MEMO
小説を読む
手元には常にメモ帳があった
漢字ひとつ
単語ひとつ
センテンスの一節
書き写す
習慣になった
闇雲に読めなくなった
貪欲にメモする
単純に楽しめなくなった
付箋を貼っておく
依頼された原稿はなくなった
ただ続ける詩作に引っかかった
殴り書きにされたメモ
時に読みにくい文字となった
時に文章の意味のない断片だった
時に顧みられることもないものになった
閃(ひらめ)く
想い出したようにメモが浮かぶ
詩文の手がかりの言葉が踊る
手探るように思いつきをキーボードに打つ
詩文の体裁が整ってくる
メモした言葉の世界は消えていく
思索の世界は新しい言葉で埋まる
いま感じている心模様を言葉が埋める
メモは生かされつつ静かに退場した
メモする
想像力を刺激する男のもがき
メモする
創造力を枯渇した男のあがき
〔2022年5月2日書き下ろし。コロナ禍の暮らしの中で言葉にしがみつく自分を見つめている〕