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11月, 2023の投稿を表示しています

なまる身体

2 週間ほど腰に負担がかかった ルーティーンの運動を休止した しばらく無理をしなかった 痛み止めでしのいだ   腰の調子が回復しだした矢先 就寝中に猛烈な痛みに襲われた 右ふくらはぎに肉離れを起こした 動くことも容易でない暗闇の中 痛み止めの塗り薬を手にした 素早く痛みを堪えてすり込む 痛みが去るまでの時間が長く感じた   机の引き出しから伸縮性の包帯を探した サポーターの代用に患部に巻いた 手元の iPad を見ると午前 3 時前だった 痛みがやわらいだ頃睡魔がやってきた   朝起き上がると鋭い痛みが再び走った 朝食後痛み止めと筋肉をほごす薬を飲む 患部に塗り薬をすり込み包帯を巻く 体調を維持するルーティーンが阻まれた 予想だにしない悪循環に意欲が失せたた   老いとは痛い目にあいながら慣れていくことか 老いとは思うようにならない身体を引き受けることか 老いとはダメージを受けつつ体力を奪われていくことか 老いとは不意打ちを喰らいながら生きている確かめなのか   空元気を出して身を装う 身の程を知りつつ身を慎む 自由にならぬ身を庇(かば)う 薬に依存せぬよう身を守る 痛みを忘れるよう身を粉にする   結局はじっとしてられない性分が勝るのか 必然的帰結を身に纏(まと)う   [2023 年 11 月 29 日書き下ろし。強烈な痛みだった。安眠状態でまさかの肉離れとは、想像を絶する。それでもなお机上にへばりついている自分を笑う ]

無用の用

無用のようで何か用を為しているのがいい 無視された存在を凝視せよ   無駄のようで何か用を足しているのがいい もっともらしい効率化を凝視せよ   無益のようで何かの糧になるがいい 空々しい無償を凝視せよ   無為のようで何か仕掛けるのがいい 作り笑いの傍観を凝視せよ   無縁のようで何かにつながるのがいい 血縁の悪弊を凝視せよ   無逸のようで何かに心向けるのがいい 裏でむさぼる輩を凝視せよ   無価のようで何かに代えがたいのがいい 偽りの愛に惑わされぬよう凝視せよ   無芸のようで何か十八番(おはこ)があるのがいい 思いがけず喜ばす技を凝視せよ   無情にようで何か心に秘めるのがいい 情を売る厚かましさを凝視せよ   無骨のようで何かぬくもるのがいい 馴れ馴れしい対応を凝視せよ   無心のようで何かを感じるのもいい たぎる欲望を凝視せよ   無言のようで何かを伝えるのがいい 有言に見る害ある企みを凝視せよ   無限のようで何か引っかかるのがいい 思索する宇宙の限界を凝視せよ   無常であるがゆえに何かを残すのがいい 無上の愛を求める己を凝視せよ   ※無逸(むいつ)楽しむことがない。安楽をむさぼらない。  無価(むか)価を付けられないほど貴重なこと。   [2023 年 11 月 29 日書き下ろし。人生に無駄はない。些細なことも無駄にはできぬ。無心になることも無為にはできぬ未熟さを知る ]

捨てがたい選別作業

詩の分量は半端ない 何度選別してもなおはばける さらなる選択を迫られた   94 編の詩編 80 枚を遙かに超えた 107 枚 30 枚ほど削らねばならなくなった   印刷費も高騰している 必要度の強弱を判断するしかない その基準の設定が難しい   担当者とのやりとりを終えた夜 燗酒を飲んで寝付いた 夜中突然閃いた   できるだけ残す方法を選択をした 詩を 2 段組にレイアウトする あるいは囲み枠に挿入する   もぞもぞと起き出した レイアウトに苦しみながら作業する 統一された構成のバランスは狂いだす   それでもなお一編でも残したい思いが勝る 文言の長短も考慮しながら進める なかなか頁数が思ったよりも減らない   ここで削除する判断を強いられた 10 編の詩が消えていった 84 編の詩が残った   今朝確認作業をした 大幅に改編されたテキストの草案 無事担当者に送り込んだ   新たな装いをほどこした 新たな人との出会いを待つ 新たな着想は常に選択の労を伴う   [2023 年 11 月 28 日書き下ろし。午前中いっぱい新任の民生委員児童委員との研修テキストの詰めの編纂作業に時間を割いた。面白い紙面構成になった。限定された頁に、まずは読んでもらいたい詩を挿入できたことを良しとする ]

