詩劇「私がわたしを生きる」5
[導きの声]
風の中で身をふるわせた
風の中で膝を抱いた
【時を告げる】
風は見ていた
私の悪しき本心はわたし
私の渦巻く欲望はわたし
私の良心もわたし
風は見抜いていた
私の気取って取りなすわたしを
私の偽善ぶって取り入るわたしを
私の虚勢をはって取りつくわたしを
風に見すかれた
わたしが空っぽな人間であることを
わたしが生きることに執着していることを
わたしが人並み以上に貪欲あることを
風は時を運んだ
わたしとの葛藤には終わりがないことを
わたしとの妥協もありうることを
わたしとの共感が私を取り戻すことを
風は時を告げた
私がわたしを世間で生かす時を告げた
私がわたしを時代に生きる時を告げた
私のわたしが生かされる時を告げた
[2022年12月5日書き下ろし。自己との葛藤は生涯続く。その時代に生かされる時を告げる]