幼子への朗読の壁
3歳から6歳までの幼子に朗読を挑んだ
「葉っぱのフレディ」
25年も前に小学生に朗読して歩いた
年甲斐もなく練習をした
はじめは翻訳を忠実に読んだ
読み進めていくと違和感が湧いた
この表現では伝わらない
小学生と幼子との語彙力の違いを如実に感じる
本意を崩さず平易な言葉に置き換える
台詞の後に一々うるさい「と言った」が入る
カットすると流れがスムーズになる
そもそも朗読の為に書かれた物語ではない
いよいよ幼子たちと相対する
いつもなら高い舞台で先生方はお話しする
スタンドマイクを下に降ろして舞台に腰掛けた
いつもの空気を変えようとの魂胆だ
朗読のスタイルも頭に「おかめ」のバンダナを巻いた
男が読み聞かせをするのは初めてのことだ
何が始まるのだろうと興味津々の幼子たち
年少児にはたくさんのわからない言葉が出てくる
年中児はストーリーの大筋はつかめるだろう
年長児はさすがに春には小学一年生だから狙いをつける
楽しめれば幸いだが辛抱強く15分椅子に座るしかない
大きな幼児の壁が立ちはだかった
話し始めでは言葉ひとつに反応した
ザワザワ感が広がっていくのも想定内だ
何気ないリアクションが参加へのパスポートになる
物語も笑ったり明るく元気になる面白いものではない
情景を思い浮かべなければテーマには迫れない
「いのちと死」を取り上げる難しいテーマだ
聴かせるだけの朗読力が試される
1000人の聴衆に講演の一コマとして朗読するのとは異次元の世界だ
自詩の朗読も研修の度にここ6年してきた
まだ表現力も声量も劣ってはいないと自負する
しかし彼らには通じない
もう一つ彼らは目をつぶることはない
何か起きるかと目を見張る
残念ながら視覚に訴える情景は何もない
バンダナの爺さんがステージに座っているだけだ
情景を想像する手がかりは言葉しかない
もう一つ大きなミスは忠実に本を頼ったことだ
筋は十分に入力されているのだからアレンジしてもよかった
幼子と対話しながら進めても構わなかった
そこに余裕を持てなかった朗読スタイルがミスマッチそのものだった
彼らのまなざしをしっかり受け止めながら話すべきだった
最も粗末にしてはならない朗読スタイルに躊躇した
彼らの表情や反応を見ることを疎かにした悔いが残った
3歳児のよく耐えてる姿が心に刺さる
話が見えなくなった子らに時々先生が注意を促す
これも想定内のいつもの子どものリアクションだ
話している自分に非があり子どもは正直なだけだ
物語に心惹かれなければ当たり前の行動であり評価でしかない
ゲストへの礼儀作法とは全く異なる真剣勝負の世界だ
中盤から話の筋の見えてきた子らはしっかり目を向けてきた
死を覚る終盤の強いフレディの台詞に私語が止む
初雪の日死んでゆく枯れ葉のフレディを想像できただろう
それでも命は永遠なのだという意味が理解できなくとも
命と死を考える子のまなざしを熱く感じて終えた
ホールを出た後副園長先生がきっとフォローしたに違いない
椅子を持った子らが鳥居先生と嬉しそうに声をかける
行事の度に後ろにいた正体がようやくわかった日となった
幼子たちとの心の距離が少し縮んだ15分だった
園長先生には初めて機会をいただいたことを感謝した
先生からからこれからもお話をしてとお願いされた
二つ返事で即答した
幼子の琴線に触れる朗読の難しさに心躍った
朗読の世界の奥深さをどう習得し表現していくのか
幼子と朗読に魅了されて次の出番を手ぐすね引いて待つ
〔2025年2月1日書き下ろし。札幌発寒りこりんこども園の100人を超える幼子たちを前にした朗読。なんて面白く興味深い世界なんだろう。選書から学び直しが始まる〕