ミスをする

チェック機能が鈍くなる 抜けたことも知らずに草稿を上げる 外せない必要な詩だった   カテゴリー化された枠の中に詩編を抜き出した そこで気づくべきだった どんくさかった   編纂した詩を照らし合わせた 過去のテキストからコロナ禍の色濃く残るものを割愛する ようやくそこで気がついた   すぐに『きょうという日』を挿入した 草稿の構成に影響が及ぶ 手直しを終えた   提出した草稿の改訂版を送った イメージしたものが出来上がったと思い込んだ ミスする自分に呆れた   チェック機能が働かなかった ただ何か不安を感じたのだろう 思い込みをようやく除いた   チェックしようというのは自己責任 チェックしなければというのは自己不安 チェックできなければ自己不信   [2023 年 11 月 27 日書き下ろし。当然選んだと思い込んだ。この緩みが不安となった。間に合って良かった。これからはきっとどんくささが際立ってくる ]

わたしのまちのことだから

わたしのまちのことだから わたしたちで考える わたしの身近なことだから わたしたちで悩む わたしの明日のことだから わたしたちが動く   わたしたちのまちのことだから わたしも何かしなきゃ わたしたちに身近なことだから わたしも何かできそう わたしたちの明日のことだから わたしも何とかしたい   わたしがあなたに 何が出来るのかを一緒に考える あなたがわたしに 何が出来るのかを一緒に考える わたしもあなたも わたしたちのまちで出来ることがある   わたしがあなたと 手を取り合えばきっと何かが生まれる わたしがあなたに 教えてもらえばきっと何かが変わる わたしもあなたも わたしたちのまちをきっとよくできる   わたしがあなたと このまちで出会ったことに感謝します あなたがわたしに このまちをよりよくしたいと語ってくれました あたしもあなたとみんなで 福祉でまちづくりを宣言します 『 2023 年 11 月 26 日書き下ろし。昨日月形町で「月形町福祉でまちづくり推進フォーラム」が開催され、 60 数名の町民が集まりワークショップを通してボランティアや有償性について論議した。心を静かに揺さぶるおもいが会場を満たした』

初積雪の朝

昨日の夕方から降り出した 車の屋根の初積雪は五センチほどか つかの間の晴れ間の中知人は車の雪を払う   朝一番で電話が鳴った 月形で今日は午後から仕事の予定 天気予報は一日雪マーク 途中吹雪いるので昼前に送迎車を出すという 快諾した 落日の闇の中の帰り道は運転に自信がなくなった 視力が心もとない ましてやホワイトアウトが起これば最悪だ 路肩を示す表示灯を頼りに何度危うい思いをしたことか   送迎する職員も心配になる 今日一日無事に切り抜けたい 延期できぬ事業はこうして試練に立たされる 参加する月形の町民の方々にも感謝しつつ 福祉でまちづくりを支える熱い思いで雪を吹き飛ばそう 豪雪地帯の月形町民の心意気を見せてくれるだろう   令和 5 年度月形町福祉でまちづくり推進フォーラムが始まる テーマは「いまどきのボランティアの魅力を語ろう」 あずましプランを推進する町民ボランティアのあり方を考える 社協事務局の若い子らが頑張って準備している そのおもいを乗せて送迎車がやってくる   [2023 年 11 月 25 日書き下ろし。雪降るタイミングが悪い。それでも間隙を突いて送迎車を出す心意気が嬉しい。感謝のみである。安全な道行きであることとフォーラムの盛会を願う ]  

