PTSD に冒され日常に回帰できない男たち 第二次世界大戦で 2000 万人が犠牲となった大祖国戦争 語り継がれてきた美しき物語 心地よい英雄的な物語 痛ましい悲劇的な物語 恐ろしい独裁の物語 ( 引用『同士少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬 ) いま新たな物語が血に塗られてゆく ウクライナへの進攻を正当化する物語 大祖国戦争の敵味方が反転する物語 スターリンの粛清の歴史を繰り返す物語 結末は 1 億 4600 余万人が命の危機に瀕する物語 男の夢路の果てに見える風景 倒れた墓標に刻まれた「英雄」 [2023 年 9 月 11 日書き下ろし。いま『同士少女よ、敵を撃て』を読み終えた。旧ソ連をウクライナに、旧ドイツをロシアに置き換えて読むと、いまの戦況がかぶってくる ]