鴨の受難

新蕎麦の季節 月例の蕎麦ランチ 仲間六人といつものメニュー 鴨南蛮せいろ大盛り 手打ちの新蕎麦を鴨と葱の汁に付ける 温かい汁に冷たい蕎麦の絶妙なハーモニー 喉を滑る蕎麦に鴨汁が追う 柔らかに鴨肉がしばし口内に留まる   食べ終わって一枚の断り書きを持ってきた 鴨南蛮が打ち止めとなる告知だった ここ数年毎月食べてきたメニューの差し止め 一同色めきだった   今夏の猛暑で鴨の生育が害された 市場に鴨肉が十分に供給されない緊急事態だった 鴨の受難の影響がここに表れるとは予想だしなかった しばし鴨南蛮せいろ大盛りとはお別れの日となった 問題は何を次にセレクトするのか 悩ましい選択に迷う日は年明けとなる   鴨よ暑さに強くなれ! いや待てよ この言葉鴨にされぱなしの 俺たちに当てつけたのか   [2023 年 11 月 24 日書き下ろし。といいうわけで、シンプルに蕎麦の味を楽しむことにするか。ちょっと待てと政治家の鴨にされている我が身を鑑みた ]

移動は生活権だ

団塊の世代は割が合わない 介護保険料は 40 歳から払い続ける 60 歳からの年金は満額支給を延ばされた 医療保険も 75 歳以上 1 割負担が 2 割になった   札幌市は 7 万円までの敬老パス優待制度を廃止する 70 歳になれば地下鉄もバスも低額負担で利用できた 未利用者が 56.8 %で今後高齢者が増えれば財源が増える   パスは 2 万円上限のポイント制にする 歩け歩けと運動させて高齢者の健康促進を促す 70 歳を超えると身体機能の劣化はなってみなきゃ分からない 長く歩くのがしんどいからバスや地下鉄を利用する 不定期な仕事で通勤する人もいる 街に出れば財布のひもも少しは緩む 遠方の友人とも会っておしゃべりできる 専門病院への通院もこのパスでどれだけ助かっていることか 足を引きずっても腰を曲げても移動する交通手段は生活権だ 老後の楽しみの自由に出歩ける環境作りこそ重要な政策だ 介護保険も使わず納めるだけの人たちの思いを受け止めよ   たった 2 週間の冬期五輪に血眼上げて誘致を叫んだその口だ 潤うのは観光と建築業者と相場は決まっている いまさらネット世界で国際都市札幌を売る手段には事欠かない 五輪程度で景気が上向くなど片腹痛い 誘致運動にどれだけつぎ込み IOC を接待したのか 東京五輪でマラソンを札幌に持ってきたバッハの笑いが鬱陶しい バツの悪い数字は出さぬだろう   敬老パス廃止のアイディアを出した職員は上司に褒められた 笛吹けど踊らず 老人は姑息な健康作りに素直に従うとでもいうのかい いやいや それを見込んでやる人だけが恩恵を受けるシステムづくり それで 50 億の経費削減を図ろうという魂胆は見え見え 普段の暮らしにあるささやかな外出を妨害する悪制度 煩雑なポイント制度で職員の仕事も面倒になる アプリの開発費や実際に運用すれば人手と時間と経費がかかる その積算は現行制度よりも果たしていくら縮減されるのか はっきり出してごらん   行政は本気で見直しをかけ経費削減をしているのか そこに高齢者の移動する生活権が全く無視されるのはなぜか 団塊...

編纂作業の心地よい疲れ

テキストの改編をする コロナ禍後を背景に活動する民生委員の応援詩   コロナ禍でも懸命に汗をかきながら動いた方々 新たな暮らしの日常性に適応しつつ動く方々 With 感染症の時代に即して動く方々   新たに委嘱された方々の研修テキスト 来春 1 月から始まる研修のための改訂作業 コロナ禍での活動を前提とした意識の変容 余儀なくされた大幅な改編作業   構想も大胆に組み替えた 「わたし」という意思ある存在をクローズアップする 「わたし」と「他人(ひと)」をつなぎ意識させる 『わたし』と「他人事」に関わることを意思させる   構築したカテゴリーの範疇に詩編を組み込んだ 120 編もの詩編に溢れた 経費等を換算して縮小を試みる 難しいことをやさしく表現されているか やさしいことに面白いと興味や関心を示してくれるか おもしろいことに深いメッセージが含まれているか 井上ひさしの言葉を借りて取捨選択に入る   昨年のテキストの詩編は 61 編とシナリオ 3 本だった ただテキスト外で紹介した自作の詩が 5 、 6 本ある 85 編くらいで抑えられれば御の字と考えた 昨年の改定から 1 年で書いた詩編は 400 を数える その中から 33 編を新たに選んだ またそれ以前の詩編から置き替えた詩もある 原案はシナリオ 4 本と詩 93 編になった 来週から検討作業に入る   必要されるメッセージ力を持つ詩は何か 自身と向き合うときにフィットする詩は何か 自身のおもいを確かめることができる詩は何か 自ら意欲を高め行動に向うエネルギーを与える詩は何か   軽い疲労感と充実感に満たされながら 昨夜道民児連の担当者に草稿を添付した 詩集『こころ耕し こころ紡ぐ 〈わたし〉になる』   [2023 年 11 月 23 日書き下ろし。徹夜もどきで久しぶりに集中した。この疲れ方は後には残らないようだ。人は全く身勝手なもんだ ]  

疲労との闘い

疲労感ではない 確実に疲労している 疲労感なら気分次第だ 確実に回復が遅い   何かをすれば負担がかかる やり遂げるしか終わりはない 疲労の蓄積は明白だ 何かがいつも背中を押す 取り組まなければ気が済まない 疲労の根源を自覚する   やらないで後悔はしたくない 避けられない性分からの疲労 心地よい疲労感は単純な疲労となった やり終わって後悔はしない 体力と気力のせめぎ合いからの疲労 やり終えた疲労感はしんどい疲労となった   やるべき事を抱えて心を責っ付く 回復不能な身体は慣らされていく 途切れた集中力は疲労を無視する 〆切で追い詰めて疲労を騙す   老いるとは疲労との対立 老いるのは疲労との闘争 老いたのは疲労との妥協   [2023 年 11 月 21 日書き下ろし。相応の年齢が疲労の回復を期待せず、いまの状態を維持することを優先する ]  

こころのエネルギー

あなたの心が喜ぶことって何だろう あなたの心がドキドキする瞬間に あなたを変える心の栄養が生まれる あなたの心のエネルギーとなって あなたは素敵な人になってゆく   こうしたいという気持ちが生まれたら あなたの心を強くする栄養になる こうしてあげたいという気持ちが生まれたら あなたの心をやさしくする栄養になる   許してはいけないという気持ちが生まれたら あなたの心を正し邪悪から守る栄養となる 成し遂げたいという気持ちが生まれたら あなたの心をたくましくする栄養になる   考え方をわかろうとする気持ちが生まれたら あなたの心がしなやかになる栄養となる するかしないか悩む気持ちが生まれたら あなたの心がしたたかになる栄養となる   こうありたいと願う気持ちが生まれたら あなたの心は世の中を熱くする栄養となる こうしてみたいと望む気持ちが生まれたら あなたの心は世が求める人へと導く栄養にする こうしようと強い気持ちが生まれたら あなたの心は世の力になるエネルギーに変わる   [2023 年 11 月 21 日書き下ろし。( 481 )『心の栄養』の改訂版。子ども向けから大人向けに書き換えた。誰でも世の中の力になるエネルギーを持っている。いかに放出するのかで存在価値が変わる ]

不本意ながら

代表人は苦笑する 真意とは違っても正しいと言い放つ 思わせぶりに焦点を外(ずら)す 不本意ながら禍根を残す   代書人は苦労する 真意とはかけ離れた邪論を記す 欺瞞の装飾に表現力が試される 不本意でも意向を尊重しなければならない   代理人は苦渋する 真意とは裏腹に擁護する 批判をかわせば良しとする 不本意でも騙さなくてはならない   代弁人は苦悩する 真意とは真逆に葛藤する 抑揚を抑えた声で答弁する 不本意を悟られてはならない   代行人は苦悶する 真意とは言えぬ弁解に終始する 制限された権限に難航する 不本意から隠蔽しなければならない   代替(だいたい)人は苦言する 真意を疎かにした罪を問う 自己保身に厳しい非難を浴びせる 不本意ながら彼らは自認するしかない   [2023 年 11 月 20 日書き下ろし。ビックモーター、日大、宝塚、政治家など詭弁と責任回避が目に余る事態が続く。代替人になろう ]

もがく

失地挽回 願わくば思惑通りにいきたい 口攻不発 不実の言葉に踊る者あらず 責任軽視 口先の謝罪は怒りを招く   失墜陥落 信なくば思い通りにならず   顔面蒼白 手当たり次第の愚策に縛られる 支持拒否 神輿の担ぎ手は離反する 感覚音痴 問題意識のズレの修正能力が欠如する 判断遅延 固執するだけ時間の無駄と知るべし   成果皆無 言うだけでは誰でもを証明する 統制無力 説明責任負わずに押しつけ株下がる 裁量小器 己を過大評価した結末は哀れ 孤立無援 いまに至りて降参のサインしかない   現実逃避 過信すればするほどどつぼにはまる 是正誤認 異次元の事態に対応不応で地団駄を踏む 諫言皆無 所在なく流れるままに自壊する 世論拒否 数字に謙虚にならず墓穴を掘る   [2023 年 11 月 19 日書き下ろし。 11 月毎日新聞世論調査の結果は悲惨。国民の 4 分の 3 は支持しない。何をしても何を言っても信じるに値せず。現実を受容せよ ]

オレではない

自覚なき殺人 無辜の命が奪ったのはオレではない 悔恨なき殺人 機械を止めたのはオレではない 道義なき殺人 保育器を放置したのはオレではない   報復の結末 停電させたのはオレではない 復讐の応酬 卑劣なことをしたのはオレではない 懲罰なき犯罪 巣窟を制圧しただけでオレではない   病院は治療も手術もできぬ 誕生して声も上げられず 生命維持装置の電源が止まり 無垢なる命は死にむかう 恐怖と絶望を与えたのはオレのせいじゃない   感情を抑え服従する 無垢なる子への執着は拒否する 戦意は殺戮に集中する 無防備な子らへ攻撃に非難はあたらない 非戦闘員もテロリストも判別できぬ ガザの子どもの犠牲はオレのせいじゃない   オレは神に誓って正義のために戦う オレは家族と国を守るために戦う オレは俺の手で子どもを殺してはいない オレは戦争犯罪人ではない 相手に非があり決してオレではない   手足を失った子を直視できるか!   [2023 年 11 月 19 日書き下ろし。国際機関の無力さを知りつつ、子どもを殺戮する者たちは責任を誰も取らずにこの先平然の生きるのか。間接でも殺人者に変わりはない ]

馬が二頭いた

二頭の馬はロープ 1 本でつながれていた 緩んだロープの先には餌があった 目の前の餌を食べるに十分だった だんだん餌は食べずらくなってゆく 二頭はついには綱引きを始めた 力が均衡している なかなかなか餌には届かない お互い餌に執着する余り綱引きするしかなかった   ふと頭をよぎった こうしていては一向に食べられない ならばここはひとつ競うのはやめて協力しよう 対立していた二頭は仲良く片方の餌を食(は)んだ なくなるともう一方の餌を食んだ めでたしめでたし   ??? 対立から協調 !? キナくさい匂いがした   力のあるもの同士が餌を奪い合うより 協力してさらなる餌を奪う方がいい 資本主義という魔物はこうして世界を支配する 強い者たちに弱き者たちは強奪され蹂躙される   強者を味方にして殺戮と破壊を正当化する 強者に怯え従い形骸化する民主主義を奉る 強者が手を取り合う世界はいのちと地球をむさぼり尽くす   [2023 年 11 月 18 日書き下ろし。米中首脳会談に見える陰の怖さ。イスラエルによる殺戮の異常さ。世界は強国の手の中であえぐ ]

地方の乱

都会の洗礼を受けた バッジを付けたときから勘違いが始まった 選ばれた上級国民意識は半端じゃなかった   都会の風を切った バッジでどこでも顔が利いた 田舎もんも徐々に洗練されてゆく   都会の空気に馴染んでゆく バッジは無能さを隠した 分かったふりして頷(うなず)くだけだった   都会の華やかさをまとった バッジが集金マシンに変わった 夜の赤坂もエリアになってゆく   都会に居着くことを夢見た バッジは欲得のドル箱だった 世間が疎くなり生活感が麻痺した   都会は忖度だけで生かされた バッジはただ座れば用が足りた 頭数になればそれでよかった   地方はどうでもいいと縁切った バッジは簡単に取り上げるだけだった 顔が見えなきゃそれまでの男だった 地方の乱は当然だった バッジを付ければ監視が強まる 主導権は志のなき者を追放してはじめて働く   [ 2023 年 11 月 16 日書き下ろし。これから都会も地方も政治をする者たちを厳しく評価する時代に入る。民主主義を築くのは地方の民であることを自覚したい]

なぜ引き受けたのか

なぜ引き受けたのか 心ない人がいないこともない 疎(うと)んじられ苛 ( さいな ) まれる 理由(わけ)さえ分からず自責の念にかられる   なぜ引き受けたのか たじろぎながら立ち止まり考える やる気も失せて辞めるタイミングを探る やらねばならぬ理由が薄らいでゆく   でもなぜ引き受けたのか 少しでも何かのお役に立てばとそれだけだった 世間のしがらみからは逃れられないと腹をくくった もう少し我慢しようと言い聞かせた   引き受け手がいない 後継者が育たない 短期間で辞める 綺麗事では済まされない厳しい現実 そこでしばらく立ち止まった   なぜ歩き始めたのか 葛藤しつつ心動かされる人がいた 薄っぺらな同情では立ち行かない ここで生きたいという意欲を汲み取った 福祉の崇高な理念をひけらかすことではない 法や制度や福祉サービスでの救済だけではない ここで果てるまでという思いを受け止めた   才知なきゆえに悩み深くとも動くしかない ここにわたしが生きる存在理由がある 経験乏しきゆえに憂(うれ)い深くとも動くしかない ここにわたしの求める生きがいがある   あなたが少し気にかかってきて辞められなくなった 世間と自らに抗(あらが)いながらいまも続ける あなたに少し手を貸したときの笑顔がたまらなかった 世間と自らにあるべき姿を問いかけなから続ける あなたが少しでも仕合わせになってほしいと願った 世間と自らに言い聞かせながら民生委員を続けたい   [ 2023 年 11 月 14 日書き直し。 21 年 3 月 24 日初出の詩編を推敲した]

遵法意識

大したことはない これくらいならバレないか みんなもやってることだろ   どうしてこうなるの 悪いことなんかしてないよ ちょっと忙しかっただけ   おかしいだろう なんでオレだけ叩かれるん 笑うんじゃないよ   法律がどうだのって そもそも常識レベルだろう それでこけにされたらかなわんわ   借金したぐらいどうだっての 大げさに騒ぐんじゃないよ たかがしれたもんだろ   うるさいんだよ 根掘り葉掘りいらつくな プライバシーの侵害だ 文句のあるのは誰だ ちょうと待てよ待ってくれ バッジ外されてジエンド   そうは問屋は卸さない 恥をかいたでは済まされない まだまだ懲りない輩が蠢(うごめ)く

虚と実の狭間に

歴史は権力を正当化する 虚実に翻弄され善悪が問われる 時代に改変され正否が問われる   歴史は敗者を嘲り葬る 虚実は常に勝者の手にある 時代を変革した実績を手にする   歴史は民族を奮い立たせる 虚実にまみれた史実を信ずる 時代を経ても憎悪をかき立てる   歴史は欲望の坩堝と化す 虚実は血に塗り替えられる 時代は常に無力な民を蹂躙する   歴史は信仰を欺く 虚実は神を利用し崇める 時代は歪んだドグマに導かれる   歴史は史実の価値にある 虚実を暴くことを妨げられる 時代は閉塞し明日を照らす光を失う   歴史は繰り返す 虚実は闘争の闇に紛れる 時代は人間の業を記す歴史となる   [ 2023 年 11 月 14 日書き下ろし。虚実を切り分けできない現代の闇を歴史はどう記するのか]

劣化する組織

組織が劣化する 目的が曖昧になる 目標は装飾化する 機能は建前となる 人はダレる   組織が鈍化する 目的が陳腐になる 目標は退化する 機能は硬直する 人を弄(もてあそ)ぶ   組織が衰退する 目的が霧散する 目標は形骸化する 機能は停滞する 人は慣れる   組織が崩壊する 目的は消滅する 目標は壊滅する 機能は全滅する 人はようやく覚醒する   組織は名を残す 倫理を無視した目的 実現不可の目標 行動規範を逸脱した機能 人は汚名を背負う   [ 2023 年 11 月 14 日書き下ろし。奢った者には天罰が下る。組織もまた然り。その日は近いか]

NHKにも見放される

底値は NHK で持ちこたえていた 13 日ようやく世論調査が庶民の感覚になった 支持率 29 %は 内閣発足以降初めて 20 %台に落ち込んだ 不支持率も 8 ポイント下がって 52 %とようやく過半数を超えた   FNN の世論調査では支持率は 27.8 %で 10 月より 7.8 ポイント下がる 不支持率は 10 月より 9.2 ポイント上がって 68.8 %となった 二つとも 30 %を堅持していた支持率は危険水域に達した   減税が裏目に出て物価高対策や賃上げ継続を掲げる経済対策に期待はない 国の財政不安を煽るような無駄遣いは大阪万博に凝縮されている 適材適所で辞任ドミノを今年も起こし任命責任お咎めなしでは納得できない   庇い立てしてきた者たちも支持の底割れにさすがにざわつく いまから各社の世論調査が出てくるだろう 保守系のメディアも世間の動向をしっかり分析するだろう   解散権は権力者の手中にあると書き立ててきた功罪を感じるだろう 民主主義の根幹は選ぶ国民にある 解散権も任命権も本来国民の手中にあらねばならない   この内閣の寿命を左右するのはマスコミだ 政権にべったりの記事を配信してきた記者たちの危機意識が問われる NHK の今回の世論調査の意味するものをシビアに捉えよ   政権を支えるブレーンの欠如こそが最大のウイークポイント ここに適材を配置できなかったボーンヘッドが禍した それ以上に危機管理能力のなさが神田副大臣更迭のルーズさに表れた   底値はまだ下がる 麻生や森の轍を踏む 地方では自民党離れが加速する 怒号が湧き上がれば内閣は持たない   [ 2023 年 11 月 14 日書き下ろし。ようやく神田副大臣を更迭した。このスピード感のなさがまた支持率を下げる。同じ事を繰り返す悪癖に辟易する]